―協会内外を取り巻く環境変化が大きい。
「火山の噴火や豪雨災害など激甚災害が多発している。その結果、国土の脆弱(ぜいじゃく)性や、防災・減災の必要性についての国民の理解は少しずつ広がってきたようだ。公共投資に対する誤解もだいぶ解けてきたように思う」
「ただ、地質調査についての理解が深まったとまでは言えない。われわれ地盤(地質・土質)の状態を解析し、情報を提供する地質調査業が国土強靭(きょうじん)化の最前腺に立って国民の安心・安全な暮らしを支えているということを、もっと知ってもらう必要がある」
「一般社団法人として活動の公益性を高めていく必要がある。災害発生時などには助けになる地盤の技術集団として認識してもらえる団体でありたい。地盤工学会や応用地質学会などとも連携して『小さな一歩を大きな一歩にする』努力を重ねていきたい」
「組織も設立から60年が経つと、どうしても垢(あか)が付いてしまう。若干、慣れ合う部分ができてしまっている気もしている。習慣病にならないよう、いまのうちに治しておきたい」
―技術者の確保・育成と、これまで培ってきた技術の継承が大きな課題となっている。
「若手技術者の教科書にしてもらい、われわれが培ってきた技術を継承していってほしいとの願いから『地質調査の実務』を全面的に改訂した。社員教育用のテキストにもなる、地質調査に携わる人にとって必携の書だ」
「かつては、せっかく育ち始めた女性技術者が結婚・育児などのために離職していくケースがあったが、いまは、多くの企業が仕事と家庭の両立を応援する体制や環境整備に取り組んでいる。近年、大学では、理学や土木工学を学ぶ女子学生も増えているという。女性のハンデが全くなくなったとは言えないが、彼女たちの職業選択の対象、受け皿として私たちも積極的に手を挙げていきたい」
―厳しかった競争環境が徐々にではあるが、改善されつつある。
「改正公共工事品質確保促進法(品確法)には期待しているが、法の理念が発注者に理解され、実効性が担保される必要がある。改正品確法の効果を発現させていくためにも公共事業予算の編成から、その在り方を考えていただきたいところだ。大幅な予算の増額を求める訳ではないが、3年、5年、10年と中長期的な経営ビジョンが描けるような、先を見据えた予算編成であってほしい」
―国民生活の安心・安全はもちろんのこと、資源探査・活用などの経済活動に果たす地質調査業の役割は大きい。
「今は自分が住んでいる標高さえ知らないまま、アスファルトに覆われた街に住んでいる人が多い。地域の山や川の名前さえ知らないという人も多い。われわれ協会としては、人々が暮らす地盤について理解を深めてもらう努力を、もう少し力強く行っていきたいし、地質調査業はこれまで以上に国民の安心・安全な暮らしを支える、役に立つ業になっていかなければならないと考えている。これまで60年にわたって培ってきた技術を継承していくだけでなく、もう一度基本に立ち返り、(地質調査業の社会における存在を)ぜひ、太い轍(わだち)にしていきたい」