Catch−up なるか書類の”スリム化”
2024/3/18
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工事書類をスリム化することが、技術者のワーク・ライフ・バランスに直結する
多くの公共工事が工期末を迎えるこの時期、技術者を悩ませるのが膨大な工事完成書類の作成だ。日中は現場での業務が優先され、書類作業に割ける時間は夕方以降にしか取れない―そんな実態が、さまざまな調査で明らかになっている。国土交通省は、時間外労働の罰則付き上限規制が始まる4月を見据え、分厚い書類ファイルの「スリム化」を急いでいる。
完成時に限らず、工事書類の作成に伴う負担は、技術者の時間外労働の主因の一つとして、受発注者の意見交換の場などで繰り返し指摘されてきた。建設業技術者センターが2023年に公表した建設会社へのアンケート結果でも、長時間労働の理由で最も多かったのは「現場作業後の書類作成・整理に時間を要した」ことで、回答した社の6割が挙げた。
国交省もこの問題は認識している。関東地方整備局をはじめ、各地方整備局は工事書類のスリム化・簡素化に向けたガイドラインを整備してきた。
来年度からの新たな取り組みでは「スリム化のポイント」として▽ASPを活用した工事書類の原則電子化▽受発注者間で作成書類の役割分担を明確化▽作成・添付不要な書類の明確化▽書類の二重作成・提出防止▽検査書類限定型工事の活用▽遠隔臨場の活用による段階確認、材料確認、立会の効率化―を規定。各地整共通で最低限、取り組むべき事項に位置付ける。
また、完成工事の検査書類を従来の44種類から10種類に限定する「書類限定検査」を原則化する。22年度の直轄工事での適用率は83%だったが、24年度からは100%とする。
自治体にも書類削減へ前向きな取り組みを促す。国交省が書類の標準様式をホームページで公表し、活用を呼び掛ける。都道府県・政令市との会議を通じて有効な事例を共有し、水平展開する。
技術者の負担軽減へ、工事書類の作成を内勤者が分担する建設会社も増えてきている。建設ディレクター協会はこうした業務で求められる能力を明確化して「建設ディレクター」資格を設け、新たな職域として定着させつつある。
国交省では23年度の諸経費動向調査の中で、書類関係業務の外注に要する経費を調査項目に位置付けた。調査結果を踏まえ、必要性が確認されれば、書類関係業務として積算計上することを検討している。
書類スリム化が形骸化しないよう、注意する必要がある。ある国交省OBは、「笑い話のようだが、書類を減らすと文字を小さくして詰め込む例が見られた」と明かす。実効性を持たせるには、受発注者がともに技術者の負担軽減という目的を理解し、過剰な書類作成という業務そのものを減らさなくてはならない。
技術者が書類関係の業務から解放されれば、その分、現場に集中することができる。より安全で生産性の高い施工により、高い品質で完成させる―技術者がその本分を発揮し、魅力ある仕事として改めて認識されるためにも、書類のスリム化は避けては通れない。
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