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(2019/1/31)

【東海3県】公立小中学校への空調設備設置状況

 

 近年、夏場の酷暑が社会問題となっている。昨年の夏は、全国各地で観測史上最高となる気温を記録し、これに伴って熱中症による救急搬送も増加。豊田市では小学生の男児が熱中症で死亡する事故が発生した。こうした事態を受け文部科学省は、公立小中学校への空調設備設置に対する補助金を創設。多くの自治体が空調設備設置に動き出している。東海3県の状況を取材した。

 

エアコン設置

 

 全国的に公立小中学校施設に空調設備を設置する事業が進められている。「今夏の稼働」という時間的にも厳しい条件で施工を担当する設備業者。どのように工事を進めていけばいいのか、日本空調衛生工事業協会東海支部の石原彰久支部長に話を聞いた。

 

石原彰久

■多くの自治体で空調設備設置工事が続々と発注されているが、業界の反応はどうでしょうか。
近年、7〜8月にかけて全国的に酷暑が問題になっている。2018年の7月には豊田市の小学1年生の男児が熱中症で意識を失い、搬送先の病院で亡くなるという痛ましい事故が起こった。そのようなことが繰り返されないように、子どもたちが安心して学べる環境づくりを第一優先に考えるべきだ。分離やPFIなどさまざまな発注方式があるが、国からの補助が決定し、発注される工事が増えているのはありがたいことだと感じている。

■各自治体では、今夏までに小中学校に設置するのは難しいのではとの声も聞かれます。
夏までに設置できない障害を見極めることが重要だと思う。時間的に厳しいのであれば、休日や夜間の施工もやむを得ない。国を挙げて取り組んでいる働き方改革に反することだが、われわれは“職人”なので生徒の頭上で工事を進めることはできない。安全を第一に考えて施工する。

■建設業界全体で喫緊の課題となっている職人不足は影響しますか。
当然、技術者が足りない業者は今回の工事に積極的に参加できない。ただ、それはこの夏までの空調設備設置事業だけでなく、これから何十年、何百年と業界が続いていくために入職者を増やし、技術者を育てていかなくてはならない。そのためには何よりも賃金水準の底上げが重要となってくる。各自治体が分離発注を定着してくれれば、各設備業者が経営的に安定すると思う。

 

 

愛知県 全ての小中学校普通教室に設置へ

 

 愛知県内の公立小中学校の空調設備の設置状況は2018年9月1日現在、普通教室の設置率が42.1%、特別教室が28.1%。合わせると35.1%となる。全国を見ると、普通教室は58%、特別教室は42%、合わせると49.9%。愛知県はいずれも全国平均を下回っている状況で、対応が急がれている。
普通教室の設置状況を市町村別に見てみると、名古屋市、春日井市、日進市、北名古屋市、みよし市、大口町、蟹江町、飛島村、阿久比町の9市町村が設置率100%に達している。飛島村は特別教室についても設置を完了している状況だ。一方、大半の市町村は、普通教室への設置率が10%未満にとどまっている。54市町村のうち67%に当たる36市町村が10%未満。1%にも満たない市町村も9市町ある。18年7月に小学1年生の男児が熱中症により亡くなった豊田市の設置率は0.5%だ。
こうした中、文部科学省が、全国の公立小中学校での空調機器設置を支援する臨時特例交付金を創設したことから、県内の市町村も空調設備の設置に動き出した。普通教室の設置率が100%に達していない県内の全ての市町村が、今回の交付金を活用して設置することを決めた。統廃合が予定されているケースなどを除き、普通教室については県内の全ての小中学校で空調が設置される見通しだ。
工事の発注に当たっては、岡崎市はPFI事業として実施。公募型プロポーザルで事業者を決めた。多くの市町村が今後工事の発注を予定しているため、工事が集中することが予想される。
県も、特別支援学校への空調設置を前倒しする方針を発表した。18年9月1日現在の県内の特別支援学校の普通教室の設置率は59.3%、特別教室は48.5%。合わせると55.5%となる。全国を見ると、普通教室は83.2%、特別教室は70.3%、合わせると77.8%となっており、愛知県は極めて低い状況だ。そのため県は、全ての普通教室と特別教室への空調設備の設置を20年夏までに完了させる考えだ。

