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祝・横浜市公共建築100周年<6月号>

横浜ファンを拡大せよ−。

Congratulations on the 100th anniversary of Yokohama City Public building division.
Please enjoy more information for Yokohama lovers.
 
今から100年前、1922年4月1日。横浜市の行政組織に建築営繕事務を行う「建築課」が誕生した。以来、市民が利用する文化施設やコミュニティ施設、社会福祉施設、514の学校、109の市営住宅、病院、庁舎、焼却工場などを整備し、現在は約2600施設を保有するまでに至った。
建通新聞では2022年5月から23年3月まで、月替わりの連載で横浜市の公共建築の歴史を振り返るとともに、建設や維持保全に携わる技術者を紹介する。
そこにあって当たり前の公共建築とは。
技術者から見た推し≠フ建物は。
あまり表には出てこない、公共建築に携わる人の思いとは―。
(2022年6月1日更新)
 
As many as one hundred years have passed since the public building division was established in Yokohama City Government on April 1, 1922.
About 2600 buildings have been constructed, such as city halls, community centers, social welfare facilities, 514 schools, 109 public housing, hospitals, incineration plants, and that made our lives so convenient, comfortable and smooth.
Now, let's focus on those involved in technology, who made the buildings and have been taking care of them ever since, and think over the meaning of public buildings.
(As of June 1, 2022)
 

1・横浜市公共建築の紹介 This is The Public Building

◆八代目市庁舎(2020年〜)
Eighth Yokohama City Hall(2020-)
 
横浜市公共建築の紹介2回目では、2020年6月にオープンした新市庁舎を見る。
関内駅前の7代目市庁舎が老朽化し手狭になったため、新しい庁舎を建設して移転・集約した。市が建設した初めての超高層建物。整備に携わった人の多くが「これは挑戦だ」と語る。
 
Here we show you the brandnew Yokohama City Hall. Former building was too small for the big city, that offices were located separately in more than 20 buildings nearby.  Now, centralized new Yokohama City Hall is very convenient for staffs, citizens and all Yokohama visitors. All those involved in this project all say,This is quite challenging.
 
 
 中央の白いシルクのような質感の建物が横浜市新市庁舎 Yokohama City Hall
 
ウォーターフロントテラス Waterfront terrace
 
新市庁舎開庁を伝える2020年6月30日付本紙1面
 
 
新市庁舎の整備で横浜市は、計画から完成までの各段階で積極的に情報を公開した。多方面からの意見を取り込み、工事や運営の各所に反映するためだ。基本計画やデザインコンセプト、概算事業費をオープンにし、入札での審査項目や選考過程、応札者の事業提案の内容を次々と公開した。市民向けのワークショップも開催。事業の透明性を高めるとそれに比例してさまざまなアイデアが集まり、これまでにない市庁舎の完成につながった。
 
新市庁舎の検討、スタート時は二人
 
新市庁舎の整備は1995年1月に「横浜市市庁舎整備審議会」が答申し、2007年12月、「新市庁舎整備構想素案」が公表された。
具体的に動き出したのは2010年1月。総務局の担当課長に就いた中川理夫氏(現・横浜市建築助成公社常務理事)は、担当係長と二人で新市庁舎の基本計画づくりに着手した。市会に組織された特別委員会とともに検討を進め、12年度に「新市庁舎整備基本構想」を、13年度に「同 基本計画」を策定した。
新しい市庁舎は超高層ビルにすることとし、建設スケジュールは20年夏・東京五輪までの完成を目指す―。初めての超高層建築、タイトな工期。このオーダーに応えるには、設計段階から施工者に入ってもらう設計・施工一括の性能発注(DB)に挑戦するしかない。検討作業量が一気に増え、総務局と建築局公共建築担当が共同で事業に取り組んだ。
 
多くの建築士、技術者が協力
 
14年に新市庁舎の整備計画概要をまとめて横浜市会に報告し、15年6月に高度技術提案型(設計・施工一括)総合評価落札方式による一般競争入札を公告し、事業者の選定手続きを開始した。同時に新市庁舎の役割やデザインのコンセプトを事業者や市民と共有し事業提案に反映してもらうため、『デザインコンセプトブック』が公開された。
横浜市新市庁舎デザインコンセプトブック 横浜市 (yokohama.lg.jp)
 
