負のスパイラルから抜け出せ―都が不調・不落対策
2014/3/17
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東京五輪の施設整備の本格化を前に、東京都が不調・不落対策の具体策を打ち出した。建設業界の声に対応して施策を見直すことで、件数ベースで都発注工事の85%以上を担う中小建設業を中心に入札参加意欲をあらためて喚起する考えだ。
既に公表していた総合評価方式での配置予定技術者の変更の承認などに加え、JV工事の基準額を引き上げ、発注標準を見直すとともに、積算から入札までの期間が長い大型工事で、入札公告から資格確認までの間に労務単価や資材単価の変動があった場合に予定価格を修正する新たな取り組みを始める。主任技術者の選任配置の条件を一部緩和し、他の現場との兼務も認める。いずれも団体などとの意見交換を通じた建設業界の要望を踏まえた対応で、より入札に参加しやす環境づくりに主眼を置いた。不調・不落の減少、そして必要な社会基盤の着実な整備につながるのか、施策の実効性が注目されている。
JV工事について都は、中小建設業の受注機会確保を目的に、他の自治体に比べ比較的規模の小さな工事にも適用してきた。しかし、競争の激化に伴って構成員として参画する工事では採算性が低下し、参加を希望する事業者が減少。基準額に近い小規模な工事では、同じ規模の単体での入札で応札者が平均10〜15者あるのに対し、3〜5者程度とおよそ3分の1まで減っているという。そこで、JVを対象とする工事の基準額を引き上げてその適用を大型案件に限るとともに、業種ごとの発注標準を引き上げることで各ランクの業者が単体で入札に参加できる機会も増やす。
また、労務単価や資材価格が短期に大幅に変動している状況を踏まえ、入札公表(公告)から資格確認までの間に変動があった場合は、予定価格を見直す。
さらに、国の動きから1年遅れながら、建設技術者の専任配置要件を緩和し、工事間の一体性や連続性が認められるものや、施工に当たり相互調整が必要な工事を対象に2件まで兼務を認めるようにする。
長く続いた右肩下がりの厳冬の時代に五輪開催という一筋の光が差し込み、労務単価の大幅な引き上げや入札・契約制度の改善が進みつつある。2014年度の都予算の投資的経費は10年連続で増加しており、15年ぶりに9000億円を超える規模となる。過去最大規模の予算編成をした区も多い。老朽化した都市基盤の更新を含めた公共事業の必要性も再認識されつつあり、舛添要一知事は“五輪後”も見据えた安全・安心な街づくりの重要性を訴えている。
行政が“土俵”を整えつつある中で、次に求められるのはプレーヤーである建設業界の取り組みだろう。一定の利益を確保しつつ、協力会社も含めた技術者・技能者の処遇を改善、若い力を確保・育成していかなければならない。負のスパイラルから抜け出し、持続可能な建設業を実現していくきっかけを逃してはならない。
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