卒FITと家庭用電力 防災の視点からも提案を
2019/9/30
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自宅で発電した太陽光の電気を電力会社に一定価格で買い取ってもらう固定価格買取制度(FIT)の買い取り期間が11月以降、順次満了する。いわゆる卒FIT≠ェ、再生可能エネルギーへの継続的な投資について個人・法人の両者が考える契機になることを期待したい。
経済産業省によると、卒FITの対象は11月と12月の2カ月で約53万件に達する。卒FIT世帯には「蓄電池などと組み合わせて自家消費する」または「小売り電気事業者などと相対・自由契約し、余剰電力を売電する」―という二つの選択肢がある。
大手住宅メーカー各社はすでに、自社物件オーナーの囲い込みを始めている。
例えば、旭化成ホームズは、同社が供給した太陽光発電設備を設置している一戸建て住宅「ヘーベルハウス」と賃貸住宅「ヘーベルメゾン」のオーナーからFIT期間を終えた余剰電力を買い取る事業を11月に始める。
余剰電力の買い取りは、企業にとってもメリットがある。旭化成ホームズと同様のサービスを展開する大和ハウス工業や積水ハウスは、事業用電力を再生可能エネルギーで100%調達することを目標に掲げる企業が加盟する国際イニシアチブ「RE100」のメンバー。買い取った余剰電力を、事務所や工場、住宅展示場の電力として活用して見せることで「環境対策に貢献する企業だ」とのイメージを投資家やエンドユーザーに印象付ける狙いがあるようだ。
自然災害が多発するわが国にあっては特に、エネルギー資源を有効活用し、自立・分散型のエネルギーシステムを構築することは、防災の観点からも極めて重要だ。
台風15号の被害を受けた千葉県では大規模な停電が起こり、今なお不便な生活を強いられている世帯がある。今回の災害では、電力なしには私たちの暮らしが成り立たないことをあらためて思い知らされた。非常用の電源を確保しておくことの重要性が浮き彫りになった災害でもあった。
オフィスや商業用途の建築市場では、テナントのBCP対策や帰宅困難者の受け入れなどの社会的責務を背景に、エネルギーを建物単位、またはエリア内で自給自足することの意義が認識されつつある。
それに比べ、住宅はどうか。光熱費削減を目的にした省エネ設備の導入提案がほとんどで、防災の視点からは、家庭用エネルギーの在り方について、具体的な提案までは、見当たらない。省エネルギーと防災は密接な関係にあるはず。にもかわらず、卒FITの受け皿となる余剰電力の買い取りサービスは、FIT制度の代替であること以外に、新たな付加価値を示せていないのではないか。
賢いエンドユーザーは、経済合理性だけではなく、家族の安全や平穏な暮らしを守る、という考えから電気エネルギーを捉え、住宅選びの観点に取り入れ始めている。
東日本大震災の教訓と固定価格買取制度が追い風となり、太陽光発電は拡大した。これからは卒FITをきっかけにして、住宅を供給する側も、ライフラインとしての「家庭用インフラ」をエンドユーザーに提案してほしい。
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