建滴 増加する空き家 固定資産税の軽減を
2014/9/8
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空き家の増加に歯止めが掛からない。総務省が実施した「2013年住宅・土地統計調査」によると、昨年10月時点での全国の空き家数は約820万戸を数え、5年前の前回調査時と比べて1割近く増加した。このうち管理不十分で放置された空き家は300万戸を超えると推計されている。早期に実効性のある手を打たなければ、治安の悪化を招くばかりではなく、防災対策の「足かせ」となりかねない。
人口減少と高齢化の進行によって、26年後の40年には空き家率が最大で4割を超えるとの試算もあるほどだ。実効性の高い安全対策の強化に本腰を入れて取り組むべきだ。
これまでも地方自治体が「空き家問題」を黙認してきたわけではない。全国355の自治体が所有者に適正管理を求める条例を制定するなど、それなりの問題意識は示してきた。ただ、財産権や税制が絡む問題を抱えるため、地方自治体の判断でできることには限界があることも事実だ。
こうした状況を受けて、自民党は空き家対策の法案をまとめ、秋の臨時国会への提出を目指している。市町村が敷地に入って調査できる権限を与えるほか、固定資産税の納付情報を利用した所有者の把握も認めるという。
登記手続きの不備で所有者が分からない例や、相続問題がこじれて放置されているケースも少なくないことから、問題の解決には、所有者の特定が欠かせない。「地方税法の秘密漏えいに抵触する」などとして、現状は固定資産税の納付情報は利用できないが、特例としてでも活用できるようになれば、より早い段階での安全対策につなげることが可能となるし、空き家の減少に一定の効果が期待できるだろう。
それでも、まだ対策としてはもう一つ、物足りなさを感じずにはいられない。
なぜなら、現行の特例措置は空き家になっていても、土地の固定資産税を更地の6分の1に軽減しているからだ。「更地にしたほうが固定資産税が高くなる」といった税制上の問題を抱えたままでは、空き家問題の抜本的解消は困難であろう。
自民党は、更地化された土地の固定資産税の軽減措置を検討したものの、今回の法案には盛り込まない方針だという。来年の通常国会に改正案を提出する予定だが、1日も早い改正が必要なのは言うまでもない。
軽減措置により空き家の解体が促進され、流動性という「新たな価値」を持った土地が増えれば、不動産取引はより一層活発化するだろう。防災・景観面などへの寄与を鑑みても、取引の担い手である不動産業界は、固定資産税の軽減措置の実施を働き掛けるべきだ。
一方で、解体や撤去という選択肢のみならず、空き家の有効活用策も考える必要がある。例えば、賃貸住宅として再生し、新たな転入者の定住につなげたり、高齢者介護の地域拠点とするなど、考えればまだまだ用途はありそうだ。
まちの活性化につながる「再生資源」として空き家を有効活用するために、空洞化が進む中心市街地の空き家を安く賃貸できる仕組みがあってもいい。官民が知恵を絞り、工夫を凝らして、空き家を減らす取り組みを加速するべきだ。
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