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伊賀市役所

命と暮らし守る公共事業 機動的な予算編成が必要だ

2021/9/6 

政府の2022年度当初予算案の編成に向け、各省庁の概算要求が8月末までに財務省に提出された。要求の総額は過去最大の111兆円になるという。公共事業費は、国土交通省が前年度比18・8%増、農林水産省が17・6%増の増額を要求した。衆院選を間近に控え、新型コロナウイルスの感染拡大を受けた追加の経済対策、その財源となる補正予算もにらみつつ、例年通り、年内には22年度当初予算案が決まる見通しだ。
 概算要求は、概算要求基準(シーリング)で前年度を下回る要求額とすることが求められた。ただ、グリーン、デジタル、などの成長分野に予算を重点配分するための特別枠が2年ぶりに設けられ、この特別枠を活用すればシーリングの別枠で前年度を上回る予算を要求できた。
 もちろん、要求額が額面通りに認められることはないが、ここ数年は当初予算と同じ時期に補正予算が編成され、概算要求をベースに補正予算と当初予算が一体で編成されることが多い。
 今回も10月の衆院選や新型コロナウイルス感染症の感染拡大を踏まえ、政府・与党が経済対策や補正予算を編成する公算が高い。概算要求では「防災・減災、国土強靱(きょうじん)化のための5か年加速化対策」の事業費も、金額を示さない「事項要求」となっている。当初予算と補正予算、そこに盛り込まれる加速化対策の事業費と不確定要素が多く、来年度の公共事業費の全体像はしばらく見えそうにない。
 こうした中、21年度の予算執行の遅れを理由に22年度当初予算の増額や大型の補正予算編成をけん制する声がある。
 20年度は、コロナ禍に対応するために3度の補正予算が編成され、歳出総額が過去最大の175兆円となった。繰越額も過去最大の30兆円を超えており、「公共事業費が不足しているのなら年度内に予算を消化できるはず」「補正予算の追加の前に、前年度からの繰り越しを消化すべきだ」との指摘がある。
 執行の遅れや繰り越しの増加を根拠とする公共事業の不要論≠ヘ、異常気象による自然災害が毎年発生する今もなお、予算編成を控えたこの時期に必ず聞こえてくる。
 ただ、20年度第3次補正予算の公共事業費の執行は、実際には遅れていない。国交省所管の公共事業費は、6月末時点ですでに66・8%を契約しており、過去5年の同じ時期に成立した補正予算と比べ、最速のペースで執行が進んでいる。2年前の18年度第2次補正予算と比べると、執行率は1割近い伸びだという。
 繰越額の増加について言えば、この制度は、そもそも不測の事態に備えた予算執行のセーフティーネットであるはずだが、実際には補正予算自体が繰り越しを前提に編成されている。毎年1月下旬から2月上旬に成立する補正予算を3月末までの2カ月間で全て執行するのは現実的ではなく、補正予算の規模が大きくなれば、繰越額が増えるのも当然だ。
 執行の遅れや繰り越しの増加を理由として、公共事業費の追加を否定するのは公正さを欠いている。今年もすでに各地で豪雨被害が発生している。激甚災害から国民の生命と財産を守るインフラを着実に整備するため、政府には機動的、弾力的な予算編成を求めたい。

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