日本の新しい大動脈として、NEXCO中日本(中日本高速道路)が整備を進める新東名高速道路。4月14日に御殿場ジャンクション(JCT)〜三ケ日JCT間の延長162`区間が開通する。
2014年度には浜松いなさJCT〜豊田東JCT間の延長55`区間の開通を予定しており、現在急ピッチで工事が進められている。同区間の整備を所管するNEXCO中日本豊川工事事務所の桐山昭吾所長と、豊田工事事務所の井口哲也所長に工事の進捗状況などを聞いた。
愛知・静岡県境〜豊川・岡崎市境の30`区間
―豊川工事事務所の担当区間の概要を聞きたい。
「14年度に開通予定の浜松いなさJCT〜豊田東JCT間延長約55`区間のうち、当事務所が担当しているのは愛知・静岡県境から豊川・岡崎市境までの延長約30`。大部分を山間部が占めるため、構造物が非常に多いのが特長だ。トンネルは11カ所、橋梁は26橋を整備する。中でも橋脚の高さとしては国内の高速道路で4番目となる佐奈川橋(橋脚高約89b)、55`区間内で最長となる鳳来トンネル(上り2513b、下り2464b)、55`区間内の最長橋梁となる臼子橋(上り816b、下り743b)などが特長的だ」
―2月1日現在、担当区間の事業進捗状況はどうか。
「まず用地の契約状況については99・9%完了している。工事着手率は100%で、このうち約36%が完成している(全体工事費に対する出来高により算出)。工事別で言うと、トンネルの総延長は10.7`で、これまでに約45%が完成している。橋梁の総延長は6.9`で、上部工は約27%、下部工は約71%がそれぞれ完成している。土工については、全体延長12・1`のうち約36%が完成している。現時点で完成している構造物は千両トンネル(上り349b、下り317b)のみだが、全体完成に向け、今後もさらなる進捗を図っていく」
―整備ルート上には、豊かな自然地帯が数多くある。環境保全対策はどのように行っているか。
「担当区間内には、天竜・奥三河国定公園、本宮山県立自然公園、桜淵県立自然公園の3つの大きな公園がある。有識者をはじめ、いろいろな人の意見を聞きながら自然環境に配慮した対策を実践している。具体的には、矢作川沿岸水質保全対策協議会方式の導入による工事濁水管理、黄鉄鉱含有土のサンプル調査と封じ込め、絶滅危惧種ナガレホトケドジョウの引っ越し作戦などを行っている」
―事業を進める上での安全対策は。
「安全最優先で工事を進めることはもちろんだが、特に力を入れているのが交通安全啓蒙(けいもう)活動。これだけ大規模な土木工事となると、一般道を通行するダンプカーも非常に多くなっている。そこで、ダンプカーの運転手にも交通安全活動の一環で実際に道路沿いに立ち、歩行者が感じる威圧感、車両速度などを体感してもらっている。これが運転手の交通安全意識の向上につながっているようなので、今後も継続していきたい」
「また、管轄区間では現在、約1700人の作業員が従事しており、今夏には2000人を超えピークを迎える見通しだ。安全意識の統一を図るため、毎年全作業員が参加する安全大会を開催している。これも継続実施していく」
―建設業界にメッセージを
「当社では100年間持続する高速道路を目標に掲げている。安全最優先で未来に誇れる仕事をお願いしたい。また、入札に関しては、インターネットなどを通じてできるだけ情報をオープンにしている。入札に参加される場合は、ホームページを閲覧するなど、事業に関して事前に十分に理解していただきたい。そして高い品質を確保するためにも適正価格での応札をお願いしたい」
豊田東JCT〜岡崎・豊川市境の25`区間
―豊田工事事務所の担当区間の概要を聞きたい。
「新東名高速道路は、豊田東JCTから分岐し、今の東名高速道路から3〜5`ほど内陸部を通過する。道路線形は非常に滑らかで、曲線半径はR3000bが最小、縦断勾配も最大2%と非常に緩やか。東名・名神高速道路に比べて急カーブや急坂が少なく、安全で快適な走行ができる。また、東名高速道路の混雑解消と利用者サービスの向上、東名高速道路の代替性を有する路線、三大都市圏の連携強化といった3つの大きな役割を持つ。当事務所が担当しているのは岡崎市・豊田市間の延長約25`。これを4工事区(豊田、岡崎西、岡崎東、岡崎額田)に区分している。代表的な構造物は、橋脚高が78・8bと一番高い青木川橋と二番目に高い乙川橋、このほかトンネルが6カ所となっている」
―2月1日現在、担当区間の事業進捗状況はどうか。
「豊田工事事務所管内の進捗は、全体が出来高で31%。工事別では、トンネル総延長6.5`のうち100%を着手しており74%が完成、橋梁は5`のうち下部工が100%着手、81%が完成、上部工は100%着手しており37%が完成。土工は13・5`のうち100%着手、37%が完成している。これから高速道路本線を利用した土運搬など土を動かす工事が最盛期を迎える」
―地域との連携はどのように進めているか。
「地元住民の方々や技術者を目指す学生を対象に現場見学会を開催している。昨年10月23日には沿線の皆さまに声を掛け、往復4`の新東名高速道路建設現場ウオーキング大会を開催したところ1300人もの沿線住民が参加しにぎわった。また、未来の日本を担う学生に対する現場の活用として、大学や高専、高校の工業・経済・環境をはじめとしたさまざまな専攻分野の学生が訪れている。地域性苗木による環境学習として地元の河合中学校の生徒とともに種子採取を行った。学校で苗に育ててもらい、法面の完成後に盛り土法面に苗を植える活動を行う予定。このほか、豊田警察署と協力して現場事務所にこども110番を導入するなどの防犯活動を実施している。また、各地区で行われるイベントに積極的に参加しPRに務めている」
―環境への配慮はどうか。
「現場で発生した枝葉や根株などをチップにして法面にマルチングとして戻しているほか、地域の自生種を緑化センターで苗木に育て、完成した法面に植樹するといった緑のリサイクルを展開している。こうした活動によりCO2の削減に寄与することを目指している。オオタカなどの鳥類の保護については、今のところ路線内に巣はないが、路線近隣には巣があるため、有識者と相談しながら工事を進めている。ホタルなど水生生物の生育環境を守るため、矢作川方式による河川への濁水対策を行っている。また、区間の一部では自然由来の重金属や黄鉄鉱が土壌に含まれているため、重金属含有土は、シートで封じ込める対策盛り土やセメントを混ぜる固化不溶化対策盛り土を行っている。また、黄鉄鉱含有土は水を入れないよう遮水層をつくる鎧戸方式対策盛り土を行っている」
―安全対策はどのように行っているか。
「管内では約1000〜1400人の作業員が従事している。そのため随時パトロールを行い、品質面や安全面の点検結果を基に毎月、意見交換会を行っている」
―建設業界に望むことは。
「100年間持続する高速道路を建設することが目標。そのため安全性を確保しながらも高い品質の確保をお願いしたい」