グリーンレーザー、導入効果を最大化したい
2019/5/13
いいね | ツイート | 印刷 | |
0 |
国土交通省は、2019年度に陸上と水中を問わず地形の計測が可能なグリーンレーザーによる計測システムを備えたドローンを全国に配備する。まずは、職員などの目視による堤防・河川の巡視・点検の補助に活用する考えだ。獲得を目指す成果は、河川管理の単なる効率化だけにとどまらない。ドローンによるレーザー計測の導入は、これまでの人の手と目による経験的な手法とは異なるデータを基礎とした、新たな河川管理手法の開発に向けた第一歩となるはずだ。
グリーンレーザーを用いた地形計測は近赤外線レーザーと違い、陸上と水底の反射波を識別でき、従来は取得できなかった水中の地形データを面的に把握することが可能になる。国交省が主導したオープンイノベーションによる「革新的河川管理プロジェクト」がグリーンレーザーの小型化・軽量化を進め、ドローンへの搭載を実現した。
現行の河道や堤防施設の日常管理は、目視による巡視と点検をベースとしている。レーザードローンには、目視による詳細点検が必要な箇所を抽出する一次点検や、目視による巡視が困難な場所のカバーなど、従来の河川管理を補完し、効率化することが期待されている。
画期的なのは、レーザードローンによる地形計測の導入により、河川の経時的な変化をより機動的に把握できるようになる点だ。河川形状の調査は5年ごとに行う定期縦横断測量に拠るところが大きいが、自然公物である河川は、流水の作用や植物の繁茂により刻々と変化していく。レーザードローンを用いた高い頻度での面的な地形計測は、堤体の沈下や変状、洪水に伴う深掘れといった異常を検出し、早期の対策を可能にする。
河川管理へのドローンの本格導入は、レーザーによる3次元点群データだけでなく、より幅広い種類のデータの収集にも道を開く。温度の違いを検知できるサーモカメラをドローンに搭載すれば、堤防内の漏水箇所や、本流と支流の水がどのように合流するかなども把握することができるという。
河川管理に関わるデータは、ドローンから得られるようになる情報以外にも、雨量情報や水位情報、監視カメラ画像など多岐にわたる。レーザードローンと同様にオープンイノベーション手法で開発された危機管理型水位計は河川管理者に歓迎され、開発から1年ほどの間に全国で配備が進んだ。今後も、河川の氾濫や内水を防ぐためのデータは、その種類、量ともに急激に拡大していくだろう。
これからの課題は、膨大なデータをどのように連係させるかだ。大量のデータを解析して有用な情報を抽出するのは、近年発達が著しい人工知能(AI)の得意分野と言える。AIを活用し、平常時に3次元点群データに基づいて河川構造物の危険箇所を抽出し、豪雨時には水位データを踏まえてダムを機動的に操作することで、水害による人的被害を未然に防ぐ―。そんな未来が実現する日も近い。
20年から社会実装が始まる5Gも河川管理のための新たな情報基盤になることは間違いない。ただ、これらのツールをより効果的に使いこなすマネジメント力が、河川管理者には問われている。
関連記事
- 建設業は不調改善 3月の小企業動向 (4/26)
- 労働者と同一現場に従事 注文者が一人親方保護 (4/26)
- 日建連 宮本会長「会員挙げて適正工期確保」 (4/26)
- 3月のセメント国内販売14・2%減 (4/26)
- 都市鉄道整備の促進策 周辺開発者の負担検討へ (4/26)
- CCUSステッカー 一般公募14作品を選定 (4/26)
- 国土強靱化 中期計画の早期策定要望 (4/26)
- 1・6%減の3728万d 23度のセメント国内需要 (4/25)
- 日管協 相続支援コンサル講習5月9日から (4/25)
- これからの社会資本整備 災害リスクを前提に (4/25)
特集コーナー
このコーナーでは、入札情報関連の話題や建設業界注目の情報、工事ニュースなどを取り上げます。