激甚化・頻発化する災害 国土強靱化、恒久的な措置に|建設ニュース 入札情報、落札情報、建設会社の情報は建通新聞社

建設ニュース、入札情報の建通新聞
建通新聞

ログイン

激甚化・頻発化する災害 国土強靱化、恒久的な措置に

2022/10/31 

政府は、2022年度第2次補正予算案を11月上旬にも閣議決定し、開会中の臨時国会に提出する。世界的な物価高騰は国民生活に深刻な影響を及ぼしており、補正予算でエネルギーや食料品などの価格上昇から暮らし≠守るためのさまざまな対策を講じる。同じ様に、災害から国民の暮らし≠ニ生命≠守る国土強靱(きょうじん)化も補正予算の柱の一つになる。
 気候変動の影響で激甚化した災害が、今年も日本列島に大きな爪痕を残した。9月18日に鹿児島県に上陸した台風14号は、宮崎県内に甚大な被害をもたらした。宮崎県内では総雨量985_を記録する地点があるなど、住宅の浸水被害の他、土砂崩れに伴う道路の寸断などの被害が生じた。
 続く9月23日・24日に日本列島を縦断した台風15号では、静岡県内のインフラや住宅が大きな被害を受けた。興津川の取水口に流木やがれきが詰まり、静岡市内では約7万4300戸が断水した。県内で広域にわたる被害が生じたのは数十年ぶりだという。
 一方、治水対策の効果は確実に出ている。台風の通り道に当たる九州では、大雨によってインフラや住宅に繰り返し被害が生じており、災害復旧と再度の災害を防止するための治水対策がそのたびに行われている。
 宮崎県内の各地で1000_を超える総雨量を記録した05年の台風14号被害と比べると、今回の台風14号で最も被害が大きかった五ヶ瀬川流域でも浸水家屋の数は3分の1に減少した。
 気候変動で降雨量が増加したことにより、全国的に河川の安全度は低下している。河道の拡幅、ダム・遊水池の整備、雨水幹線や地下貯留施設の整備など、ハード整備を伴う事前防災対策には5年や10年、事業によってはそれ以上の期間が掛かる。計画的に予算を措置し、対策を加速する必要があるのは明らかだろう。
 毎年度の補正予算に計上される「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」では、1年目の20年度に公共事業費1兆6500億円、21年度に1兆2539億円が計上されている(いずれも国費ベース)。
 政府が臨時国会の会期末までに成立させる22年度第2次補正予算案には、3年目の5か年加速化対策の事業費が盛り込まれる。対策の事業費は、総額15兆円程度とされており、2年目の21年度までに全体の5割に近い7・2兆円が措置された。3年目以降の事業費が縮小することも予想されている。
 今回の台風シーズンで被害の大きかった宮崎県や静岡県の被災状況を見るまでもなく、災害の激甚化に事前防災対策が追いついていないのは明らかだ。国土強靱化のための公共事業費を高い水準で維持できなければ、降雨量の増加や海面水位の上昇を考慮した「流域治水」を推進することもできない。
 すでに全国の地方自治体からは、5か年加速化対策終了後、国土強靱化の継続を求める声が上がっている。ただ、5か年加速化対策のような時限的な措置では、予測を上回る気候変動から、国民の暮らしと生命を守り続けることはできない。継続的、恒久的な国土強靱化の枠組みを考える必要がある。

いいね 0 ツイート
いいね 0 ツイート
人と建設と未来ラボ
電子版のお申し込みはこちら 新聞(宅配)のお申し込みはこちら
カタログカタログ