学生の職場体験 業界を知る機会を増やそう
2023/5/22
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およそ3年間にわたって続いたコロナ禍は、学生・生徒の職場体験の機会を奪ってしまった。中学生の職場体験活動や、高校・大学のインターンシップの実施率はコロナ禍の最中に大きく下がった。社会経済活動が平常に復し始めた今、業界のイメージを伝え、その魅力に触れてもらう機会を逃すわけにはいかない。建設業界は、あらゆる機会を捉えて学生・生徒との接点を増やすべきときだ。
文部科学省は今年2月、職場体験やインターンへの協力を、経済団体を通じて企業に呼び掛けた。きっかけとなったのは、国立教育政策研究所による調査だ。2019年度に100%近かった中学校の職場体験実施率は21年度に29%、85%だった高校のインターンも53%に落ち込んだ。大学や短大、高専でも同様の傾向が見られた。コロナ禍の感染対策で人の移動・交流が制約されたためと見られる。
高校生への調査では「自分がどのような職業に向いているのか分からない」との回答は3割強、「やりたい仕事が見つからない」という回答も2割あった。一方、インターンに参加した生徒の9割は仕事のイメージを持ったり、将来の進路を考えたりする上で「有意義」と評価している。担い手不足が他産業にも増して深刻な建設業界としては、職場体験・インターンを、業界への関心を深めてもらうきっかけとしたいところだ。
工業高校・大学でのインターンシップや出前授業は、生徒・学生の職業観の形成につながるだけでなく、会社にとっては実際の採用につながる可能性が高いイベントと言える。政府も産業界と大学の連携による、より実践的なインターンを後押ししている。この4月には、2週間以上にわたるインターンシップで専門性を確認した学生に限って、採用・選考活動を3カ月間前倒しで開始することを認める通知を各業界に発出した。
インターンと聞くと、大手のゼネコンだけの話題と受け取られるかもしれない。しかし、都内のある左官工事会社では、工業高校での出前授業の実績を積み重ね、関心を持った生徒がインターンを経て入社するパターンが定着したという。仕事内容に関心を持ってもらい、実際に体感し、職場の空気を知った上で入職するプロセスは、企業の大小や業種を問わず有効なはずだ。
もちろん、中学校での職場体験にせよ、高校や大学でのインターンにせよ、職場に学生・生徒を受け入れることの負担は大きい。学校との綿密な調整を要する出前授業も同様だ。人的な余力の乏しい中小企業ではなおさらだろう。
個社の負担が大きいのであれば、業界団体で取り組む道筋もある。日本橋梁建設協会は、会員各社の若手が中心となったプロジェクトを通じ、小学校から高校、高専までで出前授業を展開した。コロナ禍でインターンが減る中で、業界と学生の接点を保った好事例と言える。
近年の若い世代の特徴として、地元志向の強さと社会貢献への意識の高さが挙げられるという。コロナ禍でエッセンシャルワークとして存在感を高めた地域建設業は、こうした意向に応えられるポテンシャルを備えている。その魅力に気付いてもらうためにも、まずは若い世代との接点となる学校への働き掛けを強めることが必要だ。
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