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本格的な人口減少社会へ 「地域の建設業が持続できる施策を」

2024/2/2 

昨年12月に国立社会保障・人口問題研究所がまとめた「日本の地域別将来推計人口」によると、2050年の総人口は、20年と比べ東京都を除く46道府県で減少の見込みとなった。特に地方は深刻で、秋田県や徳島県、高知県など11県では30%以上の減少を予測している。日本は本格的な人口減少社会に突入する。
 15〜64歳の生産年齢人口に限定すると、さらに深刻な状況が浮き彫りとなる。20年を100とした場合、50年では秋田県で47・7と半数以下であり、徳島県や高知県などは50台、岐阜県や静岡県、兵庫県などで60台、大阪府で72・7、一番高い東京都でも93・7と、全国で働き手の減少に歯止めが掛からない事態といえる。
 生産年齢人口が減少すれば、建設業に限らず、多くの業界で、これまで以上の担い手不足が発生するだろう。経済全体が縮小し、国や地方公共団体の税収も減り、必要な公共事業でさえ進められなくなることも考えられる。
 こうした中でも、道路橋やトンネル、上下水道施設などインフラの老朽化は今後ますます進行し、維持・更新のコストは増大するばかりだ。地震や豪雨などの災害に備えた高規格道路の建設やミッシングリンクの解消、ダブルネットワークの整備、橋梁など構造物の耐震化なども急がれる。能登半島地震では道路がネットワークとして機能することの必要性、そして道路整備と災害復旧を担う建設業者の重要性が改めて浮き彫りとなった。財源や人員が足りなければ、インフラ整備や災害復旧も進まなくなる。人命に関わる問題だ。
 人口が減り続けるとはいえ、集落に居住する人は存在する。能登半島地震では道路が寸断されたまま長期にわたって孤立する集落が発生した。高規格道路や直轄国道だけでなく、毛細血管のように張り巡らされている県道や市町村道も、地域に暮らす人にとっては欠かせない社会基盤だ。
 道路をはじめとするインフラ整備の際、必要性の指標として使われるのが費用便益比(B/C)だ。一般的にこの数値が1を超えると事業化が妥当とみなされるが、数値が低ければ「無駄な公共事業」などと批判にさらされ事業化は難しい。
 確かに国民の税金を投入する公共事業に無駄遣いは許されない。しかし人の命をてんびんにかけ、「人口の少ない地域に費用対効果が満たない道路は必要ない」と切り捨ててしまって本当によいのか。
 将来推計人口によると、50年の総人口が20年の半数未満となる市区町村は約20%に達するという。そのほとんどが地方の市町村だ。少子高齢化に担い手不足。地方の建設業を巡る環境は厳しさを増している。地域の建設業がこのまま「仕事がない」「人がいない」と存続していくことができなければ、地域そのものの存続にも影響するだろう。全ての国民の暮らしと命を守るための事業を、費用対効果に捉われず強力に推進すること、そして地域の建設業が地域に残り続けられる施策を展開することが行政に求められている。

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