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(2014/10/07)

【愛知県】技能者の処遇改善へ 適切な入札の在り方を模索
〜 大村秀章愛知県知事インタビュー 〜

 

 各地で多発した入札不調。2013年度、愛知県でも大型の建築工事が不調となるケースが相次いだ。その背景には、資材価格の高騰や技能者不足など、これまでにない環境の変化がある。建設業界はいま、深刻な人材不足という状況に直面している。建設業が衰退することは、地域の防災力が弱体化することを意味する。愛知県は5月、東海・東南海・南海地震の被害予測調査の結果を公表した。今後はこの結果に基づき、堤防の強化などに重点的に取り組む姿勢を示している。堤防の強化はもちろん、災害の発生直後に点検や緊急復旧を担うのも地元の建設業者だ。また、災害対応だけでなく、インフラの老朽化への対応も迫られている。これらの課題に県は今後どのように対応していくのか、大村秀章愛知県知事に聞いた。

大村秀章



適正な予定価格で発注


――愛知県では2013年度、学校や病院など県民サービスに関わる重要な施設の建設工事が落札されないケースが発生した。入札不調の発生状況と、県がどのような対応をしてきたのかを聞きたい。
「13年度は、建設部で2135件の入札を行った。そのうち82件が不調となり、発生率は3.8%だった。12年度の発生率1.7%と比較すると倍以上だった。土木関係工事はおおむね順調だが、建築関係工事のうち、金額が大きく工期も長い大規模な建築工事や、県立高校の耐震改修など比較的小規模な建築工事で多くの入札不調が発生した。愛知総合工科高校や第二青い鳥学園、城山病院などの建築工事が不調になったことにより、事業が遅れたことは大変重く受け止めている」
「入札不調が増加した要因は、全国的に建設需要が高まる中で建設資材価格や労務費が急激に上昇したため、県の予定価格と業者側の見積価格の間に差が生じたことや、県発注工事を受注するために必要な技術者を確保できなかったことなどが挙げられる」
「資材価格については、12年度下半期から単価改訂の頻度を増やした。労務費については、例年は年1回だった改訂を13年度は2回行った。できる限り直近の実勢価格を反映させた予定価格の設定に努めている。技術者の不足については、入札参加資格要件の緩和などの対策を行った。特に大規模新築工事では、これらに加えて実勢を反映した適切な工期設定も行った。今後も引き続き、経済情勢の変化に応じて、適正な予定価格での発注や技術者不足対策に努めていく」
「建設工事を含めた県の発注は、その時々の経済状況を反映した適切な価格であることが何よりも大切だと考えている。全体の予算額が上がるが、それは議会や県民にも理解してもらわなければいけない」

入札制度を見直し


――技能者不足は入札不調の大きな要因の一つだ。特に若手の人材不足は深刻だが、どう考えているか。
「建設業界は、近年の建設投資の落ち込みに伴う受注競争の激化で、労働環境の悪化や、若者の建設業離れを招いた。技能者不足により応札できなくなるなど、人手不足は喫緊の課題だと認識している」
「愛知県は製造業が盛んなため、官公儒より民儒が大きい。製造業の工場のメンテナンスなどのニーズが多く、建設産業が健全な状態でなければ製造業も動くことができない。若い技術者の人材対策は率先してやっていかなければいけないと思っている」
「県がやるべきことは、企業に若い技術者の育成を促す入札制度への見直しを機動的に行うことだ。14年度から、総合評価落札方式の一部工事で、29歳以下の若手技術者の正規雇用実績を企業の評価項目に追加した」
「中長期的な対策としては、インターンシップでの学生の受け入れ、現場見学会を通じた建設事業のPRなどに努めている。また、13年度から、学生と、産官学の実務者との異世代・異業種間の交流の場としてイブニングサロンを提供している。イブニングサロンでは、建設分野の実態や疑問、課題などを共有し、いかに建設業が地域の安全・安心の確保や経済産業の発展に貢献しているかなど、建設業のやりがいや魅力を発信している」
「少子高齢化が進み、労働人口が減少する中、県が引き続き『世界と闘える愛知』を目指して発展していくためには、女性の活躍が必要不可欠だ。そのため、あいち女性の活躍促進会議の設置や、理系を目指す女子中高生を増やすためのシンポジウムの開催などを進めている」
「今後もさまざまな観点から担い手の育成・確保に取り組んでいく」

