3月に大惨事をもたらした東日本大震災。巨大な自然災害が発生するたびに水道が遮断され、厳しい水不足に陥る地域が少なくない。
防災用井戸を備えていれば、自家用水はもちろん、周辺住民に供給することも可能だ。1923年の関東大震災発生時は、ほとんどの家庭に井戸水源があり、大規模な水不足は発生しなかったという。現在、被災時にどれだけの人が、飲料やトイレ用水として必要な「命の水」を確保できるだろうか。
こうした中、自治体や企業、家庭では、防災用井戸への関心が高まっている。病院や老人ホームにも設置が進められており、被災時などだけでなく、平常時の水道代削減や安全性、健康面などで、その有用性が注目されている。
■防災井戸の役割
災害時に不便さを少しでも解消するため、家庭や自治体、企業は井戸水を取水する手動式や非常電源付電動式ポンプなど、いざというときに使用できる環境を積極的に整えるとともに、水質・水量検査を含めて井戸を管理しておくことが必要だ。
地域における防災井戸の確保に向け、川崎市や二宮町などは井戸設置に関わる補助制度を設けている。 スーパーマーケットやガソリンスタンドなど、大量の水を使用するところでは水道代を削減するために井戸を使用。さらに、「防災」をセールスポイントにした防災井戸付きマンションや住宅を販売しているディベロッパーもある。
■井戸設置の際は許可・届出が必要
井戸設置の際は、各自治体の条例に基づき各種届出が必要。横浜市の場合、吐出口の断面積合計が6平方aを基準に構造や揚水設備定格出力などが異なり、許可または届出を要する。また、防災井戸として使用することを条件に、構造などの規制を緩和するポイントを設けている。
規制の内訳は地域によって異なるため、詳細は各自治体や専門業者に確認する必要がある。
■積極的に防災井戸の設置を進める荒川区
「防災力」が評価されている東京都荒川区では、災害時の避難所となる小中学校や公園に、防災井戸を積極的に設置している。
1995年の阪神・淡路大震災により水道ライフラインが遮断され、トイレなど生活用水の確保に窮していた被災者の実態を目の当たりにしたことを機に、96年から公園緑地課が年次計画で進めている。2011年4月1日現在、区内の小中学校や公園など計38カ所に設置。揚水能力は手動で約30g/分。
井戸で確保した水は飲用を禁止しており、当初は主に災害時の際に、公園内へ設置したマンホールトイレを使用した際の処理用水として活用する方針だった。現在は初期消火用水としての活用も視野に入れている。
命の水確保へ 震災時に断水、その時どうする!
■自治体の取り組み
<神奈川県>
安全防災局危機管理部は、県下の備蓄用資機材や井戸水検査状況(別表参照)などの現状を把握し、津波災害と災害帰宅難民対策を急いでいる。県教育委員会は井戸を高校に7カ所、都市公園課は広域避難地と広域応援活動拠点に指定している8公園を含む、計13公園に設置。
<横浜市>
市内の民有地3037カ所にある既存井戸を「災害応急用井戸」とし、災害時の生活用水として活用。生水は飲用を控えるように指導
<川崎市>
飲用可能な29カ所を含む、236カ所の井戸を「災害用井戸協力の家」に指定
<相模原市>
災害時協力井戸登録制度を設け、現在は申請対象の井戸水の水質検査を進めており、登録個所は現時点でゼロ。
<藤沢市>
一般家庭の約1400カ所を防災井戸に指定。避難施設の小中学校では53カ所で設置を済ませている
<小田原市>
民家や企業、店舗などが所有する井戸を対象に、災害用指定井戸制度を1996年にスタート。現在は841カ所で登録済み。
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