【東海地域】巨大地震に万全の備えを|建通新聞社

建設ニュース、入札情報の建通新聞。[建設専門紙]
フルハシEPO

ホーム > 特集 > 企画 > 【東海地域】巨大地震に万全の備えを

巨大地震に万全の備えを

〜進む中部圏での取り組み〜

海上から物資の受け取り

 近い将来発生するとされる南海トラフ巨大地震への対策が各方面で進められている。この地震によって、日本のものづくり産業の中心地であり、交通の大動脈が走る中部圏が大きなダメージを受ければ、この国全体への影響は計り知れない。国や自治体、建設産業界での取り組みを追った。

 


中部圏地震防災基本戦略


 中部地域に住む誰しもが、他人ごとではいられない。迫りくる南海トラフ巨大地震の脅威に対し、国の機関や自治体だけでなく、学識経験者や地元経済界も一丸となって対策を進めてきた。その成果が、ことし5月に第一次改訂を加えた中部圏地震防災基本戦略だ。各機関の“手弁当”で東海・東南海・南海地震対策中部圏戦略会議を開催してから3年。次第に明確になってきた四つの課題を取り上げ、今後の展望を取材した。

<災害に強いまちづくり>
災害への備えは、事前と事後の対策に大きく分かれる。このうち、最も基礎的な事前対策が、災害に強いまちづくりだ。東日本大震災では、沿岸部の居住地域を津波が飲み込み、多数の犠牲者を出した。都市の構造そのものを地震に強くすれば、被害を大きく減らすことができる。  こうした観点から国土交通省中部地方整備局は、「地震・津波に強いまちづくりガイドライン」を2月にまとめた。まちづくりと防災の担い手である自治体の職員を支援するため、災害に強い地域を形成する上での留意点や支援策を盛り込んだ。  ガイドラインを踏まえて6〜7月に中部地整が沿岸地域の市町村を対象に行ったアンケートでは、課題も見えてきた。避難所となる公共施設の高台などへの再配置に取り組んでいる自治体は30%。保育園などの災害弱者施設の再配置も25%だった。一方で、タワーなどの避難施設の整備は70%、建築物の耐震化の促進には95%の自治体が取り組んでいた。公共施設の移転や土地利用の転換には、住民の合意形成や代替地の確保など、中長期の取り組みが必須になる。  また、人口減少に見舞われている地方では、「防災とコンパクトシティーの両立も課題になる」(東京大学大学院村山顕人准教授)。人口を集約するエリアの選択など、市町村には長い展望に立った判断が求められる。

<大規模な広域防災拠点の確保>
事後対策に必要なものは何か。復旧活動の拠点となる広域防災拠点の確保とネットワーク化だ。関東地方と関西地方では既に、緊急物資を分配・輸送するための基幹的な広域防災拠点が整備されている。中部地域では、名古屋港と名古屋空港、富士山静岡空港が物資の輸送などの支援機能を担う「大規模な広域防災拠点」として、国の南海トラフ地震防災対策推進基本計画に位置付けられた。また、司令塔機能を担う防災拠点として、名古屋市中区三の丸地区と静岡県庁を設定した。
このうち特に、名古屋港の防災拠点では、物資を効率的に配送するため、非常用通信手段や物資集積・荷さばき地、部隊宿営スペースなどの整備が必要になる。候補地は金城ふ頭地区。中部地整は13年度、埋め立てによる用地の確保も視野に施設の在り方を検討した。当面は既存の岸壁などを活用した物資の受け入れ体制を整えていく。一方、中長期的な施設整備に向け、国の計画での位置付けの明確化も急がれる。

<大規模な広域防災拠点の確保>

 

