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Catch-up <2023年6月〜7月号>

建設業に関わるトピックスを分かりやすく解説するコラム『Catch-up』バックナンバーです。
 

急がれる予算確保 4割が工事打ち切りに 2023/6/2

スライドや設計変更が認められても大元の予算がなければ… 日本建設業連合会の調査によると、国土交通省の工事では、スライド条項が全体・単品・インフレスライドとも9割以上で適用されていた。一方で、設計変更があった現場の約4割で工事数量の削減や工事の打ち切りが発生していた。その要因として「発注者の予算制約(拠出可能な予算がなくなった)」(33%)が最多を占めた。高騰する資材価格への対応で、スライド条項の適用が適切に行われるようになる中、必要な予算が確保できていない現状が浮き彫りなった。
 発注機関が資材価格の上昇後に上昇前と同じだけ工事数量を確保しようとすれば、公共事業予算全体を増やさなければならない。例えば100億円の全体予算に対して1件10億円の工事なら10件発注できる。しかし、資材価格が上昇し11億円必要になったとすれば、同じ内容の工事であれば、単純に考えて全体予算を増やさないと、発注件数(工事数量)を維持することは難しい。
 資材価格に加え、技能者の賃金ベースとなる公共工事設計労務単価も上昇し続けており、これまでと同規模程度の予算では、全体の事業量や工事本数が減少するのは火を見るより明らかだ。
 工事本数の減少は、過度な受注競争を招く危うさをはらむ。国交省の工事では、価格だけに頼らず技術力も評価し受注を競う総合評価落札方式を採用している。とはいえ、競争が激しくなれば価格競争の色合いが濃くなることは否めない。結果として、元下契約の中で労務費にしわ寄せが及ぶような事態が起こらないとも言いきれない。
 公共事業予算は1998年の14・9兆円をピークに減少。2014年ごろに下げ止まった後、持ち直しつつあるものの、ピーク時の半分程度となっている。国家予算全体に占める公共事業予算の割合も減少を続ける。00年に13・3%だった割合は、年々増加する国家予算に反比例し、22年に5・6%まで縮小した。
 スライド条項の適切な運用は、技能者の賃金の原資となる適正な工事費の確保につなげる狙いがある。高騰する資材価格や上昇する労務単価をしっかり工事費に反映し、技能者の処遇改善を実現する。将来にわたる担い手を確保し、国民が安全・安心に暮らすことができる国土づくりを支えていくために、行政には一層の公共事業予算と工事量の確保への努力が求められる。
 
 

建設時の排出量算定 各国に制度化の動き 2023/6/16

各国で建物を建設する際の二酸化炭素排出量の算定に関するルール整備が進んでいる 建築分野の脱炭素化を巡る状況が大きく変わりつつある。これまでは空調や照明といった建物の供用段階での省エネルギー化に焦点が当たっていたが、施工段階で排出される二酸化炭素がクローズアップされるようになった。重機の稼働や建材の製造・運搬など、その対象は幅広い。国内では主要なデベロッパーが排出量算定のルール作りに取り組む一方で、海外では既に排出量の規制も含めた制度整備が始まっている。
 建物の新築、改修、解体により発生する二酸化炭素は「エンボディードカーボン」と呼ばれ、建物のライフサイクル全体で排出される二酸化炭素のおよそ3分の1を占めるとされる。重機の稼働などの現場施工だけでなく、コンクリートや鉄骨の製造、運搬など考慮に入れるべき要素は多い。「何をどこまで計算に入れればいいのか」という統一的な基準はなく、各国で模索が続いている。
 エンボディードカーボンの削減は、民間が主導する側面が大きい。2050年までに二酸化炭素排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」に向けた取り組みが、特に金融分野でビジネスのルールとして浸透したことで、事業活動に伴う二酸化炭素排出量の公開を求める枠組みの整備が進展。オフィスや工場、テナントの建設に伴う排出量算定の要請が強まった。
 これに敏感に反応したのが不動産デベロッパーだ。不動産協会は今春、新築時を対象として、二酸化炭素を含めた温室効果ガスの排出量算定に関するマニュアルを策定。三井不動産は早ければ今秋にも、全ての現場での算定に向けて施工会社に協力を求めていくという。
 海外に目を向けると、民間の自主的な取り組みだけでなく、エンボディードカーボンに対する規制を含めた制度整備も進む。例えばEU加盟国では、27年から2000平方bより大きな大規模建物、30年から全ての建物で排出量算定・報告を制度化する方向で検討。フランスやオランダは個別に規制を導入している他、英国でも新たな規制を検討中だという。
 国内でも新たな動きが始まった。昨年には住宅・建築SDGs推進センターの村上周三理事長を委員長とし、国土交通省もオブザーバー参加するゼロカーボンビル推進会議が発足。新築時を含め、建物のライフサイクル全体を通した二酸化炭素排出量の削減に向けて算定手法の確立、政策課題への位置付けを議論している。
 排出量の算定を効率化するため、期待がかかるのがBIMの普及だ。膨大な部材の数量を拾い出し、高い精度で把握するのに大きな役割を果たす。大手ゼネコンだけでなく、中小も含めて活用可能なツールの整備が急がれる。
 
 

