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伊賀市役所

ダンピング対策の徹底を

2021/10/25 

市区町村の入札でのダンピング対策の促進に国土交通省が乗り出した。各自治体の対応状況を地図に落とし込んで“見える化”し、ホームページで公開した。対応が遅れている自治体のうち人口10万人以上の団体には、個別にヒアリングや改善への働き掛けを行う。
 コロナ禍による税収減によって、公共事業の減少とダンピング受注の拡大が懸念される。こうした状況にあって、地域の防災や雇用を担う建設業の経営の維持と強化に、各自治体は前向きに対応するべきだ。
 国交省が行ったダンピング対策の“見える化”では、最低制限価格(低入札価格調査基準価格)の算定方法に関して、2019年4月に改正された中央公共工事契約制度運用連絡協議会(中央公契連)の最新モデルを基準に、20年10月1日時点での全国1741市区町村の対応状況を地図上で分かるようにした。
 最低制限価格では342団体、低入札価格調査基準価格では204団体が、中央公契連の最新モデルを下回る算定式を使っていた。国交省ではこのうち人口10万人以上の54団体に対して個別に改善を働き掛けていく。
 国交省が今回、対策を強化する背景には、低価格での受注が、担い手確保に向けた技能労働者の賃金アップなど雇用条件の改善を阻む要因になっているという認識がある。国交省と建設業4団体の21年3月の意見交換では、21年度の建設技能者の賃金水準をおおむね2%以上上昇させることで一致した。これを受けて国交省は、入札契約適正化法も踏まえ、地方自治体にダンピング対策の徹底を求めることにした。
 公共工事の減少は、21年度に入って顕在化している。公共工事前払金保証事業会社3社の前払金保証統計によると、21年度上期に取り扱った公共工事の累計は、件数が前年同期比1・7%減の13万7225件、請負金額が6・6%減の8兆9737億円に減少している。このうち件数・金額とも最も多くを占める市区町村の事業では件数が3・6%減の6万4209件、請負金額が5・6%減の3兆1693億円の状況だ。
 国土強靱(きょうじん)化策による事業費の上積みはあるものの、地方自治体の公共事業では、コロナ禍による税収減と事業の見直しが影を落としている。
 事業の減少は、ダンピングを誘引し、下請けへのしわ寄せを含め、懸案となっている働き方改革や担い手確保を推進するために必要な建設業の体力をそぐことになる。
 全国建設業協会の調査によると、会員企業が不在である「災害対応空白地域」は21年7月現在、全国で232市区町村に上っている。18年に行った調査結果と比べ4カ所増えた。会員が不在の市区町村がある都道府県は18年より1県増え31都道府県を占めている。
 また、会員に対する同時期のアンケートで、災害対応に必要な人員を確保している会員は81・9%で、不足しているとの回答は18・1%だった。しかし、5年後については、不足を予測する回答が39・4%に上る。
 地域の持続性の確保にもかかわる問題として、市区町村は入札のダンピング対策に真剣に向き合うべきだ。

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