排水作業の訓練風景

 災害の発生時、行政機関と災害協定を結んだ建設企業が取り組むのが、被災したインフラの点検や復旧作業だ。特に南海トラフ巨大地震では、道路上の障害物をどける道路啓開や、航路上の漂流物を除去する航路啓開、津波などにより浸水した低平地の排水作業が、救命車両や緊急物資を被災地に届けるための重要な第一歩になる。
しかし、同時に広い地域が被災すると、建設企業の連携にも混乱が生じる恐れがある。建設企業や団体が、複数の行政機関と災害協定を締結していたり、行政機関間で協定内容が重複している例があるためだ。
また、啓開対象となる道路と航路をうまくつなげなければ機能しない。また、道路を含め低平地の広い範囲が津波により浸水する恐れがあることを考えれば、道路啓開と排水作業にも高度な連携が必要になる。
南海トラフ巨大地震に対し、県レベルを超えて、効率的な啓開ルートや協定企業・団体の役割分担を設定しなくてはならない。こうした問題意識を踏まえ、国土交通省中部地方整備局が5月に打ち出したのが、道路・航路の啓開作業と濃尾平野の排水作業を連携させる「総合啓開」という考え方だ。
中部地整の森山誠二企画部長は8月、災害に関する市町との意見交換で、総合啓開について「まずは案をつくり、試したい」とする考えを示した。具体化に向けた取り組みも始まっている。8月31日に開かれた防災訓練では、道路啓開と排水作業を試行的に連携させる訓練も行った。
総合啓開を円滑に行うため、中部地整は、従来の災害協定の上位に位置するような包括的な協定の在り方も検討している。これまで個々の行政機関が個別に締結していた災害協定の枠組みに加え、南海トラフ巨大地震時に適用する上位の協定や国・県による一括協定の締結、複数ある協定の運用・調整を行うことなどが考えられる。
中部地整の山内博技術調整管理官は「団体ごとで、災害時に果たす役割も異なる」と指摘する。例えば、日本建設業連合会のような広域の団体には、被災地外からの応援が期待できる。地元の建設企業は即応性が高い一方で、地震も被災する恐れがある。「発災後の時間経過に応じた、団体ごとの役割の整理も必要になってくる」(山内技術調整管理官)

<災害廃棄物の処理体制>
ことし3月、東日本大震災による災害廃棄物の処理が終わった。巨大な地震と津波は、膨大な廃棄物を後に残す。環境省の推計によると、南海トラフ巨大地震で発生する災害廃棄物は約2億7000万〜3億2200万d。加えて、津波堆積物約2700万dも発生するという。東日本大震災の16倍の廃棄物と3倍の堆積物だ。処理施設の容量を踏まえた試算では、全国の施設をフル稼働しても焼却に6〜8年、埋め立て処分に8〜20年かかる見通しとなる。  環境省中部地方環境事務所は今秋、愛知県など中部8県と政令市などで構成する「大規模災害時廃棄物対策中部ブロック協議会」(仮称)を立ち上げる。県域を越えた廃棄物の処理体制を整えるとともに、建設業団体やセメント事業者などとの協定の締結も視野に入れ、課題と対策を協議する。  並行して、国レベルでは廃棄物処理の特例的な手続きの簡素化など、迅速な対応ができるよう、法整備を検討する。  自治体レベルでは、大量に出る廃棄物を一時的に保管するため、運動場や公園、埋め立て処分場、クリーンセンターなどを活用した仮置き場の確保が課題になる。災害廃棄物処理計画についても、14年度以降、順次策定していく。  広域の連携体制づくりに取り組む環境省廃棄物対策課の久保善哉課長補佐は「地方からも声を挙げてほしい」と力を込める。地方単位の処理では限界があるからこそ、建設業団体や産業廃棄物処理事業者など、多くの関係者を巻き込む取り組みが求められる。

 


愛知県


<民間建築物の耐震対策 補助制度を創設・拡充>
愛知県は現在、旧耐震基準で建設された県立学校や県民利用施設などの耐震対策を進めている。対象となる一般県有施設、病院事業庁施設、県営住宅、県立学校、企業庁施設の2013年9月末現在の耐震化率は81%となった。一方で地震発生時の被害を軽減するためには、民間の建築物の耐震化も進めなければならない。愛知県は、13年11月に施行された建築物の耐震改修の促進に関する法律の改正に合わせ、民間建築物の耐震診断費用に対する補助制度を拡充。新たに耐震診断を義務付けた、避難路沿道建築物について補助制度を新設した。また、不特定多数が利用する建築物を対象とした耐震改修費の補助制度も創設した。県は、診断の実施などを呼び掛けている。
避難路沿道建築物の耐震診断費補助は、耐震改修促進法の改正で、地方公共団体が指定した道路の沿道建築物の所有者に対し耐震診断を義務付けることができるようになったため、14年度に新設した。県は、第1次緊急輸送道路を基本とし、広域的な避難・救助活動の観点から、指定が必要な道路として国道1号など50路線、延長約873`を指定した。耐震診断を義務付けるのは、これらの路線の沿道に建ち、1981年5月31日以前に着工し、倒壊した場合に道路の半分を閉塞(へいそく)する恐れのあるもの。対象となる建築物は1000棟程度あると見ている。現在までに、数件の補助申請があった。県は所有者に対し、19年3月31日までに耐震診断の結果を報告するよう求めており、報告された結果は公表する予定だ。