強靱化基本法が改正 中期計画で取り組み恒久化へ 2023/7/11

恒久化への道筋は見えてきたが 6月に議員立法による改正国土強靱化基本法が成立した。強靱(きょうじん)化を恒久的な取り組みとしていくため、現行の5か年加速化対策に続く計画を「国土強靱化実施中期計画」として、政府が定めるよう法定化。法的根拠のなかったこれまでの3か年、5か年といった緊急的な対策から、将来に継続する恒久的な対策へと重要な一歩を踏み出した形だ。
 国土強靱化は、気候変動の影響で自然災害が頻発化・激甚化する中、国民全体の安全と安心に関わる重要な問題となっている。改正法では、政府が中期計画として、@計画期間A計画期間内に実施すべき施策の内容・目標B施策の進捗状況、財政状況を踏まえ、Aのうちその推進が特に必要となる施策の内容・事業規模―を定めることが規定された。
 改正法について全国建設業協会の奥村太加典会長は、「国民の安全・安心を守る上で重要である他、事業量が見通せる点で、建設業の経営にとってもプラスになる」と語っている。
 ただ、改正法により当初予算での事業費の確保に道筋がついたとは言え、公共事業予算の増額を約束するものではない。
 日本の公共事業予算はピーク時から半減し、持ち直しつつも、近年はほぼ同水準で推移しているのが現状だ。資材価格や労務費の上昇で本来必要な事業費が圧迫され、直轄工事で工事の打ち切りが増えているというデータもある。強靱化の取り組みが恒久化されたところで大元の公共事業予算が増えなければ、実際の事業量は減少の一途をたどることになる。
 今後、中期計画の計画期間や事業規模の検討が進められるが、併せて、必要かつ十分な公共事業予算を確保していかなければならない。佐藤信秋参議院議員をはじめ強靱化の恒久化に尽力してきた国会議員や行政機関には引き続き、インフラの老朽化対策も含めた、さらなる防災・減災、国土強靱化の取り組みに対する国民や財政当局の理解、予算確保への働き掛けを求めたい。「事業量が見通せる」と手放しで喜ぶにはまだ早い。
 
 

近現代の名建築 「生き生きと」受け継ぐには 2023/7/21

文化財と異なり、近現代建築では「生き生きと」活用し続ける工夫が必要になる。 戦後から高度経済成長期にかけて建てられた「名建築」への注目が高まっている。著名な建築家が手掛けた建物は国際的な関心を集め、インバウンドなどの経済効果も期待される。その一方、老朽化の進行や再開発によって解体される例は少なくない。歴史的な文化財を対象とした従来の法制度からは漏れてしまうこれらの名建築をどう生かし、将来へと受け継ぐのか。
 こうした問題意識の下、文化庁は「建築文化に関する検討会議」を設置。建築家の隈研吾氏や大成建設設計本部シニア・アーキテクトの堀川斉之氏といった建設関係の有識者とともに、著名な住宅建築を引き受け、管理人となった俳優の鈴木京香氏も委員に名を連ねた。5月にまとめた提言では、建築を文学や映画などと同様の文化として明確に位置付け、振興するための立法措置を求めた。文化庁は今後、必要となる法制度について、関係する省庁とも連携しながら検討を深めるとしている。
 ポイントとなるのは、近現代の建築をどのように将来に引き継いでいくべきかという点だ。文化財保護法に基づく歴史的建築物の保全では、ある時点での建築の姿を凍結するような形で、なるべくそのままに保つことに力点が置かれている。一方、こうした名建築について、検討会議では、より幅広い対応を可能とする方向性が示された。現在のライフスタイルと合わなくなった住宅建築に手を入れて暮らしやすい環境を整えたり、または店舗として改修して活用したりすることで「生き生きと」建物を使い続けるイメージだ。
 その際、既存不適格な建物をどのように維持・改修するか、相続時などの税負担をいかに軽減するかが課題となる。時代にそぐわなくなった建築を新たな用途で活用しようとして、都市計画上の規制に阻まれることもある。提言では、こうした点について制度面での手当てが必要だとした。
 将来にわたって引き継ぐべき名建築をどのように決めるかも考えなくてはならない。国際的な賞を受賞したような建築作品だけでなく、ある時代や地域の暮らし、文化を通じて育まれた建物も、日本の建築文化を構成する重要な要素と言えるが、一律の線引きは難しい。
 こうした名建築の所有・管理者はさまざまだ。個人や法人だけでなく、全国の自治体もかつて、著名な建築家の設計で庁舎や文化施設といった公共建築を整備してきた。財政的な余力が限られる中、公共施設の統廃合を求める圧力は高まっている。将来に引き継ぐには、地元の理解とともに、財政面での不安を解消する手立ても求められる。
 提言には、単独の建物だけでなく、その周囲の街並みも含めて建築文化を構成するという視点も盛り込まれた。民間主体の再開発でも、エリアマネジメント団体を通じて地域の景観に統一感を持たせ、にぎわいづくりに生かす例は散見される。経済的なメリットと建築の文化的な側面を両立させるようなアイデアを民間から引き出す工夫が必要になる。
 建築に対する国民的な関心の高まりを、工事を担う建設技術者や技能者への関心につなげられれば、担い手確保の一助にもなる。建築の魅力とともに、産業としての魅力をいかに発信するかが、建設業界には問われる。
 
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    9人の尊い命を奪った中央道の笹子トンネル天井板崩落事故から10年がたった。国の調査委員会が「わが国において例を見ない」と形容したこの悲劇をきっかけに、インフラ保全の重要性が改めて強く認識され、日本のメンテナンス行政は大きく動いた。

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