市町村は自覚が問われている
2014/9/22
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「担い手3法」で建設業はどう変わるのか―。改正公共工事品質確保促進法(改正品確法)、改正建設業法、改正入契法の成立から3カ月が経ち、担い手3法を根拠に打ち出そうとしている施策の輪郭が見えてきた。品確保の実効性を担保する上で、法が発注者共通のルールと位置付けている「発注関係事務の運用に関する指針」(運用指針)が果たす役割は大きい。
改正品確法の最大のポイントは、中長期的な担い手確保・育成に配慮して発注関係事務(予定価格の設定、入札方式の選択、工事監督・検査など)を実施することを、公共工事の「発注者の責務」と規定したことだ。
これを前提に、改正法では、予定価格や工期を適正に設定すること、ダンピングを防止するために最低制限価格を設定すること、事業の性格や地域の実情に応じて多様な入札契約方式を導入することなどといった対応をとるよう発注者に求めている。
ただ、法案をつくる過程では、改正法をいかに発注者、特に市町村に浸透させるかということが問われた。ダンピングを看過するような入札契約制度や、いわゆる「歩切り」などの行為を行っている発注者の大半は市町村だという事実を考えれば、「改正法に悪質なケースに対する罰則規定をつくるべきだ」と主張した関係者の声もうなずける。
たしかに、自治体が国交省に提出した意見には「運用指針を発注者共通のルールとして強制するのではなく、各発注者の実状を踏まえた柔軟な運用も認めてほしい」「発注者の判断により、予定価格の事前公表も選択できるようにしてほしい」「低入札調査基準、最低制限価格の設定を『全ての工事』を対象としないでほしい」―などといった後ろ向きなものが目立つ。中には、問題意識や改善意欲を何も持っていないのではないかと疑わざるを得ない意見も散見されるほどだ。改正法に対する国交省や建設業団体の思いと一部の自治体の間には、埋めがたい溝がある。
品確法改正の目的の一つは「安値受注をさせない」などといった意欲を持つ発注者に、これまでは会計法・地方自治法が許さなかった新たな手段を与えることでもあった。だが、それ以前に、いまだに公共調達の在り方に関心を持たずにいる発注者の「動機付け」が欠かせない。
「いたずらに自治体との対決姿勢を打ち出すことも好ましくない」(国交省幹部)との声もあるが、疲弊し続ける建設業を省みようとしなかった自治体の姿勢が、今日の担い手不足を招いた要因の一つとなったことは疑いの余地がない。
運用指針は年内にまとまる。多くの市町村が、改正品確法の理念と、その目指す方向性を理解し、それぞれの「発注者責務」を自覚、履行することを期待したい。
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