そのほか、不特定多数の人が利用する建築物についても、耐震改修促進法の改正で耐震診断が義務化されたことに伴い、13年度に耐震診断費の補助制度を拡充した。これまでは費用の3分の1を事業者が負担しなければならなかったが、13年度から事業者は負担なしで耐震診断を実施できるようになった。対象となるのは、81年5月31日以前に着工した病院・店舗・旅館など(延べ床面積5000平方b以上)の不特定多数の者が利用する建築物。県内の対象建築物は150棟を下回る程度とみられる。13年度は1件の診断に補助した。診断結果の報告期限は15年12月末となっており、14年度は40件程度の実施を予定していた。しかし、現在までの申請は5件程度にとどまっている。今後診断の実施を一層呼び掛けていく。
不特定多数の人が利用する建築物については、耐震診断が義務付けられたことに伴い、14年度から耐震改修費の補助制度も創設した。県が耐震改修費補助事業を行う市町村に補助するもの。しかし、県内で現在補助を行っているのは名古屋市と岡崎市の2市のみ。現在までに申請はない。改修には多額の費用がかかるケースもあるため、制度が広がらないことが課題となっている。

住宅については、東日本大震災の直後に住宅の耐震診断費・改修費補助制度の利用数が大きく伸びたものの、最近では減少傾向にある。耐震診断費補助制度の13年度末時点での利用実績は、木造が113187件、非木造が5635件の合計118822件。一方、耐震改修の利用実績は、木造が12459件、非木造が619件の合計13078件となっている。県では、耐震診断の結果、対策が必要とわかっても、改修に踏み切らないケースも多いと見ている。県内の住宅の耐震化率は85%(11年度現在)。県は、20年度までに住宅の耐震化率を95%まで引き上げることを目標に市町村と協力して対応を進めていく。

 

急ぐべき民間建築の耐震化



 

 


愛建協の取り組み


災害支援システムを導入 愛建協
愛知県建設業協会(徳倉正晴会長)は、南海トラフ巨大地震などの災害発生時のBCP(事業継続計画)の一環として、災害支援システムを導入した。インターネットを使った会員企業の社員の安否確認や、会員企業の持つ資機材の情報管理などを行う。本格稼働に向けて現在、必要なデータの蓄積など準備作業を進めている。
システムの主な機能は@会員企業の社員の安否確認A行政機関などとのリアルタイムでの情報共有B災害現場での被災状況情報の収集と蓄積C会員企業の持つ資機材の情報管理C災害時の建設現場への一斉指令・情報発信―など。
会員企業の社員の安否確認は、携帯端末のメールの送受信で行う。各会員企業のBCPとしても活用できる。

災害現場での被災状況の情報収集も、携帯端末によるGPS付き写真や文字情報の送信で行う。行政とも情報を共有する。
資機材情報の管理では、会員企業による情報の登録と更新によって、これまで協会に書類を提出していた作業を効率化する。会員は平常時の自社の管理にも利用できる。災害発生時には、協会本部や行政の関係者が閲覧することで、被災地周辺の資機材を確認する。

 


名古屋市


さまざまな制度で支援 市営住宅は14年度に2棟着手
名古屋市はことし3月、南海トラフ巨大地震による人的被害、建物被害などの想定をまとめた。あらゆる可能性を考慮した最大クラスの地震が、冬の深夜に発生した場合の想定死者数は約6700人、地震動による全壊棟数は約34000棟と想定した。一方で、建物の耐震化や避難ビルの有効活用など、防災対策を施した場合の死者数は約1500人、全壊棟数は約9900棟に減り、被害を大幅に縮小できる見方を示した。
市では、被害想定をまとめるに当たり、▽東日本大震災を踏まえてあらゆる可能性を考慮した最大クラスの地震▽昭和南海地震など過去の地震を考慮した最大クラスの地震―の二つの地震を想定して被害を予測した。
あらゆる可能性を考慮した最大クラスの地震が冬の深夜に発生した場合の想定死者数は約6700人。このうち建物倒壊による死者数は約2100人に上るとした。
建物被害などでは、地震動による全壊棟数を約34000棟と推定した。
過去の地震を考慮した最大クラスの地震が、冬の深夜に発生した場合の想定死者数は約1400人。地震動による全壊棟数は約4900棟。直接的経済被害額は約3.54兆円と推計した。

