Catch-up 改正木材利用促進法きょう施行 中高層ビルが供給の受け皿に
戦後に植林された国内の森林が、本格的な利用期を迎えている。森林から供給される木材は、炭素を長期間貯蔵したり、製造時のCO2排出量を削減する効果も期待できる。2050年カーボンニュートラルの実現にも貢献する木材利用の促進には、低層住宅から中高層建築物へと需要を拡大する必要がある。
今年6月に成立した改正木材利用促進法は10月1日に施行される。法律の名称を「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律」と改め、法律の目的に脱炭素化を明確に位置付けた。
法改正の最大の狙いは、これまで低層の戸建て住宅に限られていた木材利用を中高層建築物にまで拡大することにある。改正前の木材利用促進法では、公共建築物の木造化や内装の木質化を求めてきたが、法改正によって民間建築物を含めた全ての建築物に対象を広げる。
具体的には、国・地方自治体が「建築物木材利用促進協定」を結んだ事業者に対し、支援措置を講じる。強度・耐火性に優れた建築用木材の技術開発も支援する。
中高層ビルの木材利用を巡っては、ここ数年、建築規制の緩和も進んでいる。大規模な木造建築物は原則として耐火構造とすることが求められるが、18年の建築基準法改正では、耐火構造とする木造建築物の範囲が「高さ13b超・軒高9b超」から「高さ16b超・階数4以上」に見直された。
建築物全体の性能を総合的に評価し、延焼範囲を限定する防火壁を設置したり、区画ごとにスプリンクラーを設置すれば、耐火構造以外の採用を可能にする新しい設計法が導入された。
ただ、法改正による公的支援の強化や規制緩和が進んだものの、「純木造」の中高層建築物は依然として技術的な難易度が高い。何よりも非木造と比べてコスト高になる。純木造を追求し過ぎると、建築物への木材利用自体が進まなく恐れがある。
そこで、政府が力を入れようとしているのが木造と非木造の「混構造」の普及だ。CLT(直交集成板)は、鉄筋コンクリート造などの非木造との相性が良く、純木造と比べて耐火性能・構造強度・設計の自由度にも優れている。
国土交通省は、耐力壁、間仕切り壁、屋根、開放型付属屋などにCLTを活用する設計モデルを検討しており、まず直轄の営繕工事に混構造を定着させ、民間建築物へと裾野(すその)を広げたい考えだ。
内閣官房の調べによると、CLTを活用した建築物は21年度末までに711件が完成する見通しだという。法施行を弾みに木材利用を一層拡大できるのか、関係者の試行錯誤が続く。
Catch-up 国土交通大臣2年ぶり交代 岸田新内閣が発足
10月4日に発足した岸田新内閣で、国土交通大臣が2年ぶりに交代した。岸田文雄首相は、成長と分配の好循環によって中間層の個人所得を引き上げる「新しい資本主義」をはじめとする、自身の経済政策を打ち出している。斉藤鉄夫新国交相の下、国土交通省は新内閣の経済政策にどのような役割を果たすのだろうか。
前大臣の赤羽一嘉氏から国土交通大臣のバトンを引き継いだ斉藤氏は1993年に初当選し、当選9回。2008年には環境大臣として初入閣し、その後は公明党幹事長、同副代表などを務めた。
京都大学大学院で土木工学を修めた太田昭宏氏、旧建設省の技術系キャリア官僚から転身した石井啓一氏とともに、斉藤氏も建設業との関わりが深い。東京工業大学大学院を修了後、政界に転身するまでの17年間、清水建設に勤務した経歴を持つ。
就任後の会見では、建設現場で1年間の新入社員研修を行った時には、「現場の職長が『お前らたいした給料もらっていないだろう』とよく食事をごちそうしてくれた」と振り返った。
「当時は現場の職人たちが誇りを持ち、それに見合う収入を得て働いていた」と述べ、「もう一度、若い人たちが技能を蓄積し、それに見合う報酬が得られる、そういう建設業にすることが必要だ」と語った。
岸田首相は14日に衆院を解散し、その後は19日公示、31日投開票のスケジュールで衆院選が行われることになった。8日の所信表明では「『成長か、分配か』という不毛な議論からの脱却」「成長の果実をしっかりと分配することで初めて、次の成長が実現する」と訴えた。中間層の拡大を図るとしたこれらの経済政策について、総選挙で国民に信が問われる。
分配戦略の第1の柱には「働く人への分配機能の強化」が打ち出されている。株主だけでなく、従業員・取引先にも恩恵をもたらす「三方良し」の経営を促す環境整備、下請け取引に対する監督体制の強化、賃上げを行う企業への税制支援などに取り組むとした。新型コロナ、少子高齢化対応の最前線で働く人々の所得を向上させるため、公的価格は抜本的に見直す。
岸田内閣は、こうした経済政策を実行に移すため、新たな経済対策を総選挙後に決定し、その財源となる補正予算も年内に成立させる方針だ。成長と分配の好循環を柱とする岸田内閣の経済政策が、建設業にどのような影響を与えるのか。斉藤新国交相が業界で培った経験が、これからの政策に生かされることを期待したい。
Catch-up ダンピング許さない環境つくる 賃上げ実現の最重要課題に
