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変われるか? 2024残業規制C

日本電設工業協会が昨年4〜5月に行った残業時間の罰則付き上限規制に関するアンケート。結果は、6割以上の会員が「対策または周知できていない」というものだった。そもそも、電気設備工事は建築事業の中でも工程上のしわ寄せを受けやすい。長時間労働の解消には個社の努力に加え、発注者や元請けの理解が欠かせない。
 昨年のアンケートは、電設業界が直面する課題を浮き彫りにした。大手企業では残業抑制の制度整備は進むものの技術系職員の残業時間が長くなりやすい。中小企業は社内制度の整備や規制の周知自体が進んでいない。
 技術者の長時間労働を招く主因は、前工程からのしわ寄せだ。作業員の再手配や、工程見直しによる他の工事業者との再調整が大きな負担となっている実態も分かった。
 電設協の山口博会長は、残業規制の適用が5年間猶予されてきたことを踏まえ、「5年たって『できない』では社会的に許されない」と力を込める。電設協として、中小の会員を対象とした規制の周知に改めて注力する考えだ。優れた取り組み事例を掘り下げ、横展開することも検討する。
 「現場一つ一つの見直し」も呼び掛けている。極端に忙しい現場や、仕事の集中している技術者を洗い出した上で、ベテランを機動的に配置したり、書類業務をバックオフィスに分散することが有効だという。いずれにせよ、勤務実態をつぶさに把握することが不可欠になる。
 ただ、後工程へのしわ寄せは構造的な課題であり、個社の努力だけで解決することは難しい面もある。山口氏は「共通の課題を抱えた設備業界と連携しながら、改めて理解を求めていく」考えだ。業界横断的な取り組みは異例だが、長時間労働削減の機運を高めるには、共に声を上げることが必要という判断だ。発注者や元請けに理解を促し、個社が工期を巡って交渉しやすい土壌をつくる。
 危ぐするのは、上限規制の適用後に施工できる工事量に制約が出るような事態だ。施工時期の平準化に一定程度前向きな公共工事と異なり、民間工事は複数案件の竣工期を相互に調整することは極めて難しい。かといって、ピークの工事量に合わせて採用を拡大すると閑散期に会社の重荷になってしまう。限られた人手を最大限に生かすには、工期を含めて「きちんと交渉できる商習慣を作っていくことが大事だ」と山口氏は力を込める。
 自身が会長を務める関電工では、工程を見直し、生産性を抜本的に高める取り組みも始めた。2019年には工事に必要な部材を集約して製造する拠点を東京都内に開設。最適なタイミングで現場に届けられるようにし、現場での材料の加工や待機のための時間を大きく削減できたという。今後はBIMとの連動など、さらなる高度化も視野に入れる。
 目指すのは、ルーチン的な作業を減らし、貴重な人手をより重要な工程に振り分けること。「仕事のやり方を変えなくては残業は減らせないし、若い人もついてこない」

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