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変われるか? 2024残業規制@

「残業したり、朝早く出勤したりすると上司が喜ぶ」。建設業界に魅力を感じなくなった理由として、ゼネコンの社員が労働組合に寄せた声だ。深刻な人手不足や受発注者間の力関係もあって、長時間労働の慣習は業界に根強く残る。しかし、時間外労働の罰則付き上限規制が建設業にも適用される2024年4月まで、残された時間はあとわずか。建設業は「当たり前」の労働環境を実現し、将来の担い手に産業の魅力をアピールするスタートラインに立てるのか。
 18年に改正された労働基準法では、時間外労働について、原則として「年360時間」、労使で合意していても「年720時間」以内などとする上限規制が設けられた。建設業は適用を5年間猶予され、これまで働き方改革に向けた努力を重ねてきた。
 最大のターゲットは、現場の施工管理を担う技術職だ。労働安全衛生総合研究所の調査によると、建設業で「週60時間以上」働く人が最も多い職種は技術者で、17・5%を占めた。業界のホワイトカラー層の労組が加盟する日本建設産業職員労働組合協議会の調査でも、内勤者と比べて外勤者の残業時間が大幅に長く、外勤者の約1割は規制適用後に即、違法となる「月100時間以上」に該当するという。現場での監督業務に加え、発注者や下請けとのやり取り、書類作成といった事務作業の負担が長時間労働を招いている。
 休日の取得状況でも同様の傾向が見られる。全国建設業協会の調べでは、「おおむね4週8休」を達成できたのは事務所が54・6%だったのに対し、現場は22・1%にとどまった。前年比では改善が見られるものの、週休2日が浸透したとは言えない状況だ。
 全建のアンケートには「慢性的な人手不足」という構造的な課題を指摘する声や、「受注競争の中で短工期での契約になる」と競争環境に原因を求める意見もあった。現場の働き方改革をさらに一歩進めるには、社内の労働環境の整備に加え、発注者をはじめ社外の関係者への働き掛けが欠かせない。
 建設業界も一丸となって労働環境を変えようとしている。1月5日に開かれた建設業関係11団体の賀詞交換会。日本建設業連合会の宮本洋一会長は、現場の4週8閉所の重要性を強調した。上限規制への対応を「担い手確保の最低条件」と述べ、働き方改革の必要性を改めて訴えた。
 学校に完全週休2日制が導入されてから既に20年がたつ。現在の若手は、週に2日休める環境を当然のこととして育ってきた。時間外労働を適法な範囲に収めるのはもちろん、週休2日を含めて実現できなくては、担い手の確保・定着はいよいよおぼつかなくなる。
 人手不足が長時間労働を招き、担い手を遠ざける―。そんな負のサイクルを、断ち切るときだ。本連載では、24年を見据え、変わろうとする建設業界を取材する。

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