――若い人材に入職を促すためには、業界の労働環境を抜本的に変える必要もある。
「愛知県では、適正な設計労務単価・予定価格の設定、社会保険など未加入対策、ダンピング対策の強化など、建設業の労働環境の改善につながる施策を進めている。10年度からは社会保険に加入していない業者は建設工事の入札に参加できないことにした。13年度には最低制限価格などの算定式を改正し、ダンピング対策を強化している。また、労務費の単価改定とともに、建設業団体に対し、技能労働者への適切な賃金水準の確保などを要請した」
「6月の品確法改正で、労働環境の改善や適正な利潤の確保などによる中長期的な担い手の確保、将来にわたる公共工事の品質の確保が法の目的に追加された。国は年内をめどに発注者共通の運用指針を策定するとしており、県としてもこの運用指針を踏まえて、迅速、適切に対応し、さらなる労働環境の改善に努めたい」

――国土交通省が入札制度により労働環境整備を促そうと動いている。県はどのように考えているか。
「人手不足を解消するためには、なによりも現場の技能者の処遇改善が大切だ。現場で働く人たちが適正な賃金を受け取れるようにしなければいけない。日本の建設業界は、元請けと下請けという重層的な受注構造となっているため、難しい面もある。しかし、元請けが儲かり、下請けがきつい、さらにその下で働いている人がもっときついという構造が当たり前だというのはおかしいと思っている。現場で働く人に適切な賃金が支払われるような発注の仕方、入札の在り方を考えていく必要がある。こういう時でなければ、公共工事の発注を通じて現場で働く人たちの適正な賃金水準を確保するということについて、議論することはできない。だから、今こそ思い切って改革するべきだと思っている。国土交通省の改革には大いに期待している。愛知県としても、適切な対応策を模索していきたい」

――県はことし5月、新たな東海・東南海・南海地震の被害予測調査の結果を公表した。この結果を基に今後はどこに重点的に投資していくか。
「13年3月に国が公表した三連動地震の被害予測調査では、最悪の場合の全国の被害額は220兆円に上るとしている。このうち30兆円強が愛知県で、これは全国最大の被害額だ。愛知県は工場や事務所が集積しているため、最もダメージが大きい。もし大災害が起きて愛知県がダメージを負うと日本経済がつぶれてしまう。だから、災害が発生した際の被害をできるだけ少なくし、できるだけ早く復興しなければならない」
「5月に公表した被害予測調査では、東日本大震災の被災状況も考慮して、地震の大きな揺れや液状化により、土の堰堤が沈下したり、コンクリートでできた堤防などが倒壊するとの条件で浸水域を想定した。広大な海抜ゼロメートル地帯を有し、都市機能や産業が集積している愛知県としては、この想定を踏まえ、浸水・津波対策に重点的に取り組む必要があると考えている」
「東海・東南海・南海地震の被害予測調査結果を踏まえて、愛知県地域防災計画についても抜本的に見直した。全国最大のゼロメートル地帯が広がるという地域特性に配慮し、津波・浸水対策を重点的に盛り込んだ」
「県は現在、新たな行動計画に当たる第3次あいち地震対策アクションプランの策定に取り組んでいる。被害予測調査で示した『過去地震最大モデル』の想定を地震・津波対策を進める上での軸とし、人的被害や建物被害をできる限り軽減していく取り組みを盛り込んでいく。また、あらゆる可能性を考慮した『理論上最大想定モデル』についても、命を守るという観点から、この地震モデルに基づく浸水想定域を踏まえて、津波避難ビルの整備支援や広域的な避難対策などを盛り込んでいくことを検討している」


