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仕組みづくりのうねりを起こそう

2013/8/19 

2011年8月に愛知県東栄町の国道151号太和金(たわがね)トンネル内で崩落事故が発生した。覆工コンクリートの充填(じゅうてん)が不十分で、コンクリートと地山との間に背面空洞ができ、地山圧力でコンクリートが変形して土砂が崩落した。トンネル内にあふれ出た土量は30d、崩落箇所の延長は400bに及んだ。
 当時、事前に点検はしていたが、構造物の裏側のため目視では見つけられなったことも伝えられた。愛知県が再調査した結果、58カ所のうち7カ所で同様の背面空洞が確認された。また全国にある4800カ所のトンネルの約4割で補修が必要とした調査結果もある。トンネルだけではない。このような重大事故が発生するリスクを抱えたインフラは全国の至る所に潜んでいる。
 富山市では昨年から特別チームを編成しインフラの点検に力を入れているが、高度成長期に造られたインフラの設計資料がほとんど残っていないことが判明した。概略図はあったものの、詳細な設計図書がなかったため、ゲルバー橋であることに気付かず、最悪の場合、落橋に至るような致命的な亀裂を見落としていたケースもあったという。
 全国の道路橋梁における長寿命化修繕計画の策定状況は89%(2013年4月時点)。しかし、修繕計画はかろうじて策定できたとしても、実際に計画を履行していくことのできる技術職員がいない自治体も少なくない。インフラを適切に維持・管理し、健全な状態に保つには、技術と財源の不足を補う仕組みの構築が不可欠だ。
 今後、維持管理費が増えるとみた、ある県の地域建設企業は、自治体からの受注増を期待して補修事業部を立ち上げたものの、利益を確保できるようになるまでには程遠いと困惑する。補修工事は新設工事と比べ作業時間が掛かり、それに伴う人件費や機械リース料などのコストがかさむ。にもかかわらず、道路管理者側には維持補修のための積算基準が整備されてはいない。
 インフラの崩壊を食い止めるには、地域事情に精通した地域建設企業の活用が欠かせない。もちろん、防災や減災に資するインフラの長寿命化を目指すには、それぞれの専門家の知見や経験も必要だし、経験や情報を共有して課題解決のために協働する産官学一体の取り組みが不可欠だ。既に、岐阜県では「社会資本メンテナンスエキスパート(ME)」、長崎県では「道守」といった協働の取り組みが始まっている。
 脆弱な日本の国土は、今までに経験したことのない局地的な豪雨災害にも見舞われるようになっている。維持管理を一度誤れば、人の命が脅かされる事態を招く。今こそ、将来にわたってインフラを守る産官学協働のうねりを起こさねばならない。
 国土の強靭化をうたう政府・与党。厳しい財政状況の中でどのようにして劣化が進む膨大なインフラを保全するのか―。秋の臨時国会でその本気度があらためて試されることになる。

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