石綿の事前調査 講習機関のコンソ組成へ
2023/3/20
いいね | ツイート | |||
0 |
かつて建材として広く使われた石綿。飛散した粉じんを吸い込めば、長い期間を経て肺がんや中皮腫を引き起こす恐れのある「静かな時限爆弾」だ。建物の解体・改修前に石綿の有無を確認する「事前調査」は、施工する作業者、周辺に暮らす住民の双方の人命と健康を守る石綿対策の要と言える。調査を担う有資格者の能力水準を将来にわたって維持・向上させるため、厚生労働省は講習機関のコンソーシアムを組成しようとしている。
■10月までに11〜12万人を育成
2020年の大気汚染防止法、石綿障害予防規則の改正により、建物の解体・改修工事に先立つ事前調査は、建築物石綿含有建材調査者講習登録規程に基づく講義と修了考査を経た「石綿含有建材調査者」などの有資格者が行うこととされた。知識の不十分な者による石綿含有建材の見落としや、粉じんへのばく露がこれまでに発生してきた反省を踏まえ、適切な知識と能力を有する者による事前調査を確保するための制度を整えた。
今年10月以降に着工する工事から、有資格者による事前調査が義務化される。調査者は業界全体で約11〜12万人が必要とされ、登録を受けた講習機関を通じて急ピッチで育成が進められてきた。現在、建設業労働災害防止協会の各支部をはじめ全国で113機関が活動。1月末までに約9万人が有資格者になったという。
国内のビルや家屋の解体工事は、30年ごろにピークを迎えるとされる。工事量の増大が見込まれる中、事前調査を適切に行える体制づくりは急務だ。既に資格を得た人の継続的な能力向上や、これから受講する人の能力水準を一定以上に保つことも極めて重要になる。
■修了後にフォローアップ研修
こうした観点から、厚労省は講習機関が任意で参加できるコンソーシアムの創設を構想した。2月に主な講習機関による準備会議を開催し、コンソーシアム設置についてはおおむね了解を得た。今後も議論を重ね、23年度中にも発足させる見通しだ。
具体的な取り組み内容としては、講習終了後のフォローアップ研修の開催を検討している。座学だけでなく、動画や実技を取り入れることも視野に、継続的に能力を高められるような仕組みを考える。
試験問題や講師の質の担保も論点となる。補助教材の活用など、現行の講習体制を補完するようなイメージだ。
この他にも、各講習機関が抱える課題の共有や、事前調査者制度のさらなる周知などもテーマとなる。
■工作物の事前調査者も
さらに、今後は建築物だけでなく、工作物の解体・改修工事に先立つ事前調査の資格制度も整備される。1月に公布した石綿障害予防規則の改正省令では、ボイラーや焼却炉などの炉設備、電気設備、配管といった工作物を対象とした工作物石綿事前調査者の新設を規定した。
約6〜8万人が必要になると見込まれることから、施行は26年1月とし、講習体制の整備、修了者の育成に3年間の猶予を設けている。
多種多様な工作物の調査方法を踏まえたテキストの作成、講師の確保などなすべきことは多い。工作物の事前調査者講習についても、コンソーシアムを通じた質の担保を検討していく。
(編集局編集部=宇野木翔)
この年の厚生労働省の発注予定案件 | この年の厚生労働省予算情報 |
厚生労働省の公共事業ニュース
厚生労働省の行政・建設経済ニュース
厚生労働省の民間事業ニュース
|
厚生労働省の入札公示情報
厚生労働省の入札結果情報
|
特集コーナー
このコーナーでは、入札情報関連の話題や建設業界注目の情報、工事ニュースなどを取り上げます。