平成30年間の経験生かせ 災害対応力強化
2019/5/18
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2019年4月で幕を閉じた平成の時代は、日本が「災害列島」であることを日本人に改めて知らしめた30年間だった。しかし時代が変わろうとも、近い将来に発生が懸念される首都直下地震や南海トラフ地震を含め、自然の猛威はこれからも日本列島で続く。さらに、地球温暖化によって風水害はますます激甚化するに違いない。建設産業界においても、平成の30年間の経験と教訓を共有し、災害対応のための体制を強化していかなければならない。
11年の東日本大震災以降、建設業界では、災害対応力を拡充しようと、建設業団体同士の相互支援の協定締結の動きが拡大した。全国建設業協会傘下の建設業協会ではこれまでに、東北や関東甲信越、東海、四国などで、資機材の提供や人材派遣などに関して七つの相互支援協定が締結された。
全国中小建設業協会の傘下団体でも、東京都中小建設業協会と神奈川県中小建設業協会、横浜建設業協会の3団体が18年10月、災害時の相互応援協定を締結した。
また、18年9月、宮城県の仙台建設業協会と静岡県の浜松建設業協会が相互援助協定を結んだ。再来が懸念される宮城県沖地震と、今後発生する南海トラフ地震に備えるためだ。
仙台市と浜松市は直線距離で約500`離れている。同時に被災することは考えにくい。離れているからこそ、人員の派遣や、食料、燃料、資材の提供などで実効性のある支援ができるのだという。
さらに、この協定では、東日本大震災の津波災害の応急復旧で仙台建設業協会が直面した課題や対応、その後の復興事業について、浜松建設業協会が継続的に情報共有できる意義も大きい。浜松建設業協会は、南海トラフ地震による津波災害で、仙台建設業協会と同様の課題に直面する可能性が高いからだ。
仙台建設業協会は震災直後、膨大ながれきに埋まった道路の啓開という課題に直面した。そこで、宮城県解体工事業協同組合と宮城県産業廃棄物協会仙台支部との連携体制を新たに構築。関係団体が一丸となって迅速な対応と、廃棄物の高いリサイクル率を実現した。この取り組みは「仙台方式」とも呼ばれる。今後発生する災害でも生かしていきたい対応だ。
仙台建設業協会の深松努会長は震災後、震災の際に建設業が直面した困難や対応、復旧・復興を通じて得られた教訓を全国各地での講演活動で伝えてきた。講演を行った回数はこれまでに約200回に上っている。浜松建設業協会との協定締結も、深松会長の講演による情報提供がきっかけとなって実現した。
深松会長への講演依頼は、建設関係以外の団体などからも増えており、災害対応での建設業の役割や重要性を幅広く社会に伝えることにもつながっている点でも注目される。
新しい令和の時代は、「防災・減災、国土強靱(きょうじん)化のための3か年緊急対策」の本格化とともに始まった。新しい時代のスタートを、平成の30年間の経験と教訓を生かした、真に災害に強い国づくりと体制構築の幕開けとしたい。
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