そして12月。税抜き629億円で応札した竹中・西松建設共同企業体が落札者に決まり、市会の承認を得て16年2月に請負契約を締結。基本設計〜実施設計、建築工事が始まった。
市で初めて導入したコンストラクションマネジメント業務(CMr)は山下ピー・エム・コンサルタンツ(PMC)と山下設計の共同企業体が担当した。槇総合計画事務所が竹中・西松建設共同企業体の一員としてデザイン監修を務める中、竹中工務店設計部は、大勢の関係者の知見を実施設計に落とし込み、施工キーマンとともに生産性向上策を設計図書に反映し、工程計画を作り込んだ。
竹中・西松JVが担当する本体工事の他、内部工事が地元企業に別途発注され、新市庁舎整備は、大手の技術と地元の力を集めた一大プロジェクトとなった。
 
 
さまざまなイベントが開かれるアトリウム。5月はローズフェアの会場に。
平時は待ち合わせ、お茶を飲む、弁当を広げるなどさまざまな目的に使われる。
Atrium for free use. Visitors stay and enjoy a cup of coffee, snack or lunch freely.
Rose flowers festival and 144th Yokohama Rose Exhibition had been held in May. 
 
道志村の木材でつくったベンチなどが置かれた市民ラウンジ。
庁舎のどこにあるのか、行って、探してみてください
 
 
●横浜市役所庁舎(8代目)
▽所在地 横浜市中区本町6丁目50番地の10
▽敷地面積 13,142.92u
▽延べ床面積 142,582.18u
▽建物規模 地下2階地上32階塔屋2階
▽最高高さ 155.4m
▽構造 鉄骨造(柱コンクリート充填鋼管造)等 中間層免震構造+制振構造
▽基礎 杭基礎(場所打コンクリート拡底杭)+直接基礎
▽発注方式 設計・施工一括発注方式
▽工期 2017年(平成29年)8月着工〜2020年(令和2年)5月工事完了
▽コンストラクションマネジメント 山下PMC /山下設計
▽設計・施工 竹中・西松建設共同企業体
▽設計・監理 竹中工務店、槇総合計画事務所、NTTファシリティーズ
 
施工担当市内企業
▽市庁舎中層部内部整備第1工区建築 NB建設
▽市庁舎中層部内部整備第2工区建築 小俣組
▽市庁舎中層部内部整備第1工区電気 扶桑・日宝JV
▽市庁舎中層部内部整備第2工区電気 扶桑・日宝JV
▽市庁舎中層部内部整備空気調和 三沢・興信・三光JV
▽市庁舎中層部内部整備衛生設備その2 エルゴテック
▽市庁舎庁内構内交換設備 東日本電信電話
▽市庁舎マルチサイン設備 東洋電装・神電設備工業JV
▽市庁舎映像音響設備その2 清進・浜川JV
▽市庁舎防犯・入退室管理設備 三沢・セイブJV
▽市庁舎議場・委員会設備 システムエンジニアリング
▽市庁舎監視カメラ設備 きんでん
▽市庁舎間仕切り壁設置 土志田建設
▽市長舎サイン設置 土志田建設
▽市庁舎駐車管制設備 東洋電装・神電設備工業JV
▽北仲通南地区熱供給センター建設 テクノ菱和、きんでん
 
新市庁舎のご紹介 For more information, please click here.
新市庁舎のご案内 横浜市 (yokohama.lg.jp)
 
 
この経験を次のフィールドに
 
完成した新市庁舎は訪れる市民の憩いの場となり、近所の子どもたちのお散歩コースにもなっている。「庁舎はオフィスビルだが、考えたのは、まちづくりへの貢献」(前出・中川氏)。市は環境性能や耐震性で他の建築をリードするものづくりに挑戦し、検討の過程では多方面から助言や提案、アドバイスをもらった。実に多くの人の知恵と力を集めて完成した横浜市新市庁舎。いったい何人の人が関わったのだろう。
横浜市には次のまちづくりのフィールドが数多くある。技術者たちが経験を生かして活躍する場だ。公共建築に携わる人々はますます忙しくなるが、「希望を持って挑んでほしい」(中川氏)。 
 
