女性の活躍推進 「自分の居場所」と実感してもらおう
2014/11/17
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少子高齢化に伴う生産年齢人口(15〜64歳)の減少が避けられない情勢となっている。国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、減少幅は年間約70万人。一つの政令指定都市の人口に匹敵する労働力が年々減っていく計算だ。このため政府は「女性の活躍推進」を日本再興戦略の柱に据え、女性の一層の活躍を通じて経済成長につなげようとしている。
人材不足に悩む建設業界も女性に注目している。主要5団体は、国土交通省と8月に定めた行動計画で▽採用・登用の目標設定▽地域単位での合同企業説明会の開催▽女性専用トイレ・更衣室の設置に関する積算基準と仕様の検討▽子育てに配慮した柔軟な労働条件の整備―などの施策を列挙。入職促進と就労継続に取り組んで、女性技術者・技能者を今後5年以内に20万人(全体の6%)まで倍増させる目標を立てている。
実際、建設業で働く女性技術者・技能者の就労環境に対する見方は厳しい。全国建設業協会(全建)が11月4日に催したシンポジウムでは、更衣室などは「男性と一緒」の現場が多く、女性専用を設ける意識も「中小企業には普及していない」と実情を吐露。「女性の指示は受け入れてくれない」「子どもができたら仕事を続ける自信がない」と不安を漏らした。
子育てや家庭との両立に関して「会社と家族のサポート」があったり、「育児休業後に内勤で復帰」したケースも紹介されたが、仕事を最優先にできぬ状況から「男性と同じように成果を上げ続けられるかどうか…」と悩みを打ち明ける場面もあった。
それでも彼女たちの多くは、子どものころから抱き続けた「ものづくり」の夢を追って男所帯の門をたたき、今に至っている。やりがいも誇りも男性と同様に感じているという。
そんな貴重な存在である彼女たちが働き続けられる環境が整えば、自信を持って、子どもや友人らにも建設業の仕事を勧めてくれるはず。潜在的・中長期的な担い手のすそ野を広げる意味でも、女性の就労継続は絶対に実現しなければならない。
一方、女性の技術者・技能者の入職を促すためには「手掛けてほしい」「任せたい」分野を確立することも重要だろう。男性でさえ3K、5Kと敬遠しがちな建設業に、採用枠を増やしたくらいで女性が目を向けるとは到底思えないからだ。
建設生産システムの省力化・効率化・高度化を加速させる中で、女性に「私にもできる」「必要とされている」と感じてもらえる分野を示すことができれば、入職の強い動機付けとなる。また職場の中に、男女の差なく▽生き生きと働く技術者・技能者の姿▽資格に代表されるステップアップのルート▽子育てや家庭と両立できる環境▽経験と努力を重ねた先の相応の処遇―があることを、誰の目にも映るようにする必要もある。女性が「自分の居場所」と実感し、将来も展望できる仕事は、男性にとっても働きやすく魅力的なものに違いない。
生産年齢人口の減少は待ったなしだ。女性の活躍推進に関する取り組みを通じ、建設業の新しい姿を描こうではないか。
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