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海岸や河川の堤防を強化


――海抜ゼロメートル地帯の対策はどのように進めていくのか。
「津波に対しては、伊勢湾台風の被害を踏まえて建設した堤防を維持することができれば耐えられるとみている。しかし、津波の前に、大きな揺れが来た場合に堤防が半分以上沈む可能性がある。半分沈んでしまうと、海抜ゼロメートル地帯では津波が来る前に浸水してしまう。この被害が大きいと懸念している。そうならないように海岸堤防や河川堤防の強化を計画的に進めなければならない。堤防などの耐震化を引き続き進め、津波が乗り越えても堤防が流出しにくくするための法面補強を行うなど、粘り強い構造へ強化していく」
「こうした対策には膨大な事業費が必要となる。そのためことし4月、県内の沿岸市町村と愛知県河川海岸堤防等地震・津波対策事業促進協議会を立ち上げ、7月に国への要望を行った。今後も市町村や他府県と連携しながら、国の支援・協力を強く要請していく。また、沿岸部の建設関係業者の皆さんに頑張っていただかないといけないと思っている」
「14年度は、弥富市をモデルとして津波避難シミュレーションを行い、市町村が津波避難計画を策定する際の参考となる指針を作成する。関係市町村や近隣県と連携して広域避難の検討を行うなど、ハード・ソフト対策を効果的に組み合わせて、地域の安心・安全を確保し、命を守る取り組みを進めていく」

――地震で建物が倒壊し、道路がふさがれると救援活動に支障をきたす。民間建築物の耐震化も重要だ。どのような支援策を展開しているか。
「13年11月25日に施行された建築物の耐震改修の促進に関する法律の改正に伴い、沿道建築物に耐震診断を義務付ける道路を条例で指定した。診断の費用は国と県で全額補助する。耐震改修についても、不特定多数が利用する建築物を対象とした補助制度を創設した。まずはこれを周知していかなければならない」

――災害への備えと同様に、災害が発生した際の体制の維持も重要な課題だ。
「建設部では01年度から、災害発生時の迅速な体制づくりとして、各建設事務所が地元の建設業者と路線・区間ごとに防災協定を締結している。協定を締結した業者は、台風・豪雨・地震などの災害が発生する恐れがある場合や発生した場合に、管理する道路・河川などの公共土木施設の巡視や応急対応工事などを行う」
「さらに13年3月には愛知県建設業協会、愛知県土木研究会、日本建設業連合会中部支部と包括協定を締結した。広域的で大規模な被害に対処できる防災体制を強化するためだ」
「各建設事務所では、防災協定業者との合同図上訓練や、電話が不通になった場合を想定して防災行政無線などによる通信訓練を行っている。包括協定についても、13年12月に各団体の全会員を対象に、連絡体制の確認と出動要請への対応について訓練を行った。協定の実効性を高めるためには、日ごろから訓練などを通じて連絡体制を確認していくことが重要だ」


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長寿命化の取り組み拡大

 

――土木インフラの老朽化が大きな課題となってきている。県の取り組みの状況と、今後の対応をどう考えているか。
「まず、施設の健全度を正確に把握することが重要だ。これまでの日常的な巡視や点検のほかに、より詳細な定期点検を橋梁や河川排水機場の機械設備などで実施している。その結果に基づいて、維持管理のトータルコストを抑えるために長寿命化に取り組んでいる。現在、横断歩道橋などに定期点検の対象を拡大している。健全度が把握できた施設から順次、長寿命化計画の対象を拡大していく」
「将来的には、建て替えや大規模改修などの経費が大きく増加していくと想定される。そのため今後は、ICTなどの最先端技術を活用した点検・診断などによりコストを縮減していく。また、予防保全型管理を基本とする戦略的なアセットマネジメントを展開し、計画的で効率的な維持管理・更新を進める」

小水力発電を積極的に導入

 