 

岐阜県 幼・小・中で約3000教室 高校は345教室

 

 岐阜県内市町村の幼稚園、小学校、中学校へのエアコン設置については、基本的に100%の設置率を目指し、各自治体が国の特例交付金を申請している。学校数は計285校で、約3000教室に設置する規模となる。また、岐阜県では、単独事業として、21の県立高校の普通教室、345教室にエアコンを設置する。
こうした大規模な空調機器の工事が同時期に発注されることに備え、文部科学省からの要請を受け、岐阜県は2018年11月に、県内の事業規模ををまとめ、設備関連の企業を会員とした岐阜県管設備工業協同組合(荒川晶一理事長)に協力依頼した。これを受け同組合としては、時期や条件がそろわなければ厳しいとし、「早期発注はもちろん、土日の工事だけではなく、平日の工事も必要」(荒川理事長)と要望している。
18年9月1日現在で文部科学省が公表した資料を見ると、組合立を含む市町村の小中学校のエアコン設置率は、県内43市町村と4組合立学校の普通教室のうち、岐阜市や関市など18市町村と4組合立学校が100%となっている。特別教室は、8市町村と1組合が100%だった。全ての教室に設置が完了しているのは、瑞穂市、笠松町、神戸町、輪之内町、安八町、川辺町、東安中学校組合という状況だ。  一方、どちらの教室も全て未設置なのは、飛騨市のみだった。
設置率100%ではない学校がある市町村は、全ての普通教室のエアコン設置を目指し、国の特例交付金を申請した。このうち、幼稚園が大垣市、多治見市、中津川市、恵那市、土岐市、可児市の24園、小学校が大垣市、高山市、飛騨市、郡上市など179校、中学校が高山市、中津川市など81校、義務教育学校が白川村の1校で計285校となっている。
また、県立高校全63校のうち、普通教室のエアコン設置率は、67%の42校が完了している。岐阜県は、生徒の健康を守るなどの観点から早急に進めるべき重要課題とし、エアコン設置計画を立て、未整備の21校の普通教室にエアコンを設置する。全ての設計を昨年12月までに完了し、1月末までに工事の公告も全て完了している。

 

三重県 小中学校設置率は

 

 三重県下の小中学校など空調設備状況を見ると、全国平均の約50%と同水準であることが分かった。厚生労働省が公表した公立学校施設の空調(冷房)設備設置状況調査(2018年9月1日現在)によると、三重県内の29市町および1組合の小中学校全体では、普通教室が6329室に対し設置室数は3557室で、設置率56.2%、特別教室が6241室に対し設置室数は2762室で、設置率44.3%。合計が12570室に対し設置室数は6319室で、設置率50.3%。全国平均の普通教室58%、特別教室42%、合計49.9%に対してはわずかに上回った。前年度の17年4月1日時点では、全体で34.3%となり、1年半の間に16ポイント上昇した。
市町などで、合計で100%に達しているのは、伊勢市、木曽岬町、菰野町、朝日町、川越町、玉城町、度会町の1市6町。普通教室のみを見ると、伊勢市、鈴鹿市、鳥羽市、いなべ市など4市11町となった。全体で50%以上は7市11町となった。一方、全体で10%未満は、熊野市、御浜町、多気町松阪市学校組合の3団体。
発注方式を見ると、各校または複数校をまとめて通常の工事として入札する他、一括方式を採用するケースもあり、鈴鹿市が16年度に10年間の賃貸期間を設けた公募型プロポーザル方式で、18年度に四日市市がPFI方式、松阪市がDBO方式、桑名市が設計・施工一括発注方式で事業者を決定した。
県立学校の普通教室については、18年9月時点調査で、高等学校が1301室に対し、1111室を設置し、85.4%の設置率となり、全国平均の77.2%を上回った。特別支援学校は100%を達成した。高等学校では、未整備教室については、今後、学校側と協議を進めるものとしている。
幼稚園では、保育室および保育室以外の諸室の全体で768室あり、407室に設置し、53%の設置率となり全国平均の68%を下回った。

(2019/1/31)

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