意欲あるベテランの活躍は、後進の育成にも大きな意味を持つ。
高年齢者雇用安定法では、希望者が70歳まで働ける制度の整備が企業の努力義務とされている。建設業の取り組み状況(2021年6月時点)を見ると、こうした措置を行っている企業は35・1%で、全産業中で最も割合が大きい。人手不足が深刻化する中で、高年齢者の活用が「やむを得ない選択」となっている側面も否定できないが、資格・経験を重視する建設業界で活躍の余地が大きいのも事実。高年齢者にいきいきと働いてもらい、その技術・技能を次代に引き継ぐための職場環境づくりは急務だ。
企業には、65歳までは希望者全員が働けるように定年の引き上げか廃止、継続雇用制度(再雇用、勤務延長)の実施が義務付けられている。これに加えて21年4月からは70歳まで就業の機会を確保するため、継続的な業務委託も含めた措置の導入が努力義務とされた。
では、70歳までの就業確保措置を実際に取り入れている会社がどれほどあるのか。厚生労働省が従業員21人以上の企業を調べたところ、建設業でこうした措置を導入しているのは35・1%。全産業平均の25・6%よりも大幅に高く、産業別でもトップだった。「深刻な人手不足も背景にあるのでは」と厚労省の担当者は見る。
小さな企業ほど取り組みが進んでいる傾向も見られた。建設業のうち「従業員301人以上」では実施率は16・9%だったのに対し、「31人〜300人」では33・1%、「21人〜30人」では39・2%だった。
とはいえ、定年の廃止、引き上げを選ぶ企業は限られる。導入が最も進んでいるのは継続雇用制度で、建設業では25・9%が取り入れていた。
建設業で働く人の高齢化は他産業と比べても進んでいる。55歳以上が就業者全体に占める割合は、全産業平均の31・1%に対し、建設業は36%。若手の採用・育成に業界を挙げて取り組んでいるが、若年者の数そのものが減少しつつある中で、高年齢者にも頼らざるを得ないのが実情のようだ。
もちろん、資格や実務経験がものを言う建設業界では、技術者・技能者を問わずベテランが活躍する機会は豊富にある。体力的な制約があっても、長年の経験を生かして後進の指導や労働安全衛生の推進を担う例は多い。
就業確保措置の実施に当たっては、個々の従業員の意欲、事情に配慮した制度を提示する必要がある。フルタイムでの就業だけでなく、労働時間や業務内容を絞り込んだ業務委託など、選択肢は幅広い。意欲ある人に適切な就業形態を提供できれば、会社にとって大きな戦力となるはずだ。