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建設業の人手不足倒産 職業として魅力向上急務

2023/7/24 

建設業の担い手不足に関わる問題がここにきて、企業倒産という、極めて厳しいかたちで顕在化してきた。「人手不足倒産」の増加である。建設業の存続は、個々の企業経営や雇用の問題にとどまらない。地域のインフラの維持や、激甚化する自然災害への対応など、社会機能に関わる課題でもある。就労環境や賃金など、職業としての魅力の向上が急務だ。
 帝国データバンクの調べによると、2023年上半期(1〜6月)の建設業の倒産は795件で、職別工事業を中心に前年同期と比べ36・4%増加した。このうち、従業員の離職や採用難などによって人手を確保できず、業績が悪化したことが要因となって倒産する人手不足倒産は45件だった。全体に占める割合は少ないが、15件だった前年同期の3倍に上り、急増が顕著だった。現場の技能者のほか、施工管理などに携わる有資格者の不足や退職によって事業の継続が困難になったケースが目立ったという。
 ポストコロナに向けて経済活動が活発化する中、人手不足倒産は他業種でも増加し、全体で110件に上った。この中で建設業は最も多い約4割を占めている。
 少子高齢化によって就労人口の減少が進む中、産業間・企業間の人材獲得競争が激しさを増している。そんな中、もともと建設業は、3K≠フイメージや長時間労働など、他産業と比較し不利な条件を抱えている。
 建設業のイメージアップや、週休2日の導入など就労環境の改善は長年の懸案となっているが、人手不足倒産という危機が顕在化しつつあるいま、対策を改めて急がなければならない。
 24年4月から建設業にも適用される時間外労働の上限規制への対応においても鍵となる週休2日の問題は大きい。特に新卒者の多くにとっては、週休2日でない職業はいまや、選択の検討対象にもならないという。今後、確実に週休2日を普及させていく必要がある。
 週休2日の基本となる現場の4週8閉所の導入では、民間建築工事での普及が課題だが、公共工事においても発注者によって温度差がある。国や都道府県に比べ、市区町村での対応が遅れている。インフラ維持や災害対応のパートナーの問題として、市区町村は取り組みに本腰を入れるべきだ。
 また、物価上昇の著しい現在、就労者にとって賃金は極めて大きな問題だ。大企業で賃上げが進む一方、中小企業では、価格転嫁などが進まず、賃上げと人材獲得の阻害要因にもなっている。
 公共工事では、設計労務単価が11年連続で引き上げられた。一方、実際の入札では、最低制限価格(低入札価格調査基準価格)を指標とした応札が多く行われ、予定価格の約9割でないと受注できない状況が依然として目立っている。
 発注者の積算に基づく予定価格が適正価格であるとすれば、現行制度においては、就労者の賃上げのためにも、最低制限価格の上限や一般管理費等の算入率のさらなる引き上げに踏み切るべきではないか。

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