Catch-up 男女の賃金差に公開義務
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男女の賃金差に公開義務 「人的資本」意識する契機に 2022/8/5
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女性活躍推進法で求められる情報公表項目の中で、ホームページなどで必ず公開する必須項目に「賃金格差」が位置付けられた。7月8日以降、新たに事業年度を迎えてから3カ月以内に前年度の実績を公開しなければならない。具体的な金額ではなく、「男性の賃金に対する女性の賃金の割合」を示す。
制度の詳細を議論する厚生労働省の審議会では、格差の数字が一人歩きすることを懸念する意見も出た。「全労働者」と「正社員」「パート・有期社員」に分けてそれぞれ開示するよう規定されているものの、再雇用の高齢男性と若年のパート女性を同じ枠で比較することになるなど、大くくりな制度であることは否めない。
例えば企業が女性活躍に向けて採用を拡大し、若い世代に女性が増えれば、年功賃金では男女格差が一時的に開くこともあり得る。このため厚労省は、追加で背景事情などを補足できる「説明欄」の活用を呼び掛けている。
さらに、金融庁の審議会でも有価証券報告書に男女の賃金格差の記載を義務化するとした提言を決定。来年度から導入の見通しとなっている。
こうした動きの背景にあるのは、男女格差の是正をはじめ、労働慣行や安全衛生の取り組み、多様性が企業の長期的な価値に深く関わるという考え方だ。政府は「新しい資本主義」の実行計画で、これらの情報開示を促し、人への投資を加速させる方針を打ち出している。
女性活躍促進法の表示項目には、開示が必須の「男女の賃金差異」の他、「男女別の育児休業取得率」「平均残業時間」など企業が自由に選択できる項目もある。適切な項目を選び、自社の現時点の取り組み状況を過不足なく伝える努力は欠かせない。特にワーク・ライフ・バランスに関わる項目は、女性だけでなく男性求職者にもアピールポイントとなる。
人という資本(人的資本)に対して今後どのように投資するのか、現状だけでなく企業が目指す将来像を発信することが重要だ。今回の制度改正を、男女を問わず多様な活躍の道筋をつくる契機とできるかが問われている。
ドローン登録制度がスタート 活用拡大へルール整備進む 2022/7/15

登録制度では、所有者が機体情報(種類、製造者など)と所有者・使用者情報(氏名、住所など)を国交省のウェブサイトで入力し、機体ごとの「登録記号」を取得する。登録は3年ごとに更新が必要で、安全上問題のある機体は認められない。機体に登録記号を貼付・記載することと、機体から登録記号などの識別情報を電波で発信する機能も求められる。無登録機の飛行は1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科される。
制度整備の背景にあるのは、利用拡大に伴う事故・トラブルの増加だ。所有者を特定できるようにすることで安全な利用を促し、ドローンの信頼性を担保する狙いがある。
7月7日現在で登録された機体は約27万3000機に達した。登録者は個人が約11万3000人、企業などが約3万3000団体で、業務目的の利用も多い。建設分野では、ICT施工に必要な3次元測量データの取得などでドローンの活用が浸透。災害時の被災調査やインフラ点検でも注目されている。
ただ、現行制度では、操縦者の目視範囲外の有人地帯上空を補助者なしで飛ばす「レベル4飛行」は認められていない。これを可能とするため、国交省は飛行の安全を担保する「機体認証制度」「操縦ライセンス制度」を12月にも創設する。認証を受けた機体をライセンス保有者が操縦し、必要に応じて許可・承認を得ることを前提にレベル4飛行を認める形だ。
機体の認証は、レベル4飛行が可能な第一種と、それ以外の第二種に分かれる。機体メーカーが設計・製作段階で審査を受けていれば、使用者は機体ごとの現状検査を受けるだけで認証書を得られる。
ドローンを飛行させるのに必要な知識・能力を証明する操縦ライセンスも、一等(レベル4飛行相当)と二等に分かれる。全国で1法人を試験機関に指定し、身体検査と学科試験、実地試験を行う。23年早期にも一等操縦ライセンスの学科・実地試験を実施したい考えだ。
実地試験については免除規定も整備。一定の要件を満たした民間のドローンスクールを講習機関として登録した上で、そこで講習を修了すれば実地試験を免除される。
ドローンは「空の産業革命」とも呼ばれ、企業の柔軟な発想が活用の場面の拡大に寄与してきた。安全確保を大前提とした上で、利用者が必要以上に萎縮することのないよう、規制を合理化・簡略化するさじ加減が重要になりそうだ。
バックナンバー
公正取引委員会は5月、独占禁止法上の「優越的地位の濫用」を防止する「優越Gメン」を16人体制で発足させた。活動の主なターゲットの一つは、労務費や原材料費、エネルギーコストの上昇分の転嫁拒否だ。原材料や原油の価格の急激な高騰は、幅広い業種で価格交渉力の弱い企業の経営を追い詰めかねない。「総合工事業」を含め、疑わしい事案が発生していると見込まれる22業種を対象として、6月から緊急調査を進めている。
建設業の入職者に占める転職入職者の割合が増加している。中途採用の技術者・技能者の中でも、特に現場で高い能力を発揮し、即戦力となっているのが退職自衛官だ。幹部への昇任を希望しない自衛官は、任期を終えた20歳代で退職し、民間企業に再就職する。20代で退職する自衛官の再就職を支援するため、防衛省は自衛官の在職期間中に再就職の役に立つ資格の取得を支援している。
2020年度の直轄工事のICT施工の実績が初めて2000件を超えた一方で、市場に出回るバックホウに占めるICT対応型は2%に過ぎない。過去5年でICT施工を受注したことがある企業は、直轄工事(一般土木工事)のA・Bランクでは90%を超えているが、Cランクになると52・4%まで低下する。ICT施工が現場にさらに定着するためには、障壁となる通常建機との価格差を埋める必要がある。
技術検定の受験要件として求められる実務経験年数を偽り、受験要件を満たしていない受験者の不正受験が相次いで発覚している。実務経験年数は、所属企業による証明、受験者自らの誓約によって信頼性を担保しており、この実務経験を偽る不正受験は、性善説に立ち、受験者からの自己申告で成り立つ技術検定制度の根幹を揺るがしている。一連の不正受験はどのように行われたのだろうか。
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