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変われるか? 2024残業規制F

働き過ぎは「命」にも関わる―。主な産業のうち最も月の出勤日数が多く、2番目に週労働時間が長いのが建設業だ。建設業で働き、過労による脳・心臓疾患や精神障害で2021年度に労災補償が決まった人は50人を超える。長時間労働がもたらす心身のダメージは、墜落・転落をはじめとした労働災害に匹敵する深刻な問題だ。
 建設業で過労が発生しやすい原因は何か。国の調査の一環として、労働安全衛生総合研究所(安衛研)が昨年に実施したヒアリングで浮き彫りになったのは、顧客の納期を守ろうとする中で大きな責任を背負い、追い詰められる技術者の姿だった。天候や資機材の納期遅れなど、自社でコントロールできない要因による工程の遅れを取り戻そうとして残業時間が増える例が多かったという。
 1カ月の残業100時間、2〜6カ月平均の残業80時間は「過労死ライン」と呼ばれる。これを超えるような長時間の残業をすると、睡眠時間が圧迫され、脳・心臓の疾患にかかる恐れが顕著に強まる。安衛研で調査を主導した高橋正也社会労働衛生研究グループ長は、「労働条件など多くの要素が関わるが、まず注目しなければいけないのは労働時間だ」と指摘する。
 極度の長時間労働に対人関係、心理的負荷などの要因が加わると、メンタルヘルスの悪化リスクも大きくなる。建設業では、労働災害を防止するためKY活動や墜落制止用器具の導入など、多大な努力を積み重ねてきた。残業時間の罰則付き上限規制の適用は、同じく労働者の心身に大きく影響する過労にも目を向ける好機だと高橋氏は強調する。「体の事故の撲滅に取り組むように、心の課題にも対処しなくては」
 年間を通じて繁閑の差を抑え、定時内で消化可能な工程を組めている建設業の事例もある。安衛研の小林秀行研究員は「技術力が高く、発注者に対して主導的に交渉できるような事業者だと、無理のない工期を設定できているようだ」と分析する。建設業と同様に長時間労働が課題となっているIT産業でも、契約前に過重労働にならないか仕様を確認する“受注レビュー”に取り組む企業があるという。
 高橋氏は、より良い働き方を目指し、経営者と労働者だけでなく、社会全体を含めて議論してきた欧米の歴史を挙げ、意識の転換を説く。「『誰かがやってくれる』ではなく、業界が声を上げ、政府と社会を巻き込まなくては。改めて日本が働きがいのある幸せな国となるよう、働き方を見直す時期が来ている」

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