国土交通省は、直轄工事の低入札価格調査基準をこの10年で5回にわたって改正し、そのたびに中央省庁や独立行政法人、特殊法人でつくる中央公共工事契約制度運用連絡協議会も「中央公契連モデル」を見直した。大半の地方自治体はこのモデルを低入札価格調査基準と最低制限価格の算定式として採用しているが、最終改正から2年半を経た今も、依然として旧モデルを採用している自治体の数が多い。
国交省は今年10月、全自治体のダンピング対策の実施状況(2020年10月1日時点)を地図上に落とし込み、見える化≠オた。これによると、最新の中央公契連モデル(19年3月)の水準を下回る算定式を採用している市区町村は、最低制限価格で342団体、低入札価格調査基準価格で204団体だった。
同省では、この中でも公共工事の発注量の多い人口10万人以上の市区町村に対し、年内に個別にヒアリングを行い、改善を働きかけるとしている。
低入札価格調査基準の引き上げは、ダンピング受注の排除に高い効果を発揮する。直轄工事の落札率は、11年度に90・08%だったが、5度にわたる基準改正を経て、19年度には93・06%と2・98ポイント上昇した。
国交省は、今年3月に建設業4団体と行った意見交換で、建設技能者の賃金水準をおおむね2%以上上昇させることで一致しており、この目標の達成に向け、ダンピング対策の強化は最優先課題となっている。
一方、国交省は官民で合意した賃金目標の達成に向け、民間工事でのダンピング受注防止にも力を入れている。10〜12月に行われている「建設業法令遵守推進期間」では、立ち入り検査の対象となった大臣許可業者のうち、完成工事高が上位の元請けに対し、下請けからの見積書と下請け契約書の提出を要請。
いわゆる指し値発注≠ネど、不適正な下請け契約を結んでいないか確認する。特に技能者の賃金に直結する労務費と法定福利費を重点的に確認する。悪質なケースは、行政指導の対象になることもあるという。
20年度の毎月勤労統計調査で、建設業の現金給与総額(事業所規模5人以上)は8年ぶりに減少に転じた。建設投資の増加が後押ししていた賃金上昇のトレンドは転機を迎えようとしている。
その一方で、高齢化した就業者の大量離職が見込まれる中、担い手不足がこの産業の最大の課題であることに変わりはなく、持続的な賃金の上昇は担い手確保のための最も有効な解決策となる。発注者、元請け、下請けのそれぞれがこの重要性を理解し、ダンピング受注や指し値発注を許さない姿勢を示す必要がある。
Catch-up 建設キャリアアップシステム 経審で現場導入に加点措置
国土交通省は、建設キャリアアップシステム(CCUS)を現場に導入している元請け企業を経営事項審査の加点対象とする方針を固めた。CCUSに登録した技能者が日々の就業履歴を蓄積するためには、元請けが現場にカードリーダーを設置し、技能者一人一人の現場利用料も負担しなくてはならない。自らの負担で現場の環境を整えた元請け企業に対し、公共工事で新たなインセンティブを与える。
登録の伸び悩みから、2020年に明らかになったCCUSの財源問題を受け、国交省と建設業振興基金は利用料金の改定に踏み切るとともに、それまでの登録目標を下方修正した。
その後、大手ゼネコンなどの現場導入が進んだことにより、技能者登録と事業者登録は急速に進んでいる。10月末時点の登録数は技能者登録が72万8539人、事業者登録は14万4322者(うち一人親方4万0744者)となった。10月の1カ月間に技能者がカードタッチし、システムに蓄積された就業履歴も257万3234件(累計2479万5146件)に上っている。
事業者登録の目標(10万者、一人親方除く)、就業履歴の目標(累計2000万件)はすでに達成しており、技能者登録は21年度末の目標(80万人)を上回るペースで伸びている。
一方、企業規模別に現場利用の実態を見ると、元請け完工高300億円以上の企業(98社)では、事業者登録済みが92%まで伸びている一方、完工高10億円以上300億円未満の登録率は50%、完工高10億円未満の登録率は22%にとどまり、企業規模が小さい元請け企業ほど登録は進んでいない。
元請けがCCUSに事業者登録せず、現場にCCUSが導入されないと、その現場に入場する技能者は、レベルアップに必要な就業履歴を蓄積することができない。ただ、CCUSを現場導入した元請けには、事業者登録料だけでなく、カードリーダーの設置費や現場利用料など、専門工事業にはない負担がある。
国交省は、10月に開いた中央建設業審議会(中建審)の総会で、CCUSを現場導入した元請けが自己負担で技能者の労働条件を改善しようとしているとして、経審の加点対象に追加すると報告。次回の会合に加点の要件や加点の幅などを示す。
経審の「技術力(Z)」の評価項目では、20年4月からレベル3・4の技能者が所属する企業、21年4月からレベル2以上にレベルアップした技能者の所属企業を加点対象としている。ただ、技能者を直接雇用しない元請けは加点の対象になっておらず、現場導入に対する加点措置により、遅れている中小の元請けの登録を後押しする。
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