――全国で再生可能エネルギーへの取り組みが広がっており、愛知県は農業用水を利用した小水力発電などに積極的に取り組んでいる。今後の展望をどう考えているか。
「愛知県では、木曽川・矢作川・豊川の3大河川を水源とする大規模な農業用水路が数多く整備されている。基幹的農業用水路の延長は約2500`あり、全国第3位。農地面積に占める水路密度は全国第1位だ。こうした高いポテンシャルを生かし、農業用水を利用した小水力発電の導入を積極的に進めている」
「13年度に、発電施設の導入が見込まれる候補地166カ所を選定し、その所在地や想定される発電出力などを『農業水利施設を活用した小水力発電マスタープラン』として取りまとめた。また、土地改良区など、農業水利施設の管理者を対象とした啓発パンフレットも作成した」
「14年8月末時点で、県内の25地区で導入に向けた取り組みが進められており、このうち新城市の四谷地区をはじめとする6地区で稼働を開始している。残る19地区のうち、県内最大級の規模となる豊田市の羽布ダム地区は、出力854`hの発電施設を建設する計画で、8月23日に起工式を行った。16年度末の発電開始を予定している」
「今後は、マスタープランと啓発パンフレットを活用し、売電収入を維持管理費に充当する大規模なものから、発電した電力を地域で消費する地産地消型の小規模なものまで、導入を促進していきたい」

――太陽光発電についてはどうか。
「愛知県は年間の日照時間が全国第7位と長く、太陽光発電に有利な立地だ。住宅用太陽光発電施設については、03年度から市町村と協調して設置に対する補助をおこなっている。14年3月末時点の設置基数は約108000基で、全国1位だ。また、メガソーラー事業については、14年3月末時点で県内に30件、設備容量66266`hの施設が稼働している。そのほか、13年度から事業者に県有施設の屋根を貸し出し、太陽光発電を行う事業を行っている。13年度は農業大学校と森林公園の2施設に太陽光発電施設を設置。3月から発電を開始した。14年度も県立高校や県営住宅などを対象として発電事業者を募集しているところだ」
「14年度からは、国の補助金を活用した基金を新たに造成する。地震や台風などによる大規模な災害に備え、県内各地の防災拠点となる公共施設に太陽光を中心とした再生可能エネルギーを導入し、地域の低炭素化と災害対応力の向上を目指す」

――浄化センターで取り組んでいる下水汚泥の有効利用策は。
「下水汚泥は、これまで主にセメントや肥料の原料として資源利用してきた。これに加え12年度から、衣浦東部浄化センターで下水汚泥燃料化事業を開始し、下水汚泥を再生可能エネルギーとして利用する取り組みを進めている。これらの取り組みにより13年度末現在、ほぼ全量の99%が有効利用されている。このうちエネルギーとしての有効利用は下水汚泥の18%を占めているが、今後はより一層この割合を高めていく必要がある。そこで現在、汚泥の発生量が最も多い矢作川浄化センターと、施設が最も古いため汚泥処理施設の改築更新が必要となった豊川浄化センターで、メタン発酵によるバイオガスを用いたエネルギー利用の取り組みを始めている」
「今後も流域下水道の処理場の規模や立地条件などの特性に合わせ、最新の技術を取り入れながら、バイオマスエネルギーの活用を積極的に進めていく」

――愛知県では今後、技能五輪・アビリンピックあいち大会2014や全国都市緑化フェアといった全国規模のイベントの開催が予定されている。
「技能五輪・アビリンピックあいち大会2014の開催まで50日を切った。技能五輪全国大会の愛知県選手団は、9年連続で最優秀技能選手団に輝いている。ぜひとも地元で10連覇を達成してもらいたい。引き続き、開催機運を大いに盛り上げ、日本一の産業県としてふさわしい大会となるよう準備を進めていく。選手の皆さんには、『技能王国愛知』を若い力で盛り上げてもらいたい」
「第32回全国都市緑化あいちフェアは、愛知万博10周年の15年に、万博会場の愛・地球博記念公園をメイン会場に開催する。愛知県はモノづくり県であると同時に、全国有数の農業県でもある。とりわけ花き産出額は1962年以来51年連続して全国一を続けている。フェアではあいちの花をしっかりPRしていきたい」
(2014/10/07)

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