危機感もって速やかに策定を
2014/5/19
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政府は14日、国土の強靭(きょうじん)化を進める「国土強靭化基本計画案」をまとめ、災害時にも機能不全に陥らない経済社会システムを確保する方向性を明記した。具体的には、4月に策定された国土の脆弱(ぜいじゃく)性評価を基に、建築物の耐震化、復旧・復興を担う人材の育成、代替輸送ルートの確保、インフラの老朽化対策などを盛り込んでいる。今月末に基本計画を閣議決定した上で、2015年度の概算要求に反映する。
政府は、この国土強靭化基本計画の進捗を管理するアクションプランも作成した。住宅や建築物の耐震化、海岸堤防の整備、地籍調査の進捗、密集市街地の解消などの数値目標を設定し、それぞれの進捗率を定量的に評価できるようにした。地方自治体には、「国土強靭化地域計画」の策定に取り組むとともに、施設全体を診断しながら、対策の不十分な点を特定し、優先順位の高い箇所から対策を講じることが求められている。
この基本計画の基になった脆弱性評価は、「起きてはならない最悪の事態」を回避することを前提に、さまざまなプログラムを設定している。まさに大規模な自然災害を想定した「国土の健全度チェック」だ。今回法制化された国土強靭化策が、単にコンクリート構造物の構築策ではなく、国土危機管理策≠ナあることを認識し、地方自治体は、国土強靭化地域計画の策定にいち早く取り組むべきである。
社会インフラの長寿命化には、ライフサイクルエンジニアリング(LCE)という考え方がある。ただ、ライフサイクルコスト(LCC))やライフサイクルマネジメント(LCM)といった知見を結集しても、社会インフラのライフサイクルを測るのは難しいといわれる。とはいえ、日本の社会インフラがいつ荒廃するアメリカ≠フ様相を呈しても不思議ではない。コンクリート構造物は決して永久財ではないからだ。
ことし2月、宮城県女川町立女川中学校の校庭に、「女川いのちの石碑」が建てられた。その石碑の中央には「千年後のいのちを守るために」と、左脇には「夢だけは 壊せなかった 大震災」の句が記されている。「悲惨」を知った生徒たちの、地震が発生したらこの石碑より上に逃げてほしいとの思いが込められているという。最悪の事態≠想定し、利用者の安全を守るのもインフラを管理する者の役割りである。
地方自治体の財政状況は厳しい。劣化や損傷が進展していることが判明しても対策を先延ばしにせざるを得なかった地方自治体も多いことだろう。しかし、法律が制定され、基本計画が固まり、アクションプランが策定された。「地域のインフラは自分たちの手で守る」という危機感をもち、地方自治体それぞれが、主体的に国土強靭化地域計画を速やかに策定することを求めたい。
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