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平成の洛中洛外図

2012/12/13 

連載「再発見」第11回「熈代照覧」.jpg

「洛中洛外図」は、室町時代と江戸時代にまちの様子を俯瞰して屏風などに描いたものだ。お公家さんや武士、市井の人々の当時の暮らしぶりが、建物や庭、祭り、町商いなどの描写から手に取るように伝わってくる。これまで数多くの絵地図を描いてきた私にとって、目標となる一つのモデルである。道路や建物だけでなく、まちに暮らし、働く人々の息遣いが聞こえてきそうな、いつか、そうした絵地図を描きたいと思っている。
 今の普段の暮らしぶりを描くとき、困ったことが一つある。「洛中洛外図」では、障子を開けた開放的な家屋で歌を詠む公家や、店舗を持たず地べたで品物を並べる物売りも多く描かれているが、現代では閉ざされた建物の中で仕事をする人が多く、外からはその姿が見えにくい。そういえば、ひと昔前は、間口を大きく空けたお店の中で畳屋や表具屋の職人さんが働く姿を目にすることができたものだが、伝統工芸の職人さんばかりか、建築系の職人さんの姿もいつしか町から消えていた。
 このエッセーの初回に「リベットが好き」と書いた。赤く焼かれたリベット鋲を、構造物の上にいる人に投げていた時代を知る友人たちは、ジェスチャーも加え、得意顔になってその様子を熱く語る。“リベット萌え”の私にはうれしくもあり、口惜しい瞬間でもある。
 現代の洛中洛外図を描くことは、まだ思い付きのレベルだが、人の姿が見えにくい障害をクリアしていつか実現させたい。実はそのための“秘策”も考えている。人が働く姿は時代を超えて美しく、いつの世も「人」と「まち」が、時代の記録となる。

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