しかし一方で、建物の耐震化や津波避難ビルの有効活用などの防災対策を施した場合、想定被害を大幅に縮小できるとした。防災対策の内容は▽建物の耐震化率100%の達成(現状約84%)▽家具などの転倒・落下防止対策実施率100%の達成(現状約55%)▽既存の津波避難ビルの有効活用―など。
これらを踏まえ、市では大規模地震による住宅や特定建築物(倒壊した場合に影響が大きいと予想される建築物)の建物倒壊を防止するため、さまざまな支援制度で建築物の耐震化を促進している。14年度には、耐震改修促進法の改正により耐震診断が義務付けられた大規模建築物への補助制度も新設し、一層の耐震化率の向上を図る考えだ。
支援制度のうち、「木造住宅耐震診断」は、1981年5月31日以前に着工した自己保有の2階建て以下の木造住宅であることなど、条件を全て満たせば、必要経費は全て補助金で賄うため、建物所有者は自己負担なしで耐震診断を受けられる。
「木造住宅耐震改修費補助」は、耐震改修工事の費用に対して最大135万円を補助する。対象は、同市の木造住宅耐震診断を受け、判定値が0.7未満とされた住宅。また、0.7以上1.0未満の場合は、判定値に0.3以上加算した耐震改修工事に対して補助する。補助額は、一般世帯の戸建て住宅が耐震改修費の2分の1で最大90万円。非課税世帯の戸建て住宅が4分の3で最大135万円。共同住宅・長屋の補助額は、一般世帯が耐震改修費の2分の1で最大(90×戸数)万円。非課税世帯が4分の3で最大(135×戸数)万円。

「非木造住宅耐震診断費補助」は、一戸建て住宅は費用の3分の2で最大86000円を補助する。長屋・共同住宅は、▽耐震診断費の3分の2▽延床面積による診断費用の3分の2▽一住戸当たり5万円―のうち一番低い額を補助する。対象は81年5月31日以前に着工された木造以外の住宅。
「非木造住宅耐震改修費補助」は、耐震診断の結果、安全な構造でないと判定されたものについて設計費と工事費の一部を補助する。設計費は3分の2を補助する。工事費は、一戸建て住宅が工事費の約15%で最大60万円。長屋・共同住宅が工事費の約15%で最大30万円。マンションが工事費の約15%で最大50万円。
また、学校・病院・店舗など「多数の者が利用する建築物の耐震診断」は、81年5月31日以前の着工で、大企業の所有でない一定規模以上の建物が対象となる。▽耐震診断費の3分の2▽150万円▽延べ面積により算定される費用―のうち一番低い額を助成する。

耐震補強を予定する梅森荘

  これらに加え、耐震改修促進法の改正に伴い、耐震診断が義務付けられた大規模建築物を対象とした補助制度を14年度に新設した。
13年11月に施行された改正法では、81年5月以前に着工した一定規模以上の大規模建築物について、耐震診断の実施を義務付けている。対象は▽病院・店舗・旅館などの不特定多数が利用する建築物▽小学校・老人ホームなどの避難弱者が利用する建築物▽火薬類などの危険物の貯蔵場・処理場―。規模は、病院・店舗・旅館が3階建て延べ5000平方b以上、幼稚園・保育所が2階建て延べ1500平方b以上、小学校・中学校は2階建て延べ3300平方b以上としている。

補助の対象となるのはこのうち、原則として当該用途の床面積が5000平方b以上のもの。耐震診断の補助金額は、診断に要する費用の3分の2以内の額。上限額は1棟当たり600万円。耐震改修設計の補助金額は、設計に要する費用の3分の2の額。上限額は1棟当たり400万円。耐震改修工事の補助金額は、工事に要する費用の23%以内の額。上限額は1棟当たり5500万円としている。
一方、公共建築物の耐震化事業では、小中学校など文教施設についてはほぼ完了している。今後は、市営住宅を対象に事業を進めていく予定だ。14年度は、梅森荘18号棟(名東区)と桶狭間荘8号棟(緑区)の工事に着手する。いずれもPCアウトフレーム工法で施工する。市では、15年度以降も計画的に市営住宅の耐震化を進めていく方針だ。

 


岐阜県


苔川(すのり)川の増水で削られた法面(高山市西之一色町)

