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建滴 国家の成長戦略「インバウンド」

2023/10/16 

新型コロナウイルス感染拡大防止に伴う水際対策が緩和され、訪日外国人旅行者(インバウンド)数が順調に回復している。シンクタンクの試算によると、旅行者数の増加と旅行単価の上昇を勘案すると、2023年はインバウンド消費額が3・1兆円となり、名目国内総生産(GDP)を0・4%程度押し上げるという。持続するインバウンド需要は国家の成長戦略の要でもあり、インバウンド消費の復調が観光立国日本の経済回復を後押しする。
 訪日外国人旅行者数は19年に過去最高の3199万人を記録した後、コロナ禍で低迷。21年には25万人にまで激減したが、今年は8月までの累計で既に1500万人を超えた。政府は6年ぶりに改正した「観光立国推進基本計画」で、25年に19年水準を超える外国人旅行者を呼び込む目標を掲げた。30年には6000万人の受け入れを目指すという。
 目標達成へ順調な滑り出しとなっているが、インバウンド需要を持続するためには、リピーターの確保が不可欠となる。
 とはいえ、課題は多い。例えば無人島を訪れるなどサバイバルを好む旅行者はさておき、大半は目的地まで快適に移動して観光することを望んでいるのではないだろうか。
 しかし、今夏の台風や大雨では、幹線鉄道となる東海道新幹線で運転見合わせが相次いだ。外国人旅行者を含む大勢が行き場をなくし、困惑する様子が報じられた。安全のためとはいえ、予定していた宿泊施設にたどりつけず、駅の構内や電車内で一夜を明かすのはうんざりしたことだろう。
 JR東海の調査によると、訪日外国人旅行者の多くが関東圏か近畿圏から入国し、東海道新幹線を利用して両圏域を行き来していた。ただ、近年は、地球温暖化による気候変動で降雨が激甚化。特に6〜10月ごろの出水期には、東海道新幹線の運転見合わせ基準を超えるゲリラ降雨が毎年のように発生している。
 こういう時、大半を地中で走行し、風雨に運行が左右されにくいとされるリニア中央新幹線があれば代替輸送を担うことができる。観光基本計画には、「リニアをはじめとした高速鉄道ネットワークの拡充を通じ、地域間の移動時間を短縮させ、観光旅行者の広域的な移動の高速化・円滑化を図る」とある。
 しかし、リニアは一部区間で着工への結論が出ておらず、影響域の水質・環境保全など課題解決への取り組みが急がれる。
 いずれにせよインバウンド数の目標を達成し持続させるためには、旅行者の満足度を高めることで、もう一度訪れたいと思ってもらわなければならない。受け入れ側では、観光資源としての歴史的な施設や街並み、飲食を含めた風土など地域の潜在的な魅力の掘り起こしに加え、多重化などによる交通ネットワークの充実が重要になる。
 わが国の交通インフラは、国民の安全・安心を確保し、豊かな暮らしを実現するためにある。同時に観光立国を本気で目指すのであれば、日本を訪れた外国人が安全・安心、快適に旅行を楽しめるよう、災害に強い交通ネットワークを構築しなければならない。

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