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急ぐべき経営者の決断 地域建設業の週休2日

2022/10/17 

「働き方改革」の柱である週休2日の導入が、地域建設業の現場で思うように進んでいない。全国建設業協会(全建、奥村太加典会長)が7月1日時点の状況について会員企業に行ったアンケート調査(回答4130社、回答率21・9%)によると、週休日の実施状況について「おおむね4週8休」と回答した企業の割合は、前年度より4・9ポイント増加したものの22・1%にとどまった。
 改正労働基準法によって2019年4月に施行した時間外労働の上限規制が、5年の猶予期間を経て、1年半後の24年4月から建設業にも適用される。週休2日は、この法規制に対応する鍵となる。さらに建設業では、最大の課題である「担い手確保」を進める上でも、重要な労働条件として導入を進める必要がある。
 週休2日制は、法定労働時間の週48時間から週40時間への短縮に合わせ、1980年代後半から日本の社会で一般化した。20年前の02年から公立学校も完全週休2日制になった。いま社会に出る若者は、週休2日が常識となった社会環境の中で育ってきた。彼らにとっては、土曜日に休めない仕事は選択の対象にはなりにくい。
 その結果は、以前から指摘される、建設技能者の年齢階層別の就労人口のいびつな偏りにも表れている。総務省の21年平均の労働力調査に基づく国土交通省の推計によると、建設技能者(309万人)の25・7%(79万5000人)を60歳以上が占めるのに対して、30歳未満は12・0%(37万2000人)にとどまる。今後の離職が見込まれる高齢者の人数に対して、若者はあまりにも少ない。
 若者の入職の減少による建設業の担い手不足は、建設産業と、建設業が手掛けるインフラに支えられる社会の課題であるとともに、個々の企業においては経営の存続にかかわる。そして、対策として重要な週休2日は、経営者の決断と工夫がなければ実現しない。経営者の決断によって週休2日を具体化し、入職者を拡大している例もある。
 公共土木工事を事業の中心とする首都圏のある中小建設業者は、社員の異業種への転職に悩み、22年度から完全週休2日制の導入を決断した。これに向けて、約30人の社員の3分の2を占めた技能者の給与形態を日給月給制から月給制に変え、所得を安定させた。
 新卒採用で、週休2日の効果はすぐに表れた。21年春の新卒採用は高卒者2人だけだったが、22年春は、大卒者を含め8人に増えた。
 完全週休2日制の実現のためには業務の合理化が必要だ。施工管理では、パソコンとモバイルプリンターの活用や、通信環境の整備などIT化によって合理化を進めやすい条件が整ってきているという。週休2日を実現する工夫が、逆に合理化につながる面もある。
 17年3月、時間外労働の上限規制を含む「働き方改革実行計画」を政府が策定し、これに呼応する動きが建設産業団体でも広がった。
 それから5年が経過した。建設業への週休2日の導入には、事業の平準化や、工期への発注者の理解など依然として課題が多い。しかし、建設業の未来に向けて、粘り強く、かつ迅速に取り組みを進める必要がある。残された時間は少ない。経営者は決断を急ぐべきだ。

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