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総価請負からの転換A 設計の確定度を上げる

先を見通せない時代にあって、「総価請負での契約が限界を迎えている」と指摘する志手一哉芝浦工業大学教授。別の選択肢として挙げる『コストプラスフィー』とはどのような契約方式なのか。

 ―コストプラスフィーで、コストに対する報酬(フィー)の率はどのように設定されるのか。
 「米国では11〜12%くらいと、ある程度の相場感がある。プロジェクトの管理に対する報酬なので難易度によっても変わるが、自然と市場の中で定まっている」
 ―具体の事例を聞きたい。
 「愛知県の国際展示場整備では、設計と施工をゼネコンが一括して担うデザインビルドで事業を行った。公共工事として費用の透明性を確保するため、コストプラスフィーを採用した。原価を全て開示するオープンブックも取り入れた」
 「ゼネコンが受け取るフィーをコストに対して一定の率に固定すると、コストを下げるインセンティブがなくなってしまう。このため、基本設計を終えた段階で目標とするターゲットコストを定めた。そこから設計VEでコストダウンできた分を発注者と案分し、報酬に加算できるようにした。うまく契約条件を組み合わせなくては、せっかくコストプラスフィーを導入しても機能しない」
 ―発注者にとってはどのような意味があるのか。
 「総価請負と異なり、コストプラスフィーでは契約後も最終的な価格を確定できない。このため、工事契約前に設計の確定度をきちんと上げておく必要がある。また、はじめに目標コストを定め、実際のコストが上振れした場合にゼネコンに課すペナルティーもあらかじめ決めておかなくてはならない」
 「そういう意味では、総価請負と比べると発注者のマネジメント力が求められる。内部に人材がいなければ、契約のルールなどを発注者の側に立って考えるPMも必要になる」
 ―契約慣行はどのように変わるのか。
 「そもそも、建設工事には不確実な要素が多く、そうした事態への対処をあらかじめ記すことのできない不完備契約になりやすい。天災のように予測し難いことは仕方がないが、例えば設計で仕様をしっかりと詰めていないことによる不確定性もあるはずだ。そこをゼネコンが現場で対応して、後から精算しようとして発注者に断られることも少なくないのではないか」
 「まずは設計の確定度を上げておくこと。その上で、設計変更が避けられないのであれば、どのような手続きを取るかをきちんと定めておくことが重要だ。VEによるコストダウンについても、受発注者でどのように案分するかきちんと契約に書いておく必要がある」

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