受発注者を超えた関係築け
2017/6/5
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建設業と市町村の間には、インフラを維持管理する際の管理者と担い手としての関係、災害対応における協力関係、という強い結び付きがある反面、公共工事の受注者・発注者という立場では、時として両者の間に片務性や対立構造が生まれてきた経緯がある。
国土交通省の建設産業政策会議では、建設業が10年後も現場力を維持できるよう、建設業法改正も視野に入れた建設業関連制度の見直しが議論されている。6月中のとりまとめに向け、ここで論点の一つに挙がっているのが「地域建設業と市町村との連携強化」だ。
政策会議の中で、国交省は、地域の建設業者が災害時の守り手としての役割だけでなく、平時においても地域経済の活性化や雇用の受け皿である『地方創生の担い手』の役割を果たしているとの認識を示している。
ただ今のところ、市町村が建設業を支援するツールは、公共工事の発注以外に見当たらないのが実情だ。現行の建設業法には、産業振興の視点が見当たらず、市町村の役割に関する規定も存在しない。
こうした問題意識を持ち、国交省は政策会議に市町村が主体的に建設業の産業振興を担う制度的な枠組みを設けることを提案している。
この提案によると、市町村は、地域建設業の技術力・経営力の強化、建設業の雇用確保、災害時の円滑な連携体制の確保を目指す「地域建設業振興計画(仮称)」を策定。
計画を策定した市町村は、建設業団体・事業者と協定を結び▽公共工事の発注業務▽中小企業診断士による経営支援▽技能者の育成▽学生向けの就業相談事業―などに連携して取り組めるようにしようとしている。
また、地域建設業振興計画を法定計画とすることで、マンパワーやノウハウのない市町村が建設業振興を図ろうとした場合、国・都道府県が支援措置を講じやすいようにする。
建設業に焦点を当てた振興計画は、都道府県の3割で策定されているものの、市町村が計画を策定した実績は、長野県茅野市、山形県南陽市などでわずかにあるだけだという。
国交省は政策会議の中で、建設業が地域で果たす役割を『公務』と指摘している。災害時に建設業の存在が不可欠であることは、これまでにも迅速な復旧・復興を成し遂げたことで証明されている。それ以前に、地域の生活基盤や産業基盤であるインフラを造り、維持し続けてきた産業であることこそ、建設業の
存在意義を証明している。高度成長期に完成したインフラの老朽化が深刻さを増す中、その役割はますます大きくなっている。
旧来の受注者と発注者という立場では、疲弊したそれぞれの体制を補い合うことには限界が見え始めている。例えば、発注者としてはコスト高になると敬遠する地元企業への優先発注も、産業振興の観点を加えて丁寧に説明すれば、納税者を納得させることができるはずだ。
市町村と地域建設業の間に産業振興という新たな着眼を明確化することが、旧来の受発注者としての関係を超える新しいパートナーシップを築く契機となることを期待したい。
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