【国土強靭化地域計画】策定へ推進本部
岐阜県は、北部に標高3000b級の山々が連なり、南部の平野部には木曽三川が流れるなど恵まれた自然があり、これらからもたらされる恵みは大きい。その一方、豊かな自然は、時には猛威をふるって県民の生活に脅威を与える。ことし8月16日から18日にも、記録的豪雨によって県内ではがけ崩れや橋の流失、床上・床下浸水など甚大な被害が発生した。自然災害などから県民の生命や財産を守るため、岐阜県では防災に関する様々な取り組みを進めている。今回は、モデル調査団体に選ばれて他に先駆けて行う国土強靭化地域計画策定に向けた取り組みや、岐阜県独自に立ち上げた岐阜県広域BCM認定制度について紹介する。
◇国土強靭化地域計画策定に向け知事を本部長とする県強靭化推進本部を設置
国が募集した国土強靭(きょうじん)化地域計画策定のモデル調査実施団体に選定された岐阜県は、古田肇岐阜県知事を本部長とする「県強靭化推進本部」を設置し、7月17日に第1回の会議を開催した。2014年度内に、内陸県である岐阜県の特性を反映させた「国土強靭化地域計画」をまとめる予定だ。
会議には、古田知事のほか副知事や各部の部長らが出席して全庁体制で国土強靭化地域計画策定を進めることなどを確認したほか、国の取り組みや地域計画作成の進め方などを検討した。また、9月中には交通や物流、エネルギー、情報通信、医療、ライフラインなどの事業者や有識者ら20人程度で構成する「県強靭化有識者会議」(仮称)を設置し、行政機関以外からの意見を幅広く求めるほか、個別課題の検討なども行っていく。14年度内に3回程度の開催を計画している。県ではこれらの有識者からの意見のほかに、国から派遣される専門家からのアドバイスなども受けて計画策定を進めていくことになる。

岐阜県は、飛山濃水の地と呼ばれるように、3000b級の山間部から海抜ゼロメートルの低平地まである、いわば日本の縮図的な地域特性を持っており、更に海なし県である内陸部に位置することから、南海トラフの海溝型巨大地震や内陸直下型地震はもとより局地的な集中豪雨などの風水害や雪害、液状化対策などへの対応についてまとめることが見込まれる。これらの事態に対するリスクシナリオを作成し、脆弱(ぜいじゃく)性の分析・評価、課題、対応方法などを検討していく。
国土強靭化地域計画は、政府が6月に閣議決定した国土強靭化を進める指針「国土強靭化基本法」に基づき国土強靭化の取り組みを効果的に推進するため、地方公共団体が国土強靭化地域計画を策定し、地域特性に応じた施策を総合的かつ計画的に推進することを求めている。
※国土強靱化地域計画とは、いかなる自然災害などが起こっても機能不全に陥らず、いつまでも元気であり続ける「強靱な地域」をつくりあげるための計画で、強靱化に関する事項については、地域防災計画はもとより、地方公共団体における行政全般に関わる既存の総合的な計画よりもさらに上位に位置付けられるもの。

◇岐阜県広域BCM認定制度
岐阜県は、大規模災害発生時の災害応援協定を結んでいる県内建設業関連団体を対象とした事業継続マネジメント(BCM)認定制度「岐阜県建設業広域BCM認定制度」を創設し、岐阜県建設業協会が第1号認定団体となった。この取り組みは全国でも初となるもの。
県は、災害時に緊急輸送道路の確保をはじめとする社会インフラの早期復旧に取り組む責任を担っており、その実施に際しては、地域の建設業の協力が不可欠と認識している。同制度は、県と災害応援協定を締結する建設業関連団体が策定する事業継続計画(BCP)とその改善に向けた継続的な活動を含めた事業継続マネジメント(BCM)を県が認定・公表することにより、建設業全体の事業継続力を高める取り組みを推進し、これをもって岐阜県の地域防災力の向上を目的とする。
認定対象は、岐阜県と災害応援協定を締結している県内建設業関連団体。同制度により広域BCMの認定を受けようとする団体は、広域BCMの目的や達成目標といった基本方針、確認項目などをまとめた申込書類を整えた上で岐阜県知事あてに申し込む。県は書類審査や岐阜県建設業広域BCM認定制度運用委員会による面接などにより認定の適否を判断する。認定後の遵守事項としては、「広域BCMの適切な運用・管理・改善」と「広域BCM認定事項(記載内容)の変更に関する報告と協議を求めている。広域BCMの運用・管理としては、団体職員や会員企業、協力企業・機関などへの周知や認定事項のメンテナンス、最新災害関連情報の入手・共有など。改善としては、教育・訓練を通じた課題整理、改善実施計画の策定、定期点検や広域BCMの見直しなどが要求される。認定の有効期間は認定日から3年経過後の3月31日まで。

