変われるか? 2024残業規制B|建設ニュース 入札情報、落札情報、建設会社の情報は建通新聞社

建設ニュース、入札情報の建通新聞
建通新聞

ログイン

変われるか? 2024残業規制B

かつては、若手を雇っても半年で全員が辞めてしまうことがあった。しかし、昨年度は10人以上を採用して離職者を一人も出さなかった。変化のきっかけは、若手の声に耳を傾けたこと。給与や作業環境ではなく、「自分の時間が持てない」ことが離職の背景にあると知り、成友興業(東京都あきる野市)は長時間労働の抑制へと大きくかじを切った。「きれいごとばかりじゃない」と話す細沼順人社長に、なぜ取り組むのかを聞いた。
 長時間労働の抑制に動いた契機は、離職者へのヒアリングで、給与や作業環境に対する不満よりも、「自分の時間が持てない」ことの影響が大きいと分かったためだ。そこで、スマートフォンによる打刻やカードタッチ、パソコンのオン・オフ確認を組み合わせて勤怠管理を強化した。管理職も含め、サービス残業をなくすよう徹底した。「管理職が残業する姿を見せていては、自分も将来そうなる、と若手が考えることは当然。そんな会社に勤めていたいとは思ってくれない」と細沼氏は説く。
 特に現場代理人は負担が大きく、長時間労働になりがちだった。そこで同社では、工事管理部を新設し、図面・マニフェストなどの書類作成や工事写真の整理といったバックオフィス業務を支援することにした。担うのは現場経験のない人たちが中心だが、教育すれば十分な戦力となる。結果、現場は施工管理に集中できるようになった。
 働き方改革とは異なる着眼点として、細沼氏は「バックオフィス業務を分担することが、仕事の属人化を避けることにもつながる」と指摘する。成果物の品質を保証できる体制を整えれば、会社の競争力も高まるというのが持論だ。
 現場の4週8閉所にも積極的に取り組むが、課題がなかったわけではない。同社の新富明男建設事業部長は「正直に言えば、最初は日給月給の下請けからの反発もあった」と明かす。そこで、月給制を取り入れられるよう、仕事を切らさないようにし、経費も段階的に引き上げた。「協力会の会長、副会長の理解を得ながら粘り強く取り組んだ」と新富氏は話す。
 社内の受け止めも徐々に変わっていった。細沼氏は「はじめは若い人と膝詰めで話しても『どうせ変わらない』と思っているようだった」と振り返る。実際に働き方を見直す中で、「声を上げれば本当に変えてくれる」という信頼を得ていったというのが実感だ。若い世代の声を取り入れるのは、来年、再来年に入る社員に定着してもらいたいからでもある。「10年後の成友興業のため」という言葉が、働き方を見直す原動力となっている。
 離職率が下がった一方で、コストが増えたのも事実だ。しかし、細沼氏は「未来に対する投資だ」と強調する。「一歩も二歩も踏み出さなくては、自社の未来を否定することになる」

■成友興業
 1975年設立。従業員240人(2022年9月)。勤怠管理のDXやICT施工を積極的に取り入れ、22年には東京労働局の時間外労働削減「ベストプラクティス企業」にも選ばれた。

いいね 0 ツイート

執筆者プロフィール



BlueRevs
スマホ記事中バナーC
あなたの知識やノウハウなどを建通新聞社ホームページで伝えてみませんか?
電子版のお申し込みはこちら 新聞(宅配)のお申し込みはこちら
カタログカタログ