長良川・揖斐川・木曽川の木曽三川中流部と支川の一部を管理し、河川整備や堤防整備などにより流域を守る国土交通省木曽川上流河川事務所、荒廃地域からの土砂流出防止、多目的ダムへの土砂流入抑制と土石流危険渓流での土砂災害防止などの事業を推進する同越美山系砂防事務所、国道21号など国道6路線と、高規格幹線道路の国道475号東海環状自動車道を急ピッチで整備する同岐阜国道事務所。国土の強靱化に向けて河川事業や砂防事業、道路事業などに取り組む3事務所の所長に、2016年度主要事業や建設業界へのメッセージなどを聞いた。
――事務所の役割は。
「木曽川、長良川、揖斐川の本川中流部と支川の一部を管理している総管理延長は約185`。本川は、養老町、輪之内町、羽島市、稲沢市より上流の濃尾平野を貫流する部分というとイメージしやすい」
「堤防、護岸、小支川と本川の合流部の水門、内水対策用のポンプ場などといった河川施設の点検や維持管理のほかに、治水安全度を上げるための堤防補強、河道掘削、樹木の伐採といった河川整備を進めている。また、河川環境の整備、保全、横山ダムの管理、国営木曽三川公園の管理のほか、災害時の地域支援も行っている」
――木曽三川の印象について伺いたい。
「下流部での宝暦治水、明治改修。木曽川川島地区の大正改修。岐阜市内で1952年に終了した長良川一本化など、治水の歴史と住民の関心の高さを感じている。また、59年の伊勢湾台風や76年の長良川安八災害など管内では大規模な出水が発生している」
「ことしは、安八災害から40年。当時の災害の深刻さや苦労を関係者から今もよく耳にする。それだけに水防・消防団や市民からの治水対策への要望は切実だ。洪水時や災害時には、行政のみならず、水防・消防団、建設業関係者など多くの人が尽力されていることを実感している」
「三川とも特徴があり、いずれも素晴らしい河川環境だ。それだけに河川利用や河川愛護活動も活発で、市民に愛されているという印象が強い。岐阜市内の長良川は県都にありながら素晴らしい環境が保たれている」
――昨年9月の関東・東北豪雨を踏まえ、水防災意識社会を再構築する取り組みを行うことになった。
「管内は1年を通じて比較的に穏やかであった一方、関東、東北では大変な豪雨となり、特に鬼怒川では堤防が決壊し、約40平方`が浸水するという大惨事となった。この関東・東北豪雨を踏まえ、『水防災意識社会再構築ビジョン』としての取り組みを行うことになった。当事務所でも、今後5カ年で実施する『洪水を安全に流すためのハード対策』と『危機管理型ハード対策』を公表した」
「『洪水を安全に流すためのハード対策』は、流下能力が不足したり、堤防漏水の実績があるなどの緊急性の高い区間の河道掘削や堤防整備を行う。『危機管理型ハード対策』は、氾濫リスクが高い区間で天端を舗装するなど緊急的に粘り強い堤防構造にする。今後、一部補正で対応するなど優先的に取り組んでいく」