 

宮前橋崩落

 


三重県


国道163号での災害復旧工事(伊賀市)

国道163号での応急復旧工事(津市美里町)

  毎年、風水害の被害が発生し、近い将来には大規模地震の発生が危惧される三重県では、災害を最小限に抑える「防災」「減災」対策が重要な施策となっている。今回は減災につながる災害協定と道路啓開、また防災訓練などの取り組みなどを紹介する。

◎災害協定の締結状況
三重県が締結する災害協定は、医療、食品、輸送、水道、建設などさまざまな分野の団体・組織にわたり、2014年3月末時点では、148件の協定数となった。12年12月時点の協定数が126件だったことから、この1年3カ月の間に22件の協定締結があったことになる。14年に締結した協定のうち、建設産業関連では、三重県電気工事業工業組合が2月17日に、「災害時における電気設備の応急対策に関する協定」を締結。発災時の電気設備の被災調査や応急対応などで協力する。また、東日本大震災発生日と同日の3月11日には、三重県建設業協会、三重県木材協同組合連合会、三重電業協会、三重県管工事工業協会の4団体が「災害時における応急仮設住宅の建設に関する協定」を締結。4団体が連携して応急仮設住宅の建設に取り組む。

◎災害協定に基づく災害対応
11年8月に熊野市を中心に大被害を被った「紀伊半島大水害」以降も、台風や集中豪雨による県内の災害は後を絶たない。その度に、災害協定に基づく出動要請を受けた三重県建設業協会の各支部会員企業が応急復旧などで現場へ向かい、交通の安全、早期の復旧に努めている。
13年9月に発生した台風18号では、伊賀地区を中心に中勢地域で被害が発生し、伊賀市内の国道422号、165号、163号で護岸崩落などにより通行止めになった。建設業協会伊賀支部会員企業が、応急復旧で対応し、土砂除去、警備などに当たった。その後、災害査定を受け、災害復旧工事=写真=で早期の復旧に努めた。工事を発注した伊賀建設事務所では、14年度から制度化した優良工事の事務所長表彰に合わせて、18号台風時の災害対応や雪氷対策に努めた企業12社と伊賀支部に感謝状を贈り、その貢献度をたたえた。
また、ことし8月に発生した台風11号では、津市などの道路・河川で土砂崩落などが発生し、同協会の津、一志、松阪、熊野の各支部が災害協定に基づき対応した。特に国道163号の津市美里町北長野では台風通過後の11日に道路面が大きく陥没し、けが人も発生し通行止めとなっていたが、要請を受けた津支部会員企業が12日に仮工事着手=写真=し、15日に通行止めを解除した。

◎防災訓練
「訓練でできないことは、実際の災害でも発揮できない」という信念の下、県および関係機関による実践的な防災訓練が毎年実施されている。国土交通省中部地方整備局や三重、愛知、岐阜の各県の関係自治体などによる「木曽三川連合総合水防演習・広域連携防災訓練」が5月18日、桑名市長島町の長島運動公園をメーン会場に行われた。サテライトとして四日市港霞ケ浦南ふ頭と、いなべ市の藤原文化センターでも実施された。メーン会場の長島運動公園では、訓練に参加した三重県建設業協会桑員支部が、道路啓開活動や堤防の決壊を想定し、破堤箇所へのブロック投入による荒締め切りなどを実践した。
本年度は11月2日に、県と志摩市による総合防災訓練を行い、その中で、建設業協会と連携して道路啓開訓練を実施する予定。

