6月3日は「測量の日」。1989年、建設省(現国土交通省)が測量法の制定40周年を記念し、同法が1949年6月3日に成立したことにちなんで制定したものだ。その測量は現代社会にあっては、国土の管理・保全や、防災・減災、さらに急速に拡大する地理空間情報高度活用社会を支える極めて重要な情報インフラとなっている。
来年2017年は、地理空間情報活用推進基本法が成立してからちょうど10年目に当たる。同法に基づき策定された「基本計画」は16年度が最終年度となることから、国土地理院ら関係機関は次期基本計画の策定に向け、すでに検討を始めている。
同法が施行されてからこの約10年の間に、地理空間情報の利活用は急速に進んだ。道行く人がスマートフォンなどに標準装備された位置情報アプリを使って移動する姿は当たり前になり、カーナビゲーションを車載していない車を見ることの方がめずらしくなった。
パソコンやタブレットから無償で利用できる基盤地図情報(地理院地図)をベースとして作成し、国や自治体などの行政機関が市民サービスや防災・減災などに活用するようになっている地理空間情報は、すでに治水地形分類図や都市圏活断層図など1200種類以上になっているという。
建設業界だけを見ても、国土交通省が「i-Construction(建設現場の生産性革命)」をうたい、▽建設現場の工場化▽建設現場のサプライチェーンマネジメント▽「規制」と「既成概念」の二つの“キセイ”の打破―を目指すようになっている。
調査・測量から設計、施工、検査、さらには維持管理・更新まであらゆる建設生産プロセスに3次元データをフル活用し、ICT(情報通信技術)などと組み合わせ、より高いレベルの生産性を実現しようという、野心的なチャレンジが、官民ともに広がりつつある。
しかし、その一方では測量技術者の減少による担い手不足が顕在化している。背景には、学校教育での地理教育の後退、公共投資の減少などがあるとの指摘もある。近年の測量をめぐる社会経済環境の変化を見ていながら、測量技術者のキャリアパスを描いてみせることができていないこともまた、その大きな理由の一つと指摘する声もある。
地理空間情報高度利用社会の実現には、高精度な公共測量の成果は欠かせない。測量法に基づく国家資格である測量士・同士補に、地理空間情報高度利用社会の実現に向けた活躍の場を広げる必要もある。
次期基本計画は、次の10年を左右するだけでなく、この国の未来、社会の姿をも左右しかねない極めて大事な計画になる。
6月3日は測量の日 今を測り 明日を築く
熊本地震でも「G・K・K」実践
国土地理院院長 越智繁雄
2016年熊本地震により、多大な被害が発生し、お亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りしますとともに、被災された皆様には心よりお見舞い申しあげます。
「測量の日」は、測量法が1949年6月3日に公布されてから89年(平成元年)で40年を迎えたことを機会に、測量と地図の役割と重要性について多くの皆さまに理解を深めていただくことを目的として制定され、今年で28回目を迎えました。
測量と地図は、国土の位置・姿・形を正確に知るための「国土を測る」、その測られた地理空間情報を分かりやすくするため地図化する「国土を描く」、さらには災害時の復旧・復興の基礎となり平時の防災などにも役立てる「国土を守る」という、国民の安全・安心の確保や社会経済活動に必要不可欠な役割を担っています。また、その役割は、全ての建設プロセスの最上流にあり、社会資本整備をはじめ国民の経済活動や生活において、信頼度の維持・向上や発展性を決める重要なものになっています。
その役割を果たすために、「G(技術)」、「K(広報)」、「K(教育)」を三つの柱として、一つ一つを丁寧に、かつ三位一体のものとして取り組む必要があるものと考えています。
「G(技術)」は、あらゆる活動の基盤です。精度が高く信頼できる測量成果や地理空間情報を提供するため、常に技術の発展をキャッチし、古い技術と新しい技術を融合化し高い技術力へと昇華させ、さまざまな事業に展開してきています。例えば、無人航空機(UAV)の公共測量への適用や干渉SAR技術を用いた地盤・地殻の変動監視などは、社会への実装技術として大きな貢献が期待されます。「K(広報)」は、測量や地図が社会のあらゆる場面で役立っていることをしっかりと国民に伝えるとともに、国土管理、地域の安全・安心、生活の利便に欠かすことができない重要な役割を担っていることを理解していただくために重要な取り組みです。そして広報と車の両輪を成すもう一つの「K(教育)」は、測量と地図の本当の姿を正確に伝えるだけでなく、地理的な見方や考え方を身に付けることにより、社会の変化や世界の動きを見通す力を養うとともに、自らの命や生活を守る行動に直結する取り組みとなります。
4月に発生した熊本地震において、国土地理院では、空中写真・UAVによる上空からの撮影、土砂崩壊地の判読、電子基準点・衛星画像の解析による地殻変動の把握などを迅速かつ正確に情報提供し、防災機関などの応急対策活動に役立ててもらうこと、被災者の方々に被害の状況などを、確実に伝え、把握してもらうこと、さらに、記録を残して次なる災害の備えとして活用してもらうこと、に思いを込めて「G・K・K」を実践したところです。
国土地理院では、全国各地において「測量の日」の関連行事をはじめ、「G・K・K」を合い言葉に、測量と地図の役割と重要性につきまして、さらなる情報の発信・受信・共有を推進していきます。国民の皆さまには、一層のご理解をいただきますようお願い申し上げます。
東日本大震災、熊本地震が発生するなど、防災・減災・復旧復興に向け、地図や空中写真などの地理空間情報の重要性がますます高まっており、6月3日を中心に全国各地で関連行事が展開された。