 

2-1・公共建築に携わる横浜市職員の紹介 Technology persons of Yokohama city

◆横浜市建築局公共建築部営繕企画課
Planning Section of Public building division Yokohama City
 
公共建築物の委託契約と工事関連事務など、建設関連産業の活性化支援、公共建築物の設計委託プロポ―ザル・木材利用の促進・天井脱落対策、竣工検査や工事費積算基準などの技術事項を所管。
 
公共建築部営繕企画課
  
氏名 Name "推し"の公共建築またはひとこと My favourite Public building or message for you)
 
花内洋(はなうち・ひろし) 日産スタジアム。サッカーのWカップ誘致を担当していた時、決勝戦を誘致した思い入れのある施設です。あまり知られていませんが、1Fにはスポーツ医科学センターがあり、室内プールは家族ぐるみで楽しめます。
 
花房慎二郎(はなふさ・しんじろう) 美しが丘公園こどもログハウス。子供が小さい頃に遊ばせていた、木のぬくもりが良く感じられるログハウスです。市内には同様の施設が10数カ所あります。
 
佐藤智宏(さとう・ともひろ) 鶴見区内、地域ケアプラザ。係長昇任直後の配属でケアプラザの管理業務を担当しました。ここを拠点に色々な地域支援にも取り組んだことがよい経験となりました。市内で約140カ所あり、地域のよろず相談所として愛される横浜が誇れる施設です。
 
松誠(たかまつ・まこと) 大倉山記念館。1981年に市に寄贈され、市民利用施設として活用されていて、今年で築90年になります。テレビドラマや映画の撮影場所としても活用されています。共用部はいつでも見学できますので、是非一度訪れてみてください。
 
島守勇樹(しまもり・ゆうき) 都筑プール。入庁して最初の職場で改修工事を担当した時に、何度も調査に伺った思い出の施設です。隣接する焼却工場の余熱利用施設で、円錐形の屋根が特徴的な建物です。
 
中西重智(なかにし・かずとも) 旧市庁舎。旧市庁舎の施設維持管理を行っていました。トイレが詰まりやすく、頻繁に詰まりの解消をしていました。
 
猪刈俊輔(いかり・しゅんすけ) 横浜港大さん橋国際客船ターミナル。初日の出を見たり、花火を見たり、みなとみらいの夜景を見たり、大さん橋から見える景色は何もかもがすばらしい。イベントや学会に参加するなどしたとても思い出深い場所です。
 
能上真衣(のがみ・まい) 開港記念会館。国指定重要文化財でありながら、講堂や会議室は一般利用が可能で開かれた公共建築物です。外観が有名ですが、アーチを多用した内装や、照明器具、ステンドグラスなど、豪華な内部空間が特に気に入っています。
 
中尾宏司(なかお・こうじ) 栄区役所。最初に勤務した職場です。小学校を改装した庁舎で、戸塚区からの分区当初は臨時庁舎想定でしたが、堅牢かつ機能も十分で正式庁舎となったそうです。外観や屋上などに小学校の名残があり、すぐ裏手に小川があるなど面白い庁舎です。
 
岡ア和広(おかざき・かずひろ) 中央図書館。日ノ出町駅から歩いて5分のところにある図書館。蔵書が多く、学生時レポート作成の資料探しに重宝しました。各区に図書館はありますが、西区(中央)と青葉区(山内)は図書館に区の名前が付きません。
 
中島郁子(なかしま・いくこ) 象の鼻パーク。防波堤からの眺めがきれいで、「横浜」を感じられるお気に入りの場所です。
 
鈴木宏樹(すずき・ひろき) みなとみらい本町小学校。設計・工事担当課で設計段階から工事完了まで携わり貴重な経験をさせてもらいました。校舎に囲まれた中庭は天気の良い日には図書室の延長として使っているそうで、心地よさそうな使い方をしていただいています。
 
