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新たな社会資本整備の在り方 ICTとの連携を考えよう

2012/12/1 

東日本大震災を契機に、道路や港湾といった社会資本整備の重要性が再認識された。だが厳しい財政状況の中、これまでと同じような整備を進めていたのでは社会の理解は得られない。防災面プラスアルファの機能を発揮するような整備手法の検討が必要になる。この実現には、情報通信技術(ICT)が大きな役割を果たすはずだ。
 パソコンや携帯電話の普及などに合わせ、ICT基盤の整備は急速に進んだ。防災・減災面でも、MCA(マルチチャネルアクセス)無線局やVSAT(小規模衛星通信設備)などが整備されてきた。東日本大震災では、ITS(高度道路交通システム)業界が、カーナビ利用者などから取得した車の走行実績を地図上に示して被災地の道路の通行情報を提供するなど、新たな役割も果たした。
 このような動きを踏まえ、ICTを震災時により積極的に活用することを目指した取り組みが活発化している。例えばYRPユビキタス・ネットワーキング研究所(所長・坂村健東京大学大学院教授)は、東京大学ユビキタス情報社会基盤研究センターなどと、巨大地震時にもさまざまな情報を提供できる「街角情報ステーション」を開発。東京都建設局の協力を得て、11月21日〜30日にJR新宿駅西口のペデストリアンデッキで運用実験を行った。
 同ステーションは、地上の通信基盤が寸断しても小型パラボラアンテナで衛星通信を利用した無線LANの接続環境を提供。携帯端末の充電やICカードを利用した安否確認、ディスプレイと音声による情報提供機能も持つ。電力供給が途絶えても太陽光パネルと蓄電池により稼働可能だ。
 坂村所長は、東日本大震災で通信環境が寸断・混雑し、大きな混乱が生じたことに触れ、被災時にも情報提供環境を確保できる同ステーションの有効性を指摘。都をはじめとする官民の理解と協力を得て積極的に設置を目指す考えを示した。
 これらの環境整備とともに重要になるのが提供する情報の内容だ。そこで、社会資本とICTの連携が必要になる。道路や河川、港湾施設にセンサーや通信機器などを設置すれば、各施設の被害状況などを瞬時に把握でき、被災者の避難誘導や救助、応急復旧の的確・円滑な実施につながる。施設の所管部署や自治体を越えてこれらの情報を収集・管理する仕組みを整えれば、東海・東南海・南海の三連動地震など、広域大規模災害の発生時であっても大きな効果を発揮するだろう。
 さらに、社会資本とICTとの連携は、施設の効果的・効率的な点検・管理の実現など、さまざまな機能を付加する可能性も秘めている。新たな社会資本整備の在り方が模索されている今だからこそ、国土交通省や総務省といった組織の枠を超えて、社会資本とICT基盤との連携の在り方を真剣に議論してほしいものだ。

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