「建設業の経営と安全の大切さ」=第3回=「安全確保は経営者の責任で」
第3回 安全確保は経営者の責任で
会社の社長は、安全管理の最高責任者であることを認識し、絶えず注意を喚起する必要があります。
社長が自社の安全に対する方針を明確に打ち出して全社員に周知徹底を図り、P(計画)D(実施)C(チェック)A(処置)の管理サイクルを回し続けなければ、安全管理の向上は望めません。
専門工事業者の社長さんから、「私は現場の責任者ではないので労働災害の責任はありません」という言葉を聞くことがありますが、これは認識外れといえます。
1 企業の社会的存立を目指せ
企業が社会的に存立するためには
@ 適正な企業利益を上げること
A 企業で働く従業員に幸福をもたらすこと
B 災害・公害・危険などを防ぐことはもちろん、地域社会に対する積極的な貢献に努め、社会的責任を果すこと
―の三つの要件を同時に満たすことが必要であるといわれています。
すなわち、これらお互いに背反するように見える三つの用件を推進させながら調和させることが経営なのです。
特に、建設業を経営する事業者にとっては、建設現場における労働災害を防止することが企業を社会的に存立させる基本的な要件であるといえましょう。
なぜならば、労働災害を起こすと
◆ 労働力の損失・人材の損失・生産の低下・利益の低下などを招く
◆ 社会的に信頼を失う
◆ 入札参加に制限を受けるなど、経営基盤を危うくする
◆ 同業者からは、パートナーとしての地位を失う
◆ 企業の発展を大幅に阻害される
など、大きな損害を被るからです。
産業安全とは、生産技術の内容を検討し、それに付随するあらゆる危険性を取り除いて安全を確保し、労働者を災害から守り、企業存続の基盤とすることです。 企業経営は、「労働者の生命・身体の犠牲の上に成り立つものではない」ことを深く銘記すべきです。
2 労働災害と事業責任の追及
建設現場において、労働災害が発生した場合は、災害発生原因や日常の安全衛生管理状況が調査・分析され、その結果次第では事業者に対して、さまざまな責任が追求されることになります。
(1)災害発生により追求される責任の内容
@ 刑事責任:労働安全衛生法(以下安衛法という)の違反や業務上過失致死傷罪などの刑法違反による責任を追及されます。
A 行政処分:災害発生に伴う作業停止命令、機械・設備の使用停止命令を受けます。また、国・地方公共団体などの発注機関から工事指名停止の処置を受けます。
B 民事責任:労働者の遺族、家族からの高額の民事損害賠償を請求されます。
C 社会的責任:地域社会から厳しい批判を浴びたり、社会的責任を追及され、企業の社会的信用を大きく失墜させることになります。
(2)両罰規定
建設業における事業者とは、事業を行う者で、個人経営の場合は事業者自身、法人の場合は企業そのものを指します。
会社組織の場合、その会社の社長が全て実行できるわけではありませんから、その場合に、現場の管理監督者に災害防止の措置を行わせることになりますが、最終的には会社を代表する社長が責任を負うことになります。
従って、作業員を指揮監督している現場の職長が危険防止措置を怠った時には、職長を罰するほか、企業の管理責任者、すなわち会社の代表者である社長を同時に罰することにしています。
これを両罰規定といいます。(安衛法第122条)
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全建経営指導センター代表 天本武