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建滴 建設現場の事故防止 担い手確保の基礎は「安全」

2023/8/21 

小中学校や高校の夏休みも終盤を迎える中、児童や生徒、保護者に建設業の魅力を知ってもらおうと、全国各地で現場見学会が開かれている。新型コロナウイルスの制限がなくなってから初めてのこの夏休みは、子どもたちにとってもインフラや建設業の魅力を体験してもらえる貴重な機会になるはずだ。
 静岡市駿河区と清水区をつなぐ静清バイパスの清水立体事業も、地域を代表するインフラとして、これまで多くの小中学生や高校生が見学してきた現場だ。学生時代にこの現場を見学し、現在は建設業界で活躍している技術者や技能者も少なくない。
 7月6日、この清水立体事業の現場で架設作業中だった橋桁が落下し、作業員2人が死亡する重大事故が発生した。重軽傷者も6人に上った。まずは犠牲者のご冥福と、負傷者の1日も早い回復を祈りたい。
 この事故によって、橋桁が落下した側道は8月2日まで通行止めとなり、周辺に深刻な渋滞を引き起こした。事故が地域社会に与えたインパクトは小さいものではない。
 業界、学校関係者は採用活動への影響も懸念している。清水立体の橋桁落下事故が発生したのは、2024年3月卒業予定の高校生に対し、企業からの求人が解禁された直後。地域を代表するインフラで起きた死亡事故の報道は、本格的な就職活動を控えた高校生や保護者も目にしている。
 求人票を提出した企業の採用試験への応募は9月5日(沖縄県は8月30日)に始まる。ある工業高校の教諭は「高校生本人や保護者に建設業が危険な職業であるイメージがどうしても残ってしまっている。求職への事故の影響は避けられそうにない」と話す。
 建設業の高卒者に対する求人は、年々増加の一途をたどっている。厚生労働省のまとめによると、23年3月卒の高卒者に対する建設業からの求人数は7万3602人。10年前の13年3月卒の求人数(2万0080人)と比べると、3・7倍に増えた。
 人口減少社会が本格的に到来していることに加え、建設業を長年にわたって支えてきた高齢層の大量退職もいよいよ本格化している。8月の有効求人倍率を見ても、「建築・土木・測量技術者」は5・00倍、「建設・採掘従事者」は5・07倍と、現場の人手不足は慢性化している。
 一方で、人材獲得を競う他産業との職場環境の差は依然として大きい。時間外労働の上限規制の適用を来年4月に控え、各企業は働き方改革に取り組んでいるものの、すでに規制が適用された他産業との労働時間の差は縮まっていない。労務単価の引き上げを追い風とした賃上げによって、賃金水準は他産業を上回っているが、賃金水準の高さが採用に必ずしも結び付いていない。
 他産業との差を埋めようと、建設産業をこれまでの3K(きつい・汚い・危険)から新4K(給与・休暇・希望+かっこいい)へと変える関係者の努力が続いている。処遇改善やイメージアップなどの成果は徐々にではあるが出始めている。
 現場でひとたび重大事故が起きれば、こうした成果も大きく後退せざるを得ない。現場に携わる全ての関係者の間で、「危険」を排除し、現場を「安全」に保つことこそが、この産業に若者を呼び込む基礎となっていることを、改めて共有してほしい。

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