2013年4月の就任以来、約1年半が経過した中平正宏四万十市長。14年は6月の豪雨、8月の台風被害を受け「内水被害が大きな課題」と対策に乗り出す姿勢を語った。南海トラフ巨大地震への備えも積極的に取り組む中、今後は津波への対策から中山間地域対策などにも着手していく。このほか2013年度内に策定予定の総合計画や産業振興計画、国の施策とも連携を取りながら、市の活性化を進めていく。また地元建設業者については厳しい中での経営努力に理解を示し、地域の防災力、雇用などの観点からその重要性を語り、「社員をしっかり雇ってもらえるような工事発注をしていきたい」と述べた。
■本年発生した大雨や台風被害の状況や今後の対策を教えて下さい
今回の災害では内水の被害状況があらためて浮き彫りとなった。6月の豪雨、8月の台風などにより道路の冠水で通行止めも発生し、この対策については今後の大きな課題の一つだと考える。
現在は解決のため、国、県、市で検証を進めているが、例えば具同地区では以前に比べ遊水地が激減しており内水被害が多発している。検証を踏まえた上で排水機場の設置などを要望していかなければならないが、単純にポンプを設置して欲しいと言うだけでは駄目だ。市の役割などを踏まえた上で要望していく。一定の堤防などの整備により、かえって無秩序な開発が進んだ部分の弊害もあるので、しっかりと検証した上で対策を講じていきたい。
■南海トラフ巨大地震へのこれまでの成果と今後の取り組みは
市内で津波の想定される箇所については、対策は一定のめどが立ってきたように思う。今後新たに取り組んでいくのは液状化と山間部の孤立化対策。液状化については矢板を設置するなどがあるが全面的に行うのは現実的に困難な面がある。一方で昭和南海地震では中村地区で家屋倒壊、火災などにより非常に大きな被害が出た。その対策として増加している空き家をどうするかという問題がある。空き家対策については国の制度改正も求めていきたい。また山の孤立化についてはヘリポートの整備などで対応していくことに加え、幹線道路整備の促進も重要だ。南海トラフ巨大地震の発生の際には高知県内が全域で被害を受け、県内の他の地域からの援助は難しいことが想定される。その場合、愛媛県方面からの国道441号・439号のルート整備も重要になってくるため、要望していきたい。
公共施設の耐震化では、学校施設については15年度に西土佐中学校と中村中学校の屋内運動場の改築を実施する。また耐震化ではないが、中村地域での中学校で給食を実施するための学校給食センターの整備も15年度に行う。このほか将来的な整備として、西土佐の診療所、西土佐中学校の校舎、文化センターについても今後検討を進めていく。
■1年半を振り返り、これまでの成果と今後の取り組みについて教えて下さい
公約でもあった道路整備については、高速道路の延伸は調査などで動き始めており、環境アセスメントや都市計画決定を経て引き続き早期の工事着手を要望していく。このほか2014年2月に国道441号・網代バイパスが開通し、続く口屋内地区の整備についても早期着工への動きが出てきており、ある一定の方向性、道筋は見えてきたように思う。
また市の総合計画と産業振興計画の骨格を策定したので、順次各地区での懇談会を行い、14年度内に取りまとめる予定。これにより市の方向性が出てくるので、15年度をスタートとし取り組んでいく。事業推進については市の財源は限られているため、国や県などの施策を活用して進めて行く。国が取り組んでいる地方創生、国土強靭化、南海トラフ地震対策の動きを注視していく。
■産業振興に向け、今後特に重要だと思う点は
産業振興の中で、市産品を外に売っていくことが重要だ。地産地消も大事だが、市内だけでは限りがある。四万十という全国的にもメジャーなブランド力を生かし、外貨を稼いでいくことに積極的に取り組んでいきたい。また15年度に建設する西土佐道の駅については、施設整備は事業費があればできるが、これを今後どう生かせるかが課題。そのための人材育成にも力を入れなければならないと感じている。
■地元の建設業者についての思いをお願いします
市内の建設業界は世代交代の時期で、経営者が若返ってきている印象がある。その中で古き良き時代と比べ、会社を経営するため一所懸命に努力をしていると感じている。また台風などの災害対応への取り組みを含め、市民の安全・安心を守る上で欠かせない存在だ。
これまで地方の基幹産業は農業、林業であったが、現在は公共事業がメーンという現実がある。特に子育て世代を数多く雇っているであろう各社が社員をしっかりと雇えるような工事発注をしていかなければならない。公共事業へはいろいろな意見もあると思うが、そういった点を国にも認識してもらえるように働き掛けたい。