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国家的対応体制の構築を 大災害への備え

2024/3/4 

大災害は、その発生のたびに日本の社会が抱える弱点を新たにあぶり出す。元旦に発生した能登半島地震も例外ではない。半島部というアクセスに不利な地形が、道路や上下水道などインフラの復旧を遅らせている。インフラの復旧の遅れは今後、かねてから課題だった人口減少を加速し、地域の衰退につながりかねない情勢だ。そんな連鎖は断ち切らなければならない。災害大国日本にあって、真に強靭(きょうじん)な国になるために、既成概念にとらわれない、抜本的な対策を行える枠組みづくりが求められている。
 被災地では、発災から2カ月が経過しても1万人以上が避難所生活を強いられている。被災者の生活再建を困難にしている大きな要因は、住宅の甚大な被害に加え、長期にわたっている断水だ。水道の復旧率は2月28日現在、被災が大きかった珠洲市で3%、輪島市で35%にとどまっている。
 水道の復旧に向けて県外の自治体職員や事業者が応援に駆け付けている。しかし、断水によって能登地方では宿泊施設が使えない。そこで100`以上離れた金沢市などから往復6時間以上をかけて通うか、車中泊をするしかない。そんな非効率な状況が水道などのインフラの復旧を遅らせてきた。
 災害ボランティアも、宿泊施設がなく、移動に時間を取られるため、十分に受け入れることができず、支援の遅れにつながっている。
 そんな状況の中で、住民が被災地を離れる動きが顕在化している。その動きを反映しているとみられるのが、3月に行われる地元高校の入学試験への出願者数の減少だ。珠洲市の飯田高校では、昨年の100人から今年は現在のところ53人へとほぼ半減した。輪島市でも90人から77人に減っている。
 生活と、生活のなりわいの再建の遅れは、若者の流出と人口減少を加速し、地域の将来に深刻な影響を及ぼすことになる。
 災害での復旧・復興はスピードを第一に考えるべきだ。対応策として今回は、例えば上下水道など最低限の生活インフラの復旧を迅速に進めるため、関係者がまとまって宿泊できる、大規模な仮設宿泊施設をできるだけ被災地に近い場所に早急に設けることができなかっただろうか。
 今後、大量の災害廃棄物の処分や被災建物の解体、そして本復旧・復興へと膨大な事業が発生する。これらに対して、マンパワーが不足している地元自治体が中心となって対応する現在の体制でいいのだろうか。
 東日本大震災の際は復興庁が発足した。国内で大災害が頻発する中、国レベルで災害に恒常的かつ幅広く対応するため、「防災省」の設立など新たな体制整備を具体化するべきだ。

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