松下健太(まつした・けんた) 山下地域ケアプラザ。木の構造体が表しとなっていてふんだんに木を感じられる、木造平屋建てのケアプラザです。横浜市公共建築100周年事業のInstagramでも紹介しています。是非チェックしてみてください。
 
 

2-2・公共建築に携わる民間技術者の紹介 Technology persons

 
(最上段左)竹中工務店設計部 橋健人リーダー、(最上段右)開港記念会館で開かれた市民向けの建築シンポジウム、(左縦列)建設工程定点写真、(右縦列)新市庁舎設計チームの打合せ風景
【写真提供・竹中工務店】
 
 
■竹中工務店東京本店 設計部設計第1部門設計3グループ グループ長
橋健人(たかはし・たけひと) 
Takehito Takahashi
TAKENAKA CORPORATION Tokyo
竹中工務店 設計担当リーダー
 
どういう建築物をつくるか。
デザイン。景観。関内の人をどう引き込むか。まちの人を引き込む動線、庁舎を使う人の動線。省エネルギーの工夫や地震や津波など災害に耐える庁舎の在り方は。そして、その施工方法は。
これらを入札の公告に先だつ数年前から考え始めていた。
 
設計と施工が一つのチームに
 
日本の公共事業では設計と施工を分離発注するが、当プロジェクトで横浜市は、スケジュールの短縮と施工の最新の知見を設計にフィードバックすることで合理的な建物ができると考え、設計・施工一括発注を決めた。実際、設計と施工が一つのチームとなって入札に応募することにより、最先端の技術を用いて工期を短縮し、無駄を省いた建物提案ができた。
入札期間は6カ月。私たちは入札の1年半前から検討作業を開始していた。建物を建てる位置、かたち、駅からの人の流れ、道路からのアプローチ、港からの景観。さまざまな事柄を考え、それを合理的に実現するため、当社の建築士や技術者約40人が、槇総合計画事務所とともにデザインの検討に取り組んだ。
まず、設計者がアイデアを形にする。そして環境の専門家や構造、風工学などさまざまな専門家の意見を聞きながら、自分が思い描いたことを何百回と修正し、形をつくっていった。前半は設計者が構想を練り、後半は施工者の知見を入れ、ともに検討を重ねる。入札公告時には庁舎の施工イメージが出来上がっていた。
 
コンペやプロポは「挑戦」
 
入札提案した案が評価され、当選した時はうれしかった。コンペやプロポは『挑戦』だ。そこで私たちの考えていたことが第三者に認められることは、一番うれしいこと。そしてそれが形になり、そこに人が入ってきて実際に使ってくれることがさらにうれしい。ベンチや花壇もたくさんある。庁舎で市民活動を楽しんでもらいたい。人に使ってもらうところを見るのが、うれしい。さまざまな仕掛けに対し、思っていた通りに使ってくれることは喜びだが、思いもしない使い方をされれば、それは次の設計にフィードバックする。
 
社会が良くなることを考えよう
 
建築士を志す人には、外に出て、まちに出て、良い街並みや良い景色を見て、美しいものをたくさん見て、おいしいものをたくさん食べて、地域々々の良いものにたくさん触れることを勧めたい。世界中のまちに個性があるので、それらに興味を持とう。いろいろな良いものに接して学びと遊びを経験し、少しでも良いアイデアを仕事の糧にする。仕事をするからには、少しでも社会が良くなるような提案、Something New≠常に考え、若い人たちには、クリエイティブに仕事をしてほしい。
 
 
 
■竹中・西松建設共同企業体 竹中工務店東京本店 作業所長
清水亨(しみず・とおる)
Tooru Shimizu
TAKENAKA CORPORATION Tokyo
竹中・西松建設共同企業体の作業所長
 
新市庁舎の建設は、当竹中・西松JVの本体建築工事とともに、市内企業による20種類以上の別途発注工事が同時に進むという今までにない発注形態によるプロジェクトだった。関係協議先も多岐に亘り、輻輳(ふくそう)する工事全体の情報を一元的にハンドリングするため「総合調整室」を設置してマネジメント体制を敷いた。
 
