建滴 職人不足に苦慮する現場 若い力の確保は中長期の視点で
2014/4/28
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マンションやオフィスビルなど建築費の高騰に歯止めが掛からない。主な要因として、円安による建築資材の値上がりが挙げられるが、それ以上に悩ましいのは「職人(技能労働者)不足」の問題だ。
本格的な人口減少社会に突入しているいま、若年入職者の減少と、技能労働者の高齢化による技能継承の危機が、建設産業自体の存亡の危機を招きつつある。すでに生産年齢人口(15〜64歳)は、8000万人を下回っている。中長期的な視野に立って、建設ものづくりの担い手を育成するシステムの構築に、業界全体で取り組まなければならない。
しかし、昨年開催が決定した20年東京五輪が、皮肉にも建設業における人材確保の時間的猶予を奪ってしまった。
政府は、五輪関連の施設整備や生じる民間の建設需要の増加によって、20年までの6年間で延べ15万人程度の労働力が不足すると試算している。継続雇用や離職者の再入職などの取り組みによって、人材を確保しようとしているが、特効薬となり得るかどうかは疑問が残る。
この状況を打開する手立てとして、政府は外国人技能実習制度を見直し、即戦力となる外国人技能労働者を受け入れる方向にかじを切った。
具体的には、技能実習修了者に「特定活動」の在留資格を与えて再入国を認め、受け入れ期間を最長5年まで延長する。
緊急措置を適用する監理団体と受入企業には、過去5年間に入管法や建設業法上の不正行為・処分歴がないことに加え、受け入れる外国人に技能実習生を上回る賃金を支払うよう求める。こうした緊急措置による外国人の活用で、今後6年間で延べ7万人程度の労働力を補うことが可能と見込んでいる。
ただ、これらの措置はあくまで対症療法であり、問題の抜本的な解決につながるとは思えない。
建設業における人手不足の根底には、就職した若者が定着しない問題が存在する。「賃金が他の産業に比べて低く、将来の生活設計を描けない」という指摘もある。
もし、技能労働力を外国人に全面的に頼るようなことがあれば、賃金水準は向上せず、肝心の新しい若い力を確保できなくなってしまうだろう。
妙案はまだ見付かっていない。若手入職者に対する給与の在り方や福利厚生などの処遇改善、キャリア形成の仕組みづくりなどを進め、現場で汗する人たちを大切にすることこそが、この問題の克服へと導くことになるだろう。
もし、緊急措置のような「その場しのぎ」の対策に終始すれば、建設業は若者から見向きもされない存在になってしまう恐れすらある。人材確保を労働力不足対策として捉えるべきではない。建設業が人手不足にあえいでいる今こそ、中長期の視点で人材確保対策を考えなければならない。
若者には若者の人生があり、職業を選択する権利がある。若者が将来を託せる、魅力を感じる建設業となるための地道な努力こそが、若者を建設業にいざなうことになるはずだ。
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