【東海地域】建設業の担い手確保・育成

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建設業の担い手確保・育成

～活発化する新たなる取り組み～

労働局と連携し就職面接会

　建設産業の人材不足の問題が深刻化している。そんな中、改正公共工事品確法など「担い手3法」が2014年6月に成立した。こうした動きに象徴されるように、建設業の人材の確保・育成に向けた新たな歯車が回り始めている。東海地区での取り組みを追った。

　愛知県建設業協会（德倉正晴会長）は14年度、愛知労働局との共催で、初の建設業就職面接会を名古屋市中村区のウインクあいちで開いた。8月に開いた面接会には12社、12月には27社の企業が参加。卒業予定の学生を含め、2回で延べ約150人の求職者が訪れた。今後、5月6日にも開催する予定でいる。
愛知労働局が建設業に限定した就職面接会を開くのも初めて試み。その背景には、建設業の深刻な人手不足がある。同局によると、愛知県内の14年11月の建設業の有効求人倍率は、建築・土木技術者で5.17倍、躯体工事の技能者で9.55倍に上っている。全産業平均の1.53倍に比べ極端な高倍率になっている。
同局職業安定部の吉田克年職業対策課長は、建設業の求人のポイントとして、「仕事の内容とともに、会社の特色や、入社後の資格取得などキャリアップを求人票などで具体的に求職者に提示することが重要」だと話す。専門工事業の場合は、元請けの会社名を知らせることも、会社に対する求職者の理解を助ける上で大切だ。
また、新卒者を募集する場合は、学校に求人票を早めに出すべきだとアドバイスする。例えば、高校への求人票は7月1日から提出できる。9月16日の選考解禁に向け、生徒は夏休み中に応募先を固めることになる。したがって、7月1日以降、できるだけ早く求人票を出すことが人材確保の鍵になる。また「工業高校にとらわれず、普通高校にも目を向けるべき。建設業に興味を持つ生徒はいる」と話す。

建設若者塾の交流会での腕相撲大会（写真提供／中部地方整備局）

　14年10月３日、名古屋市港区のセミナー会場に46人の若者が集まった。彼らは普段、東海地域のそれぞれの職場である建設現場で、技術者や技能者として汗を流している。この日、初めて顔を合わせた。
愛知・岐阜・三重・静岡の東海4県の建設業協会と日本建設業連合会中部支部で組織する中部圏建設広報ネットワーク協議会（会長・山川伸次愛知県建設業協会専務理事）が1泊2日の日程で企画した「建設若者塾」だ。
初日は、建設業の仕事のやりがいや社会的意義について講義を受けるとともに、技術・技能のスキルアップなどをテーマにグループディスカッションを行った。夜の交流会では、グループ対抗の腕相撲大会などで盛り上がった。2日目は、中日本高速道路の一宮道路管制センターと、名古屋城本丸御殿の復元工事の現場を見学した。
協議会の事務局を務める国土交通省中部地方整備局建政部の髙鍋誠治建設産業調整官は建設若者塾の開催の経緯をこう説明する。
「定期的に建設業に行っているヒアリングで、『リーマンショック後に世代の空白があり、若者を採用しても同年代の同僚がいなく孤立する』という声が目立った。新規入職者の横のつながりを構築しながら人材を育てていく必要があることが分かった」
愛知県から参加したある若者はアンケートで、「会社では同世代が全くいない。建設業で働いている同じ世代の仲間がこんなにいると知った」と塾の感想を伝えた。また、岐阜県からの参加者は「仕事をつらいと思っていたが、その考えを変える勉強ができた。同じ思いをしている仲間と話すことができ、共感できる部分がたくさんあった。また頑張っていこうという思いになった」と答えている。
協議会では15年度の建設若者塾を5月28日から30日までの2泊3日の日程で開くことにしている。前回より1日増やし、現場見学などを充実する方針だ。
中部圏建設広報ネットワーク協議会は、13年11月に発足した。中部地方整備局と中部地区の建設業協会などが連携し、建設業の魅力を発信し、建設業への社会の理解を深めるとともに、若年者の入職を促進していくのが目的だ。建設若者塾のほか、学校への出前講座の実施や、広報用DVDの作成などに取り組んでいる。
出前講座では、中学や高校などに出向き、東日本大震災の際の緊急対応や、南海トラフ巨大地震への備え、防災活動での建設業の役割などを、動画も使って説明している。14年度は10月から12月末までに中部地整の髙鍋建設産業調整官が７校に出向き、延べ約700人の生徒に講義した。15年度は50回の開催を目標にしている。
同協議会の活動は、14年10月に全国レベルの関係機関が集まって発足した「建設産業担い手確保・育成コンソーシアム」（事務局・建設業振興基金）の支援対象にもなっている。