BIM勉強会で技術支援交流活動
 
建築主や設計者との意思決定やもの決め、施工計画、品質管理など安全管理の統一にはBIMを積極的に活用した。免震層を横断する特殊架構のアトリウムでは、設計から施工まで一貫してBIMモデルとFEM解析を駆使し、施工精度確保に尽力した。また別途工事会社を対象にBIM勉強会を開催した。これは当プロジェクトだけでなく、各企業が今後の建設工事においてBIMに取り組むことを見据えた、われわれにできるサポートであり、対等な立場で相互に専門性を生かした技術支援交流活動の一環であった。
 
プロジェクト全体運営として、市内企業に発注する別途工事の「入札支援から施工管理に至る総合管理業務」も担当した。横浜市と連携した詳細設計や積算、スケジュール調整、入札要綱の中で、設計者や施工者側のコンセンサスを取りながら、施工性も考慮して作り込み、工事全体がうまく回るよう苦心した。
例えば、DHC(地域熱供給施設)工事については、屋上までの縦配管のユニット施工を条件に明示し、施工効率向上と工程全体の最適化を図った。
施工においては、タイトなスケジュールの中で市庁舎を完成させるため、地上と地下工事を同時に進める「逆打(さかうち)工法」を骨格とした構工法や施工技術を設計段階から反映し、設計施工総合力を結集した様々な生産性向上施策に取組み、別途工事を含めたスムーズな工程移行の実現に注力した。
また工事期間は東京五輪プロジェクトと重なる時期だったので、早くから対策を考えていた。入札段階から外装メーカーとパートナーを組んだり、一つの工種を5〜6社に分散発注して職人を確保したり。それでも人手不足に陥るなど困難な課題は無数にあったが、最後まで諦めずに取り組み、関係者全員で努力した結果、この一大事業を予定通りに引き渡すことが出来た。
一つ一つのプロセス全てが忘れられない。
 
建築の魅力を伝え、将来の担い手を育成
 
新市庁舎建設の入札時の技術提案は約100項目に上った。
地域貢献の項目では、子どもアドベンチャープログラムへの参加や市民ワークショップなど、地元や市民との交流を深める事ができた。また、インターンシップを積極的に受け入れた。その後、インターンシップに来た地元高校生の一人が当現場を担当する測量会社に就職し、この現場に戻ってきた。その時はうれしかった。
 
延べ43万人の力
 
建設業は50年先、100年先まで残る建物という作品を関係者全員でつくりあげる事が仕事であり、他では味わえない醍醐味と感動が大きな魅力だ。私も横浜市民。施工中は、庁舎の完成により、横浜市の更なる発展と周辺環境の魅力創出につながってほしいと考え仕事に取り組んだ。本体工事の現場労働者数は延べ43万0,585人に上った新市庁舎の建設。建築以外の他業種との交流や視野が広がる現場だった。歴史に残るこの市庁舎建設プロジェクトに携わることができたのは、技術者としての誇りであり喜びだ。
 
 
 
■竹中・西松建設共同企業体 西松建設関東建築支社
武政邦彦(たけまさ・くにひこ)
Kunihiko Takemasa
NISHIMATSU CONSTRUCTION CO.,LTD.
Kanto Architectural Regional Headquarters
竹中・西松建設共同企業体の西松建設現場所長
 
新市庁舎の建設は、2年6カ月という短い工期のオーダーでスタートした。
われわれ竹中・西松JVが提案した逆打(さかうち)工法は、杭打設の際に鉄骨柱を埋め込み、掘削後、先行して1階の床を造った上で、地下は下に向かって掘り進み、地上は上に向かって鉄骨を建てていく工法。地上工事のスタートが早くなり、地下と地上がラップする分、工期を短縮できる。地上班と地下班は綿密に施工計画を管理し、共に進まなくてはならない。私は地下を担当する地下班だ。
 
