建滴 国家事業のインパクト|建設ニュース 入札情報、落札情報、建設会社の情報は建通新聞社

建設ニュース、入札情報の建通新聞
建通新聞

ログイン

建滴 国家事業のインパクト

2023/4/10 

今夏にも次期国土形成計画が策定される。骨子案には「リニア中央新幹線や、新東名・新名神高速道路により三大都市圏を結ぶ日本中央回廊≠形成し、地域活性化、国際競争力強化につなげる」とする目標が盛り込まれた。国家的な交通インフラプロジェクトが地域経済にもたらすインパクトは大きい。折しもきょう4月10日は、本州四国連絡橋の瀬戸大橋(児島・坂出ルート)が開通して35年の節目に当たる。交通インフラの在り方を考えたい。
 次期国土形成計画の骨子案に掲げられた目標は、いわゆるスーパーメガリージョン構想だ。リニアで移動時間を大幅に短縮し、三大都市圏を一つの巨大経済圏に成長させる。移動時間を短くする効果などで地方と都市部での二地域居住といった多様な暮らし方や働き方を選択できるようにして、地域経済の活性化につなげるねらいがある。
 交通インフラと地域経済は不可分な関係にある。古くは、江戸時代に徳川幕府が東海道を整備し、江戸〜大阪間の人や物の往来を円滑にして、各地に文化、産業の発展をもたらした。近代に入ると、自動車や機関車、飛行機が発明され、拠点間の移動に要する時間がさらに短くなった。道路は土からアスファルトに姿を変え、鉄軌道が敷かれ、空港が整備された。例えば、東海道・山陽新幹線は、東京から各地の主要都市までの所要時間を開業前と比べ半減させ、昭和の高度経済成長を支えた。
 必要な交通インフラは、時代の要請に応じて変わっていくものでもある。地域経済を下支えしていくためには、インフラ整備の手を緩めることはできない。
 とは言え、バブル経済が崩壊して以降、日本経済は低迷を続け、公共投資も減少の一途をたどった。政府全体の公共事業予算は1998年の14・9兆円をピークに減少。2014年ごろに下げ止まり、持ち直しつつあるものの、ピーク時の半分程度となった。リニアや新東名・新名神もすでに事業化済みのプロジェクトであり、現在、構想段階にある第2青函トンネルや紀淡連絡道路など国家的な規模と言える交通インフラプロジェクトはいまだ事業化の見通しがついていないのが現状だ。
 瀬戸大橋は、本州と四国地方を道路と鉄道で結び、瀬戸内地域周辺の主要都市間の所要時間を大幅に短縮した。神戸・鳴門ルート、尾道・今治ルートも合わせた経済効果額は、18年度までの累計が全国で約41兆円に上り、地域経済の活性化に大きな役割を果たした。3ルート総延長173`、架設長大橋梁全17橋に及ぶプロジェクトの実現は、建設業に携わる者にとって壮大で夢のある事業だったのだろう。
 地域経済は、日本の経済成長を促進するための重要な要素となる。政府が推進する地方創生では、地方での観光や地域資源を活用したインバウンドビジネスの創出などを目指し、地方と都市部の連携を促進しようともしている。東京一極による経済成長は限界を迎えつつある。今こそ、地域経済の活性化に向け、地方と都市間の所要時間を飛躍的に短縮する本四架橋のような国家的インフラプロジェクトを具体化していく時期ではないだろうか。

いいね 0 ツイート
いいね 0 ツイート
人と建設と未来ラボ2
電子版のお申し込みはこちら 新聞(宅配)のお申し込みはこちら
カタログカタログ