上善恒雄氏(じょうぜん・つねお=大阪電気通信大学 建築・デザイン学部長)
2024/3/6 大阪版 掲載記事より
上善恒雄氏
大阪電気通信大学は、4月に建築・デザイン学部を開設する。新しい学部は建築専攻と空間デザイン専攻からなり、文系・理系の枠にとらわれず、一人一人の得意分野を生かすことを目指す。建築学科では1級・2級建築士を目指し、空間デザイン学科ではあらゆる「空間」について自由に研究する。学部長に就任予定の上善恒雄教授に、新学部の特徴と今後の建設業界の課題について聞いた。
―新学部開設の目的は。
「電気や通信に強いこの大学で、ICTの活用を前提に建築やデザインを学んでもらう。建築分野に限った話ではないが、情報化社会にシフトしていくにはデジタルの活用が必須の条件となっていくため、コンピューターを使えることができる人材が建築に興味を持ってくれたらうれしい」
「自治体や民間企業と一緒に、現実空間の課題に取り組んで研究する突破口となる学部にしていく。あらゆる技術を集めた、建築・土木を合わせた建設業界は、世の中を変えていく役割、市民を守る役割を担っている。そのような役目がある業界で働く人たちが、次々と誕生する最新技術を使えるということはとても重要なことだと考える」
―デジタル社会に必要な人材とは。
「建設業界でのDX化とは、CADが使える程度のことではなく、シミュレーションしたり、データサイエンスなどをうまく利用できたりする人材が必要になっている。これらをうまく使えば、建築をはじめ、都市環境に携わる全ての人たちの仕事が楽になるはず。さまざまな面で安全性、信頼性が高くなり、結果的には市民のためになり、コストも抑えることが可能だ。これらを実現することができる人材を生み出し、社会に送り込んでいきたい」
―学生に知ってもらいたい新学部の特徴は。
「建築専攻では、1級建築士などの資格取得のために学問を進めることがメインになる。一方で空間デザイン専攻では、学生の好きなこと、興味のあることに関して、いろいろな角度から『空間』について考えてもらいたい。この空間は決して建築に関係するものに限られておらず、ゲーム空間や都市空間など、学生が自ら興味を持った空間を徹底的に学んでほしい。大学は、社会に出る前に広い視野を持ち柔軟性を育む場所。情報、デザイン、建築などを使って何かをつくりたいと思える、ものづくりの心がある人に入学してもらいたいし、私たちもそういった人たちと出会いたいと思っている」
―建設業界の課題についてはどう考えるか。
「建築、土木を含む建設業では、一つの専門的なことだけではなく、総合的な課題解決や挑戦をしなくてはいけない。建設系でもRXなどが進んでいて、ロボットを使って建機を操作することも増えた。ロボットやコンピューターを使用することはこれからも増えていくだろう。建設の枠を越えて、さまざまな分野とコラボレーションを図り、新しいものを生み出す必要があるため、私たちはITが得意で、新しい技術を難なく使いこなせる人材を送り込む」
(大阪支局=太田千愛)
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