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建設経済の最新分析@インフラメンテナンス 大手と地域企業の役割

インフラの効率的で戦略的な維持管理の必要性が高まっている昨今、キャッシュフローを生み出しにくいものについては「包括的民間委託」方式の推進が図られている。包括的民間委託とは、PFIとは違い官側の資金を活用するものだが、維持管理などの業務を包括して民間企業に発注、それも性能発注とすることにより効率的な業務の実施、民間ノウハウの活用によるサービス向上などの効果が期待できるものである。PFIが活用しにくいインフラについても民間ノウハウが活用できる。
 ただ、実績は福島県、新潟県三条市、東京都府中市など把握できる限り少ない。PPP/PFI推進アクションプラン(2022年度改定版)や第5次社会資本整備重点計画にも盛り込まれ活用の拡大が望まれており、国土交通省が運営する社会資本メンテナンス戦略小委員会(以下、委員会)ではモデル自治体を募集し、導入・検討を支援している。
 包括的民間委託の受託者は地域の建設企業が主体となっており、これは災害などの緊急時に即応体制を確保しやすいことが背景にある。しかし、地域企業には中小企業が多く創意工夫が図りづらいという課題がある。府中市や三条市の例では、大手の建設企業や建設コンサルタントがJVの構成員として参加しており、大手企業の技術やノウハウを生かした提案が行われている。大手企業とJVを組む地域企業に話を聞くと、大手企業の技術やノウハウは非常に有効でマネジメント面での役割は大きいと感じている。官側も受託者側からの効率化提案を望んでおり、大手企業に期待される役割は大きいと言える。
 国交省の支援もあって今後包括的民間委託事業は主流になっていくと考えられるが、現在の事業規模では大手企業にうまみは少ない。そこで鍵になるのが、委員会が主導する「地域インフラ群再生戦略マネジメント」である。これは既存の行政区分に関わらずに地域を設定し、複数の管理主体・多分野のインフラを群としてまとめて捉え、マネジメントしていくものである。事業規模に応じて、地域企業が主体となるものや、地域企業と大手企業とのJVで技術力を発揮するものなどさまざまな仕組みをとることができる=イメージ参照。
 この仕組みにより大手企業と地域企業の事業のすみ分けをしつつ、大手企業が技術面などで産業を底上げし、地方公共団体や地域企業を引っ張っていく構図が成り立つであろう。
 (建設経済研究所 元研究員 迫 綾子)

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