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変われるか? 2024残業規制G

「建設業界が最優先で取り組むべきは、働き方改革を進め、長時間労働を是正することだ」―。建設業への時間外労働の罰則付き上限規制適用まであと1年。国土交通省では業界の現状や解決すべき課題をどう考えているのか。不動産・建設経済局建設業適正取引推進指導室長の山王一郎氏に聞いた。
 ―業界の現状をどう見ているか。
 「上限規制の適用が注目されるが、4週8休の前提となる法定労働時間を『週40時間』とする規定は、そもそも1987年の労働基準法改正に盛り込まれたものだ。その時も建設業は適用除外を受け、今でも週休2日が定着していない」
 「この30年余り、建設業者の方に土曜日も働いてもらったおかげで、日本のインフラは充実した。一方で、結果として他産業に見劣りする休日となり、若者に選んでもらえない現状が生まれた」
 ―長時間労働を是正する上でのポイントは。
 「現場作業で汗を流す技能者と、現場を管理する立場の技術者では課題が異なる。例えば、土工や鉄筋など騒音・振動の出る工種では、騒音・振動規制法で作業時間や作業日が制限されるため、必然的に超過勤務が発生しにくい。一方で、内装や設備は制限がなく、工程の後半に稼働する工種が多い。工事の遅れのしわ寄せを受けるため、長時間労働になりやすい」
 「技術者は、膨大な事務作業の解消が必要になる。書類の簡素化やIT化の他に、現場事務をバックアップする新たな職域の活用も考えられる」
 ―長時間労働の是正へ、民間工事での突貫作業がネックになっている。
 「あるマンション建設工事では、受注時に想定不可能な地中障害が着工後に判明し、現場が数カ月止まった。元請けは施主と協議したが工期変更が認められず、突貫工事となり下請け従業員の労働時間が規制の上限を超えた。この場合、施主と元請けは建設業法が定める『著しく短い工期の禁止』に違反する恐れがある」
 「建設業法では、工期に影響を及ぼす可能性がある事象について、施主が元請けに、事前に情報提供するよう義務付けている。にもかかわらず、民間工事では多くの場合、施主による事前調査が不十分で、不確定要素への対応を元請けに負わせることが少なくない」
 ―どう対応するのか。
 「施主と元請けには、建設業法や中央建設業審議会が作成・勧告した『工期に関する基準』など、現行の法律やルールをしっかり守るよう促していく。工期に関する基準では、発注者の責務として、上限規制適用に向けた環境整備に協力することも定めている。『短い工期でもできるとゼネコンが言ったから、あとのことは知らない』は通らない。工期の延長や工事費用の増加が発生する場合、施主と元請け、元請けと下請けは、双方対等の立場で協議を行う必要がある。当初の契約で協議方法などを明確に定めておくことが大切だ。国交省の有識者検討会では、元請けによる下請けの労働時間管理も議論している」
 ―厚生労働省をはじめ、他省庁との連携も必要ではないか。
 「来年度早々に、時間外労働の上限規制関係の周知と、適正な工期の観点に特化したモニタリング調査を、地方整備局と労働基準監督署と連携して行う。持続可能な産業としていくために、建設業では当たり前と思ってきたこれまでの働き方や商習慣に対する意識改革を急がなければならない」
(本連載は編集局編集部の宇野木翔、川崎崇史、比良博行が担当しました)

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