恒例の地図教室を開催
「測量の日」中部地区連絡協議会は、「測量の日」の関連事業として、2016年度も静岡県内の小学4年生以上を対象に「地図教室」を開く。
開催する小学校は、三島市立中郷小学校、吉田町立中央小学校、浜松市立与進小学校、島田市立六合東小学校を予定。計約470人の児童を対象に実施する方針。
内容は地図の読み方、使い方などの講話、歩測や測量機器を使用した測量体験を通じて測量の重要性について理解を深めてもらう。指導には、静岡県測量設計業協会(杉山博会長)や、国土地理院の職員が当たる。
「測量の日」の中部地区記念行事が3日、岐阜市のじゅうろくプラザを会場に開かれた。「測量の日」中部地区連絡協議会や国土交通省国土地理院中部地方測量部、岐阜県測量設計業協会などが主催した。
ドローンや最新測量機器・技術が展示された会場では、昨年の第15回高校生ものづくりコンテスト全国大会の測量部門で優勝した岐阜県立岐南工業高校を表彰したほか、JR東海の須田寛相談役による「道路と観光」、岐阜大学の杉戸真太副学長による「迫り来る南海トラフ巨大地震」の講演が行われた。
神奈川県測量設計業協会(神測協)は5月17日、黒岩祐治神奈川県知事をはじめ協会顧問の国会議員、神奈川県議会議員らを招き、協会設立40周年記念式典・祝賀会を横浜市内で開いた。1977年10月15日に「神奈川県測量業協会」として設立し、2017年で40周年を迎える。当該年度は神測協が全国測量設計業協会連合会(全測連)関東地区協議会・地方県会議の開催県となることが決まっており、大きなイベントが重なるため、記念式典を1年早めて実施した。測量の日に当たり、神測協の永井博記会長に、測量を取り巻く現状と今後の協会の取り組みについて聞いた。
測量を取り巻く現状、今後の取り組み
〜若手にとって魅力ある職場づくりを〜
■技術革新への対応が課題
「この10年間で測量設計技術は、高度の情報化社会への進化に伴い、それに対応するため急速な技術革新が行われた。1997年には地理空間情報活用推進基本法が制定され、GISのステップアップが一段と進むようになった。さらに、GNSS(GPS)測量、MMS、レーザースキャナー搭載のUAV(ドローン)による3次元測量、それらのデータから3次元モデルを作成し、一連の生産システム効率化・高度化を図ろうとするi-コンストラクションなど、われわれ測量設計業にかかわる技術・機器の進展はすさまじく、協会として会員への技術支援などを含め、いかに対応していくかが大きなテーマとなる」
■事業量の確保などに努力
「深刻となっている担い手確保について、協会では県内小学校への出前講座、県内工業高校教諭や生徒への測量設計技術の指導、講習などを行い、測量業に目を向けてもらうよう努めている。また、若者にとって、魅力ある職場とするためには、やはり待遇改善が必須だ。そのため、技術者単価の増額、会員企業の事業量の確保や、最低制限価格の引き上げなどの実現に向け、努力を続けていかなければならない」
■研修など通じてレベルアップ
「今後は、激しく動く社会情勢や、目覚ましく進歩する測量設計の技術革新に対応していく必要がある。研修会、講演会のさらなる充実により、会員企業やその社員のレベルアップを目指し、社会的使命に応えるべく、なお一層の努力をしていきたい」
「一人でも多くの人が地図に親しみ、測量の重要性が理解されるように」―。国土地理院近畿地方測量部、大阪府測量設計業協会、大阪土地家屋調査士会主催による「測量の日」記念フェア2016(第20回近畿地方測量技術発表会)が6月7日に大阪市内で開かれた。パネル展や測量機器・システム展、測量技術発表会が行われ、多数の来場者でにぎわった。
「測量の日」四国地区推進協議会(会長−石橋良啓国土交通省四国地方整備局長)は19日、全国測量設計業協会連合会四国地区協議会と共催で、第28回「測量の日」記念講演会を徳島市内で開催し、約100人が参加した。
石橋会長はあいさつで「測量は、国民の生活に密接に関わっている。測量の意義や重要性を広く知ってもらうよう事業を推進したい」と語った。
講演では「最近の測量情勢について」をテーマに越智繁雄国土交通省国土地理院長(写真)が、i-Constructionを進めるための視点、新基準の導入、ICT土工に必要な企業の設備投資に関する支援などのほか、熊本地震への対応などについて解説した。
香川県測量設計業協会(武内和俊会長)は5月27日、歩測などの測量体験学習を三豊市の大見小学校で行った。
6月3日の「測量の日」を前に、測量と地図をはじめとする地理空間情報の役割と大切さを理解してもらおうと毎年、県内の小学校などで行っている行事。
当日は大見小学校4年生21人が参加。国土地理院四国地方測量部測量課長の藤井稔氏が「地図と地図記号の学習」について講義。その後、体育館に移動して歩測による測量体験をした。
体験学習を終え、細谷幸弘副会長は「伊能忠敬は歩測で距離を測り日本地図を作った。歩測を体験することで昔の測量がどういうものだったか分かったと思う。少しでも測量に興味を持ってもらえれば」と話した。
「測量の日」四国地区推進協議会主催による2016年度測量・地図学習会が6月1日、愛媛県立上浮穴高校(森田桂子校長)で行われ、森林環境科2年生の生徒16人が測量・地図について学んだ。
この取り組みには、愛媛県測量設計業協会が協力、当日は協会会員である南海測量設計(松山市)の若手社員ら10人が実習講師として参加した。
学習会では、国土地理院四国地方測量部の木村佳織氏が測量・地図について説明した後、構内の敷地へ移動し、測量機器の据え付け、観測を行った。生徒はGNSSなど衛星測位システムによる最新の測量技術に触れ、貴重な体験となった。
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