建設業ＯＢサポーターの懇談会

　岐阜県からの委託を受けて岐阜県建設業協会（小川弘会長）では、会員企業に就職した入社後5年ぐらいまでの工業系高校の卒業生が、「OBサポーター」となって活動する「建設業OBサポーター事業」を14年7月から始めた。地元の工業系高校での就職相談、出前講座、インターンシップなど学校のニーズに応えるサポート事業を行う　現在のサポーター登録人数は26人。県内9校（高校8校、職業能力開発短大1校）の学校別に編成したOBサポートチームが就職サポートなどを行う。　これまでも協会は、岐阜県や工業系高校と連携して高校生を対象とした現場見学会やインターンシップなどに積極的に協力してきた。今回始まった取り組みでは、行政・学校・企業が連携をより深め、建設業の担い手確保・育成に向けた活動に若手技術者が参加していく。地域が一丸となった担い手確保の仕組みが動き始めた。　14年7月23日には、OBサポーターの建設業に対する思いや将来に対する不安などについて、建設業経営者や工業系教諭を交えて話し合うキックオフセミナー「建設業担い手確保・育成研修会」が開かれた。　セミナーのパネルディスカッションでコーディネーターを務めた建設業振興基金の内田俊一理事長は、この事業を「おそらく建設業団体としては初の試み」と評価し、「OBサポーターが後輩に『安心して入ってこい』と力強く呼び掛けるためには、社長さんたちの決意も問われてくる」と話した。OBサポーターたちは、就職前後に感じた不安ややりがいをパネルディスカッションで話し、この事業が後輩たちの進路選びに果たす役割の大きさを感じていた。　事業の始まりが年度途中の７月だったため、OBサポーターの本格的な活動は15年度からとなる。その準備として1月22日に開かれた「建設業OBサポーター関係者懇談会」では、OBサポーターと工業系の先生が各学校別に分かれて学校ニーズのヒアリングとこれからのサポート活動の進め方について打ち合わせを行った。

地域人づくり事業での集合研修

　厚生労働省の「地域人づくり事業」業務を三重県から受託した「三重県建設業協会地域人づくりコンソーシアム」（代表団体・三重県建設業協会）は、建設業若年労働者雇用拡大推進事業などに積極的に取り組んでいる。
8月下旬からコンソーシアムを構成する各企業がハローワークを通じて求人を行い、これに合わせて同コンソーシアム事務局が、「建設業で未来の三重を造る人」をキャッチフレーズにしたポスターやテレビの番組で周知に努めた。その結果、14年12月末時点で46人の雇用契約が実現した。同コンソーシアム事務局では、「3月までに、100人程度の雇用を目指したい。集合研修、企業研修による人材育成で、正規雇用につながるようしっかりとサポートしたい」と話している。
12月に新規入職者を対象に行われた集合研修では、33人が労働安全衛生の基本などを学んだ。参加者の一人は「将来は施工管理技士の資格にも挑戦したい」と話し、スキルアップへの意欲などを示した。
情報発信では、地元の三重テレビとFM三重で、若年労働者が成長していく姿などを追う番組を14年10月から放送している。番組では、人材不足により将来、技術の伝承や品質確保に支障が懸念されることや、建設業がいかにやりがいのある仕事であるかをアピール。女性技術者のインタビューでは、建設業に働く喜びや価値のある仕事であることを語った。放映後は、編集したDVDで建設業のPRを図る計画だ。

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このコーナーでは、入札情報関連の話題や建設業界注目の情報、工事ニュースなどを取り上げます。

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