水との戦い
 
工事は地上・地下共に1階の床をベースにするため、地下の掘削等で開口部を複数確保する必要と、大きな重機を使う段になったら地上2階まで梁を抜いて空間をつくる必要があった。
地下工事は水との戦いでもある。止水壁を構築し、ディープウェル工法にて湧水をくみ上げたため、施工中に湧水は少なかったものの、雨が降ると雨水が全て流れ込んでくる。排水計画をしっかり立て、揚水設備を計画し対応した。
工事の難所といえば、全てが難所だったといえる。
 
リーダー会活動で現場に一体感
 
建設業は、自分達の作ったものが地図や資料に残る仕事。やったことが形となり、世間一般に名前として残ることは、素直にうれしい。そして仲間と一緒にものを作り上げていく喜びがある。
当現場は、多い時は協力会社を含め一日1200人が現場に入場した。朝礼会場が仲間で埋まる。これだけの人数の気持ちを一つにするために大きな役割を果たしたのが、施工業者の職長たちで構成する「横浜市市庁舎移転新築工事作業所リーダー会」だった。
リーダー会はその中に安全委員会、環境委員会、熱中症対策委員会、さくらこまち会といった分会をつくり、曜日交代で現場をパトロールしたり、イベントを開いたりして活発に活動した。
外国人労働者に配慮して説明書きの看板を多言語化し、熱中症対策の飴や飲料を配って歩く。また、工業高校のインターンシップ活動にも協力。新規入場者への説明はリーダー会も一緒に担当し、品質安全パトロールは横浜市職員の皆さんと合同で実施した。
現場で使ったリーダー会ヘルメットのマークは、竹中のTと西松のNをヨットのイメージでデザインしたオリジナル。当現場のメンバーだけが持っている。
 
「私が庁舎をつくった人」
 
リーダー会活動のテーマは、当現場の統括所長の方針にしたがい『愛』。スローガンは『横浜のみらいにつなぐ心を込めたものづくり』。
働く人が一丸となって、良い建物をつくる。これが建設業の醍醐味だ。一人一人が携わり、ボルトを1本締めただけでも「私が庁舎をつくった人」。
そして、ついに庁舎が完成した時は嬉しかった。
大きな達成感を感じた。
しかし、現場が終わり、みんないなくなってしまうと思うと…。
 
良い現場だった。
大変だったが、良い現場だった。
 
 
竹中工務店 清水亨所長(左写真の左)、西松建設 武政邦彦所長(左写真の右)。
現場をまとめたリーダー会(右上)。建築文化を次世代に伝承する「子どもアドベンチャープログラム」にも協力(右下)【写真提供・竹中工務店】
 
 

3・歴代建築局長ご挨拶 Directors of Public building division Yokohama City

 
 
鈴木和宏(すずき・かずひろ)前建築局長(2021年度)
Kazuhiro Suzuki Ex-director of Public building division Yokohama City (2021)
(@入庁年次 SinceA現在の所属B"推し"の公共建築 My favourite Public buildings、ひとこと message for you)
 
@1991年度入庁 Since 1991 A横浜市政策局長 Director of policy division Yokohama City
B新市庁舎整備に統括部長として4年間携わりました。100年間使用できるよう、またBCP対策、環境にも配慮して整備しました。おススメは3階の市民ラウンジです。横浜市の水源である道志村産の木材で製作したベンチに座って、みなとみらい21地区を眺望してみてください。
 
ご挨拶
昨年度、100周年事業の取り組みについて、建築局未来プロジェクトのメンバーと一緒に検討してきました。
この100年は、行政だけで公共建築を造ってきたわけではなく、建設業界の皆さまに支えてもらい、そして一緒に造ってきました。
この機会を捉えて、エンドユーザーである市民の皆さまに、公共建築にこれまで以上の愛着や親しみを持っていただきたいと思っています。
また、若い世代の人に建築に興味を持っていただき、これからの公共建築の担い手になっていただくことを期待しています。
 
 
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5月号 横浜市庁舎の変遷、横浜市建築局 「未来プロジェクトチーム」、鵜澤聡明建築局長
 
 

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