◎道路啓開マップと道路啓開基地整備
県は、災害時に孤立化が懸念されている熊野灘沿岸地域について、高速道路、熊野尾鷲道路、国道42号の主要道路に対し、国道167号、260号、311号を“くしの歯”ルートとして「道路啓開」により救援ルートなどを確保する計画を立てている。道路啓開に当たって、地域ごとに三重県建設業協会の会員企業の受け持ち区間や道路啓開基地の位置などを示した「道路啓開マップ」を12年度に共同で作成した。さらに、13年3月には建設業協会との災害協定を再締結し、津波などの被害に際して、「道路啓開の協力要請」を追加した。これにより通信が途絶した状況下においても建設企業が道路啓開マップに基づき迅速な初動体制に取り組むことができるようになった。
道路啓開基地は啓開作業に必要な鋼材、砕石などを備蓄する倉庫とヤード(敷地1000〜2000平方b)で構成する。伊勢、志摩、熊野、尾鷲建設事務所の4管内で、津波被害が及ばない主要県道沿いで計12カ所の設置を計画し、15年度までに順次整備を終える予定。

◎情報共有システム
三重県建設業協会では、災害発生時の初期段階の情報伝達手段の確保と情報の共有化を図り、会員、社員の安否確認や迅速な道路啓開作業などに取り組むため、携帯電話のメール、GPSなどの機能を駆使した「情報共有システム」を12年度に構築した。これらの情報は災害協定を結ぶ国土交通省、三重県にもリアルタイムに提供され、官・民をつなぐ、より実効力のある情報共有の手段となっている。

◎公共建築の耐震化状況
13年度末現在の県有建築物の耐震化率は99%で、対象708棟に対し701棟が耐震化済み。このうち、県立学校施設については、13年度に未耐震の5棟を解体したことで、100%の耐震化率となった。公立小中学校では98.5%、公立幼稚園は100%となっている。
非構造部材の耐震対策実施率は、県立学校が13.5%、公立小中学校が35.6%、公立幼稚園が31%となっている。

 

水防訓練(道路啓開訓練)

東部
RX Japan
  • 四国建販
  • ダイナナ

PR

建設業労働災害防止協会
電子版のお申し込みはこちら 新聞(宅配)のお申し込みはこちら

ログイン

ALINCO
ジロー
システムズナカシマ

企画特集

  • Catch-up

    Catch-up
    働き方改革、デジタル化、カーボンニュートラル…。Catch-upでは建設産業を取り巻く話題、最新の法改正などの動向をタイムリーに紹介しています。

  • 連載「脱炭素のホンネ」

    連載「脱炭素のホンネ」
    改正建築物省エネ法の成立は、建築分野の脱炭素化に向けた大きな一歩となった。新築建物については種類を問わず、省エネルギー基準への適合が義務化されることとなった。だが、ある“難題”がまだ立ちはだかっている。

  • インフラメンテナンス 次の10年

    インフラメンテナンス 次の10年
    9人の尊い命を奪った中央道の笹子トンネル天井板崩落事故から10年がたった。国の調査委員会が「わが国において例を見ない」と形容したこの悲劇をきっかけに、インフラ保全の重要性が改めて強く認識され、日本のメンテナンス行政は大きく動いた。

  • いまから備えるインボイス

    いまから備えるインボイス
    2023年10月以降、事業者が発行する請求書等は適格請求書等(インボイス)になります。建設業もいまから対応に向けた準備が必要です。

入札情報をメールで受け取ろう!!

2,953機関
受付中案件数
3,327 件
本日の入札件数
0 件
昨日の新着件数
0 件
東京都|
千代田区|
中央区|
港区|
新宿区|
文京区|
台東区|
墨田区|
江東区|
品川区|
目黒区|
大田区|
世田谷区|
渋谷区|
中野区|
杉並区|
豊島区|
板橋区|
練馬区|
北区|
荒川区|
足立区|
葛飾区|
江戸川区|
八王子市|
神奈川県|
横浜市|
川崎市|
横須賀市|
茅ケ崎市|
平塚市|
小田原市|
相模原市|
大和市|
厚木市|
静岡県|
沼津市|
富士市|
静岡市|
浜松市|
愛知県|
岐阜県|
三重県|
名古屋市|
一宮市|
春日井市|
岡崎市|
豊田市|
豊橋市|
岐阜市|
四日市市|
津市|
大阪府|
兵庫県|
京都府|
滋賀県|
和歌山県|
奈良県|
大阪市|
豊中市|
吹田市|
高槻市|
茨木市|
枚方市|
寝屋川市|
八尾市|
東大阪市|
堺市|
岸和田市|
岡山県|
岡山市|
倉敷市|
香川県|
徳島県|
高知県|
愛媛県|
高松市|
徳島市|
高知市|
松山市|
入札情報 発注予定 建設会社 経審 特集 プレスリリース 商品案内 ネット広告 建設人 予算情報